みつめてナイト/PS
  
1998.10.23
  
キャラクター  ◎
演出  ◎
ストーリー  ◎
システム  ○
総評  ◎
  
・概要
 
 レッド・カンパニーとコナミ、初のコラボレーション作品。
 「コラボレーション」という言葉の意味は分からないけれど、パッケージの裏面にそう書いてある。
 制作発表当初は結構な話題となり、発売前には雑誌等でそれなりに特集が組まれていた。
 ぼくはかなり売れると思っていた。
 しかし、蓋を開けてみれば、これでもかと言うくらいの大不振。
 昨今のPSの発売ソフトの中には、一万本さえ満たない物もあり、それに比べればまだマシではあるが、それでも十万本も売れなかったらしい。
 「ときメモ」並みの売れ行きを期待していた両社にとっては、まさに寝耳に水であっただろう。
 
 
・ストーリー、システム
 
 ゲームの舞台となるのは、近世ヨーロッパ。
 プレイヤー扮する主人公は、東洋(おそらく日本だと思われる)出身の傭兵として、架空の王国ドルファンへ入国する。
 三年間の傭兵契約を結び、ドルファン国内の女の子達とデートしたり、時折勃発する戦争に参戦したりして三年間過ごすわけである。
 この「三年」という数字からも分かるように、主なシステム面は「ときめきメモリアル」そのまま。
 画面構成、アイコン選択によって平日自分を鍛えてパラメータアップさせる、休日はデートに誘ったりする。
 女の子の情報を調べに教会へ行く(さすがに好雄はいないし、電話もないので、このゲームでは女の子の情報は教会で教えてもらう)だけで一日が終わってしまうことまで、なにからなにまでときメモである。
 唯一違うのはパラメータアップの実質的な方法くらい。
 製作サイドが「西洋風ときメモを作ればバカ売れするに違いない」と思ったかどうかは不明だが、少なくともシステム面ではときメモ以外の何物でもない。
 
 
・ストーリー性の付加
 
 このゲームは、大まかに分けて「全体ストーリー」「個別ストーリー」があると言える。
 「全体ストーリー」とは基本的に一本道で、「何月何日にこういうイベントが起こる」と定められている物。
 その代表格が「戦争イベント」だろう。
 戦争はただ起きるわけではなく、武力制圧にいたるまでの様々な経緯がある。
 これを表現しているのが「全体ストーリー」。
 それに対し、「個別ストーリー」ヒロインの恋愛度が高い時に発生する、「ヒロインを掘り下げていくイベント」であり、このイベントを成功させないとそのキャラとのハッピーエンディングは決して見られない。
 しかし、それ故にヒロインの描き分けに役立っており、ストーリーもかなりのレベルとなっている。
 唯一の難点は、ほとんどの場合ゲーム終盤になってから起こるということくらいで、かなり盛り上がってそのままエンディングへつながっていく。
 また、演出もかなり凝っている。
 それを象徴しているのが、デートシーン。
 デートではときメモと同じく、三者一択となるのだが、同じ返答でも相手の恋愛度によってリアクションが変わると言うこと。
 例えば、ソフィアに「恋人いるんですか?」と聞かれたとします。
 この返答として「いる」と答えた時、ソフィアの恋愛度が『普通』だったら「あ、そうなんですか」と聞き流すけれど、恋愛度が『大好き』だったら、「恋人…いるんですか…」と落ち込み、悪印象を与えてしまうわけです。
 この辺りの細部の作り込みは「さすが!」と唸らせられる出来映え。
 そして、何よりすごいのはグラフィックのクオリティの高さ。
 こう言っちゃなんですが、ときメモなんぞ足下にも及ばない美しさ。
 ぼくの知る限り、コンシューマゲームとして最も美しいと言えます。
 パソコンゲームのハイカラーモード並みの描き込みです。
 その他の演出にも力が入っており、最後の告白シーンはかなりの物。
 キャラによっては、告白シーン時のセリフだけで楽に五分を越える…と言えば、いかにすごいか推察できると思う。
 それぞれのキャラは色々な裏設定を持っており、それを十二分に映し出しています。
 
 
・非常に惜しい一作!
 
 さて、上記のように、「みつめてナイト」は秀作である。
 それでは何故売れなかったのか。
 まず、世界観の掴みにくさがあげられる。
 ストーリー性をつけてゲームに深みを出そうとした、それ自体はとても結構な事である。
 しかし、そのストーリーの説明がほとんど無いのだ。
 一応、アイコン画面の「情報」コマンド内、「ウィークリートピックス」欄に、ストーリーがかなり詳しく説明されている。
 だが、これは「ウィークリー」の名の通り、一週間毎に更新される。
 また、このコマンド自体、アイコン一覧から直接選択できるわけではないので、読むのが面倒になってしまう可能性もある。
 そうしてしまうと、他にストーリーを語る媒体がほとんど無いので、戦争イベントも「何がなんだかさっぱりわからん」といった状態になりうる。
 ストーリーに関する情報が全く無い中で、「第二次ダナン派兵が行われる…」とか「プロキアとヴァルファが手を結んだ」等と言われても、理解できない。
 第二の問題は、全体ストーリーと戦争イベントに因果関係がないと言うことだ。
 戦争イベントは戦闘形式で、各部隊及び主人公の強さは、それまでの育成結果に左右されるので、しっかり育てておけば全戦全勝も決して難しくはない。
 しかし、それがストーリーに全く反映されないのだ。
 ようするに、たとえプレイヤーの所属部隊が勝利し、敵指揮官を一騎討ちにて討ち取ったとしても、全体ストーリーで負けるときは負け、プレイヤーの所属部隊及び一騎討ちでボロボロに敗けても全体ストーリーとして勝つときは勝つということである。
 せっかく戦争イベントがあっても、これではただの「騎士評価ポイント」稼ぎに過ぎないのだ。
 そして、第三の点。
 「騎士評価ポイント」は、最終的にエンディングに関係するステータスなのだが、いくら立派な戦功を挙げたところで、エンディングの変化はない。
 これではやる気も削がれる。
 まぁ、ヒロイン中一人だけ、個別ストーリーが全体ストーリーにも大きな影響を与えるのだが、いかんせんたった一人では寂しい。
 それ以前に、「個別ストーリー」がないキャラが多いのも、残念だった。
 実際の所、 全ヒロイン十六人中、「個別ストーリー」があるのは十人である。
 「個別ストーリー」は全員に持たせ、少なくとも十人くらいは全体ストーリーにも変化を及ぼすようにして欲しかった。
 
