星の丘学園物語学園祭/PS
  
1998.12.7
  
キャラクター  ◎
演出  △
CG  ◎
ストーリー  △
システム  ○
総評  ○
  
・概要
 
 メディアワークスの恋愛ゲーム(ギャルゲーという言い方は好きじゃないので、以下この言い方で統一)。
 同社の主な恋愛ゲームとしては、エターナルメロディ、「悠久幻想曲」シリーズがあるが、原画担当者及びゲームシステムが全く異なることから、おそらく別のスタッフグループによって作成された物と考えられる。
 もっとも、マニュアルに「アンソロジーコミック 10月27日発売」とか、「ラジオドラマCDvol.1  10月23日発売」などと記載してあるあたり、いかにもメディアワークスらしいやり方だが。
 まぁ、そういったマルチ指向は、ゲーム本体には関係ないので割愛する。

 尚、余談だが、なぜぼくがギャルゲーという言葉が好きじゃないかというと。
 この言い方では、まるで「可愛い女の子さえいれば、それってギャルゲーなんでしょ?」という、偏見持ちまくりのタコなゲーム評論家どもの言い分を認めるみたいだからである。
 あと、最初に言っておくこととして、ぼくはこのゲームをまだ一度しか通してプレイしていない。
 だから、勘違いなども多々あるかもしれないが、その場合は気づいた時点で各個修正していこうと思う。
 
