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生きものの窓(平成26年度)  

 やっぱり大きな春蚕の繭(平成26年7月)


   やっぱり大きな春蚕の繭(平成26年7月)

  5月下旬、博物館では今年もカイコの飼育を始めました。掃き立て(ふ化した毛蚕を飼育台へ移す作業)から3週間とちょっと、熟蚕に育て上げて6月中旬には無事、繭となりました。  
 この間、カイコはふ化直後の全長約2.5mmから、5齢(終齢)の半ば、最大で約8cmまで成長します。なんと30倍!1か月にも満たない期間でこれだけの成長を遂げる生きもの、それがカイコです。  
 そのかわり、食べる量は齢期が進むにつれて加速度的に増大します。5齢に脱皮してからは、相当がんばって給桑しても追いつかないくらい、勢いよく食べてくれます。かつて相模原でも養蚕が盛んだった頃、5齢になると家族が交替で24時間体制で給桑していたという話を聞きますが、この食いっぷりを見れば納得です。  
 さて、この時期、シーズンの最初に育てるカイコを春蚕(はるご)と呼びます。カイコの野生原種に近いとされるクワコも同じタイミングでふ化、成長するので、カイコにとって本来の生育シーズンと言えるでしょう。瑞々しい良質なクワの葉をあげられるし、夏ほど気温が高くないため、成長が早すぎることもありません。これは、養蚕学の大きなテーマであった「大きな繭=長い繊維」をとるための必須条件です。実際、昨年秋に育てた晩秋蚕(ばんしゅうさん)の繭と比べると、大きさの違いは歴然としています。  
     
 春蚕(左)と晩秋蚕(右)の繭  脱肛症状のカイコ  小学校での出張授業風景

 繭の大きさだけではありません。芽吹いてから時間の経った水分の少ない葉をあげていると、どうしても病気の蚕が多発します。代表的なものは、脱肛です(写真は昨年の晩秋蚕)。かわいそうですが、このようになったカイコはまゆを作れずにそのまま衰弱死してしまいます。  
 クワを専門に食べるカイコにとって、やはり新緑の頃が一番条件の良い季節ということになります。良質なクワをしっかり食べさせることができた今年は、特に大きな繭をとることができました。  
 繭と言えば、先ごろ、群馬県の富岡製糸場と絹産業遺産群が世界遺産に登録されることが決定しました。このニュースに刺激されたのでしょうか、今年は市内の小学校から「カイコの卵を譲ってほしい」という要請が例年よりも多くありました。博物館ではできるだけ要望にお応えし、卵を提供する際には必ず農業としての養蚕について理解を深めていただくため、学芸員が出張授業を行っています。日本の近代化を支えた養蚕から、生物資源として新たに注目を集めるカイコを、これからも学習教材として積極的に扱っていきたいと考えています。 (生物担当 秋山幸也)

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