 
・佳作の域を出ない
 
 「ときメモ」にストーリーをつけるという、その考え自体は素晴らしく、個別ストーリーは(キャラにもよるが)かなり盛り上がる。
 グラフィックはコンシューマゲーム史上に残る美しさであり、演出面でも魅せるところが多い。
 ときメモほどのヒットにはならなくとも、三十万本〜四十万本くらい売れるだけの素質はふんだんにあったのだ。
 練り込みの甘さ故に不振に終わった、不遇の一作と言えるだろう。
 
 
・追記      1998.10.28
 
 システム面について、少し書き足します。
 プレイ環境は、ときメモから大幅に改善されています。
 まず、知り合いたくない女の子とは知り合わずにすむようになったことがあげられます。
 各キャラは登場条件が設定されており、それを満たせば出会うことになるのですが、出会った時に選択肢が表示され、選択如何では知り合いにならないのです。
 平たく言えば、出会った時に「あなたのお名前は?」と聞かれ、名乗れば知り合いになり、名乗らなければ知り合いにならないわけです。
 ときメモでは、例えサッカーの勧誘にきただけの子であろうが廊下で親衛隊引き連れてすれ違っただけであろうが朝のランニング中にちょっと立ち話しただけであろうが、とにかく強制的に知り合いとなってしまい、爆弾処理に追われることになったのが、みつめてナイトではそんなことはなくなったのです。
 また、爆弾処理もたやくすなりました。
 爆弾そのものは健在なんですが、爆弾が点いた女の子に一度会って話すだけで爆弾は消えます。
 もし爆発してしまったとしても、爆発した女の子の恋愛度が下がるだけで、他のキャラの恋愛度には影響を与えないようです。(この辺は、まだしっかり確認していません)
 さらに、複数の女の子の「不安度」(これが高くなると爆弾点灯)を一律半分に下げるコマンドもでき、かなり遊びやすくなっています。
 そして、一番の評価点は、複数のキャラが絡み合うイベントがあることでしょう。
 ときメモでは、それぞれのイベントは完全に独立しており、一つのイベントに複数のキャラが登場することなど皆無でした。
 それが、みつめてナイトではかなり盛り込まれています。
 このイベントの中には、発生条件が割とシビアな物もありますが、それぞれのキャラ同士の交流を見ることができる数少ない機会となっています。
 (交流と言える程の物はあまりなかったりもしますが)
 やり込めばやり込むほど、良くできたシステムだと言うことが実感できてきます。
 そう、このゲームは「やりゲー」なのです。
 やり込み派のプレイヤーほど、より深く楽しめるんです。
 ヒロインではないサブキャラクター達にまで、深い裏設定があるんです。
 しかし、全てを見るためには、イベントをわざと失敗させる必要があります。
 普通のライトプレイヤーなら、イベントを失敗させたりはしないでしょう。
 多分このゲームが売れなかった一番の理由は、見た目の地味さを払拭できなかったからでしょう。
 
 
 ところで、今回の改稿で、「ストーリー」の評価を一段階上げました。
 これは全体シナリオ・個別ストーリーを合わせての評価だからです。
 現時点でエンディングを見たのは、全十六人中十二人。
 十二番目にエンディングを見た、あるキャラのエンディングでは、本気で泣きました。
 まさかこの手の恋愛シミュレーションゲームで泣かされることになるとは、夢にも思っていませんでした。
 少なくとも、Leafのゲームで泣ける人間なら絶対に泣けます!
 他のキャラの告白シーン及び全体シナリオと比べても、遙かにレベル差が際だっています。
 段違い、なんてもんじゃありません。次元が違います。
 このエンディングを見るためだけにプレイしたとしても、後悔しないでしょう。
 また、みつめてナイトでは、誰とのエンディングを見たかによって、最後のスタッフロール時に流れる唄が変わります。
 このキャラの時も、このキャラだけの唄が流れます。
 この唄が、実によく合っています。
 エンディングを見た直後に流れるため、心にジーンと響きます。
 美しいCGと感動的な演出に彩られたこのシーンは、恋愛ゲームとしては最高クラスでしょう。
 このエンディングについてはもうちょっと書きたいので、こちらに続きを書きます。
 ただ、ネタバレばりばりなので、それが嫌な方は見ないで下さい。