 
・お約束な高校二年生
 
 このゲームの主人公は、お約束な設定として、「高校二年時に編入してきた男子生徒」である。
 折しも、転入先の高校である「星の丘学園」では、一月後の学園祭に向け、各クラブの準備が本格化しだした頃合い。
 そこで、無所属の主人公が、あちこちのクラブを手伝いつつ、様々な女の子との会話やイベントを発生させていくわけである。
 設定自体は、なかなか面白いと思う。
 従来の学園ゲームでは単なるイベントの一つとしてしか捉えられていなかった「学園祭」も、突きつめればこれだけで十分過ぎるほどのキャパシティを持っているということを再認識させられた。
 さて、ではこの手のゲームの肝とも言えるゲームシステムについてだが、これはかなりユーザーフレンドリーさに気を遣っていることが感じられた。
 ゲームの基本的な流れとしては、「朝登校昼休み放課後手伝い前休憩手伝い後下校」となる。
 各パート毎に制限時間が設けられ、マップ画面での移動を行った後、キャラとの会話などのシーンに移るわけだ。
 マップ画面では現在移動可能な場所が表示され、アイコンカーソルで行き先を決定する。
 当然、マップ移動で誰もいない部屋に行った場合は、何も起きず、ただ時間を浪費するだけ。
 このマップ画面は、サクラ大戦をイメージするのが一番分かりやすいと思う。
 まさにサクラそのままだからだ。
 で、このマップ上に、「どのキャラがどこにいるのか」という事がしっかり表示されている。
 この点は非常に評価できる。
 上記のサクラを始め、マップ移動方式を用いている恋愛ゲームは数あれど、キャラの所在を明確に表示しているものはあまり多くはない。
 ゲーム内部ではどのキャラがどこにいるのかをチェックしているはずだから、表示しても良いと思うのだが、何故かそうはしないのだ。
 結果、無駄に難しくしてしまい、ユーザー離れを起こすわけである。
 そのあたり、さすがにメディアワークスは分かっている。
 マップ画面上に女の子のSDキャラを配置し、さらにメディアワークスお得意の「機嫌度」も表示している。
 機嫌度とは、簡単に言えばときメモでの「恋愛度」と「傷心度」を兼ねたパラメータである。
 これが良いと、恋愛度が高く、ハッピーエンディングを迎える事もできるわけだが、悪いと爆弾が点くわけである。
 これまでのメディアワークスの恋愛ゲームでは、このパラメータの目安となるものがなく、全てプレイヤーの勘頼りだったのが、かなりやりやすくなった。
 そう、このゲームは難易度が抑えられており、全体的に易しめなゲームとなっている。
 主な目的である「学園祭を成功させる」ためには、全てのクラブの「完成度」を100%以上にしなければならないのだが、よっぽど馬鹿なプレイ(ドラクエに例えるなら、目の前にある宝箱をわざと取らない、等)をしない限りまず失敗しない。
 「完成度」を125%以上にすることができれば、そのクラブは大成功を納めることができ、それがゲームの第一目標となっているが、これだってさして難しいことではない。
 事実、ぼくは初回プレイ時で、美術部以外の6クラブを全て125%以上にすることができた。美術部も124%で、あと一息だった。
 まぁ、少々簡単すぎるきらいはあるが、それでも難しすぎるよりは断然良い。
 次に、登場キャラについて。
 このゲームには、実にたくさんのキャラクターが登場する。
 おそらくときメモ以上。
 それらのキャラの書き分けはしっかり行われており、また各キャラ毎にエンディングもあるようだ。
 さらに特筆すべきは、そのイベントの多さ。
 キャラ数にもかかわらず、キャラ固定イベントがあり、その数は一つや二つではない。
 また、イベントの発生条件は主に、「対象キャラの恋愛度の高さ」だが、みつめてナイトでも言った、「複数のキャラの恋愛度が一定以上でなければ発生しないイベント」もある…ようだ。(この点については、裏付けはまだ取っていない。しかし、イベントの内容及びイベントCGからそう推測される)
 これも、同じ学校で生活しているという感じを出す良い手段であり、評価できる。
 純粋な意味でのシステム回りも良好で、メッセージ高速スキップ機能、PSとは思えぬ早さのセーブ。
 ゲーム中にローディングで待たされることもほとんどなく、かなり研究していることが分かる。
 セーブ領域は一ブロックのみ、そこにシステムファイル+セーブファイル6個という親切設計。
 クリア後のおまけはCGモードのみだが、エンディング直前にセーブできることもあり、さほどの問題ではないだろう。
 ゲーム期間は23日間。
 短いようだが、やってみると意外に長い。
 それでも、四時間まではかからないだろう…慣れれば二時間も切れるかもしれない。
 同時攻略がしやすいシステムなので、特に気にしなくてもいいと思う。
 一日を終える毎にアイキャッチが入るのも、なかなか面白い。
 あと、忘れてはいけないのが、CGのレベルの高さ!
 みつめてナイトでも言った言葉だが、その美しさは業界屈指だろう。
 このゲームの場合、特に光源処理に気を使ってCGを描いている。
 グラデーションを効果的に使用してのライト処理は、見事と言うしかない。
 PSのCG性能をまざまざと見せつけられる。
 音楽もなかなか良く、ゲーム全体の雰囲気によくマッチしている。
 最後に、これは多分に個人的趣味も入るのだが…。
 このゲームでは、電源オン後、しばらく待っていると、OPアニメムービーが流れる。
 このムービーも出来は悪くなく、むしろ良い部類に入るだろう。
 そして、「はじめから」を選んだ後、主人公の名前設定後、OPアニメムービーが流れる。
 しかし!
 このムービー、長さ・クオリティは前述のムービーと同じだが、アニメーションが全く異なるのだ!
 先ほどから何度も引き合いに出して気が引けるが、まさにサクラ大戦の「1番」と「2番」である。
 …とゆーか、はっきり言えば「戦闘パートをなくしたサクラ大戦」と言っても通じるんじゃないだろうか。
 
 
・気になるストーリーは?
 
 結論から言うと、ストーリーらしいストーリーはない。
 ときメモライクな、ごくごくふつーの学生生活を送り、ハッピーエンドを目指すことになる。
 各キャラ毎に深い裏設定があったりとか、人生を変えるような大事件が起こるようなことはまずない。
 まぁ、23日間という期間、高校生という舞台設定を考えれば、当然と言えば当然か。
 重厚なストーリーを求める方が間違いなのだろう。
 そう言ったストーリーが欲しいのなら、他のゲームをやるべし。
 
 
・良い点ばかりではない
 
 このゲーム、恋愛ゲームとしてはかなりの出来であることは間違いない。
 しかし、残念ながら、改善すべきだった余地もある。
 その第一としては、同じ会話を何度も見る羽目になることだ。
 システムの項で書いたように、「会話」することによって恋愛度が上がるのだが、この会話のパターン数は決して多くない
 ある程度は変動していくが、それでもやがて尽きてしまう。
 結果、延々と同じ会話を繰り返す、ルーチンワークとなってしまう。
 次に、この点は、あながち悪要素とばかりは言い切れないのだが…、フルボイスではないことがある。
 学校内で女の子と出会った際に、ボイスで話してくれるのは、基本的に最初の挨拶の言葉のみである。
 もちろん理想はフルボイスだが、音声データを削った分、テキストデータ・CGデータを増やしたのかもしれないし、あるいはローディング短縮化も考慮に入れたのかも知れない。
 そう思えば、少なくとも褒められる事ではないが、徹底的にけなす程のことでもないのではないだろうか。
 何より、第三の点を思えば。
 このゲームの最大の失敗点は、エンディングがあっさりし過ぎていることだ。
 エンディングと言えば、ゲームのトリを飾る、一番盛り上げるべきシーン。
 そこをあっさりと描き流してしまっている。
 それまでの苦労が報われるような、素晴らしいエンディングを期待していても、肩すかしを喰らってしまう。
 こういった恋愛ゲームの場合、「このキャラとのハッピーエンディングを見たい」と思うことも、プレイ意欲を掻き立てる上での重要な要因だろう。
 まぁ、エンディングがないわけではないので、まるで駄目と言うわけではないが。
 かつて一世を風靡した「ときメモ」も、今にして思えば、エンディングは実に簡素な物である。
 しかし、この「星の丘学園物語学園祭」は、それ以上に簡単なエンディングと言っても良いかも知れない。
 前述のエターナルメロディ、「悠久幻想曲」シリーズは、どちらもエンディングをしっかりと描いている分、より簡潔さが際だって見える。
 この点だけは、もっとしっかり練り込んで欲しかった。
 
 
・出来そのものは良い
 
 ゲーム自体は、なかなか面白い。
 一度始めると、なかなかやめるきっかけが見つからず、ついズルズルと連続時間のプレイをしてしまう魅力がある。
 気になるキャラがいれば、その子との学生生活を楽しむために買ってみるのも悪くはないだろう。
 ただ、エンディングに期待することはできないだろうが。
 
 
・改稿 1998.12.10
 
 アップしてから、まだ三日しか経っていないが、公式ガイドを買って色々やってみた結果、書き加えるべき点が多々見つかったので、早速改稿する。
 まず、悪い点を先に書こう。
 このゲームは、普通にプレイしていれば、全てのキャラと、ある程度は仲良くなれる。
 結果、全てのキャラクターに機嫌度メーターが表示される。
 そうなった以上、放置しておくことはできない。
 そんなことをすれば、たちまち爆弾が爆発してしまい、不評が流れてしまう。
 それを防ぐため、どうしてもご機嫌とりに走らざるを得ない。
 特にゲーム後半〜終盤にかけては、機嫌取りに終始してしまう。
 これはシステム上での大きなマイナス点。
 それと、複数のキャラの恋愛度が関わるイベントは存在していない。
 あくまでも、主眼が置かれているキャラの恋愛度にのみ依存し、絡んでくるキャラに関しては、恋愛度は全く関係ないようだ。
 まぁ、これは「悪いところ」とは言えないけれど。
 だが、良い点もあった。
 上節で、「このゲームの最大の失敗は、エンディングをあっさりさせすぎた事」と書いたが、これは誤りだった。
 エターナルメロディ、「悠久幻想曲」シリーズ並みにしっかりしたエンディングが、きちんと存在していた。
 この事により、「エンディングを見たいがためにゲームを進める」という目的が作れるので、実に良いことである。
 …良いことではあるのだが…。
 条件がかなり厳しいように感じた。
 先述の「あっさりエンディング」なら、いとも容易く見られるのだが、こっちの「真のエンディング」とも言うべきモノをみるためには、好感度をかなり高めておく必要があるようだ。
 さらに、他キャラとの同時攻略も不可能らしい。
 フラグを立て、好感度を上げておいても、一番高いキャラ以外は、エンディングにはならない(このパターン専用時の会話になる)のではないか。
 これに関しても、まだ研究が必要だが、最悪一プレイ一キャラというスタイルを強いられる事になるのかもしれない。
 これでは、好きなキャラ以外はやる気が起きないと思うのだが。
 
 補足:同時攻略も可能でした。ただし、システム上二人までがいいところでしょう。
     それ以上はほぼ無理。