前のページで書いたように、こっちではネタバレ話ガリガリ行きます。
泣けるエンディングってのは誰のことか?
ズバリ、アンです。
アンはちょっと特異なキャラクターで、登場が三年目半ば以降であり、どのようなプレイスタイルを取ったとしても必ず出会い、また不安度が高まって爆弾が点くことも決してありまん。
ゲーム中では明確に語られてはいませんが、アンはおそらく人魚なのでしょう。
必須イベントであるリンダの誕生パーティで知り合った時のCGや、海が大好きなこと、長寿であること、トレンツの泉で人魚像を見て涙し、ラストで儚く消えてしまう…。
これらを総合して考えれば、人魚だとしか思えません。
このページを見ていてくれるからには、既にアンのエンディングをご覧になっていらっしゃると思いますので、告白シーンそのものを書くことはしません。
しかし、このエンディングには納得できません。
何故、アンは消えなくてはならなかったのか。
この事について、明確な説明がなされていないからです。
童話などで、人魚が愛する人と結ばれず、海の泡となって消えてしまう…というラストは良くあります。
代表的な物は「人魚姫」ですね。
しかし、みつめてナイトの場合は違います。
アンは主人公と結ばれたのです。
そうすると、消える因果がなくなるではありませんか。
ぼくは初めてアンのエンディングを見ていた時、アンの「どうして、神様は、人としての生を与えてくれなかったんでしょうか…。私、人として生きたかった…」という言葉を聞いて、「ああ、きっとアンは人間になるんだろうな」と思っていました。「よくあるタイプのエンディングだけど、ま、いいか」とも思っていました。
しかし、その予想はまるで的外れでした。
最後にアンの姿が白光に消え去った時、…そして、アンが身につけていたペンダントだけが残されていたシーン、それを渡した時の回想と続き…。
ぼくの目からは、涙がボロボロ流れていました。
このシーンは、恋愛ゲーム史上屈指の名シーンでしょう。
Leafのゲームと比べても、何ら遜色ありません。
しかし、だからこそ納得できないのです。
これは、決してハッピーエンドではありません。
もちろん、バッドエンドと言うほどでもありませんが。
もし、ここでアンがあっさり人間となってしまったら、多分泣けるエンディングにはならなかったでしょう。
アンが消え去ってしまったからこそ一流の悲劇となったわけであり、これをハッピーにしようとすると三流のハッピーエンドとなっていたかもしれません。
しかし、それでもいいんじゃないかと思うようになりました。
確かに一流の悲劇は胸を打ち、泣かされ、心に残ります。
それに対し、三流のハッピーエンドではあまり感慨にふけることもなく終わってしまいがち。
製作サイドはそのことを嫌って、悲劇にしたのかもしれません。
しかし、そうして胸に残る思いは、どんな物でしょうか。
思い出す度に胸が痛むような思いではないでしょうか。
ぼくはそうです。
ガンダム0080なども、思い返す度に胸が痛みます。
そんな事を思わせるくらいなら、素直に突き抜けるような、幸せなエンディングでもいいじゃないですか。
少なくとも、ユーザーに、後々まで残る「やり切れなさ」を背負わせることはないのですから。
色々書きましたが、ぼくはそれでもこのエンディングが好きです。
何度も繰り返しますが、アンが消えてしまうシーンからの演出は超一流です。
最後にスタッフロールと共に流れる唄は、アンの挿入歌であり、歌い手はもちろん國府田マリ子さんです。
唄の上手い國府田さんが、切なく歌い上げています。
この唄がまた素晴らしくアンに似合っており、特に唄の最後のフレーズは、アンの事を考えると、どうしても涙が出てきます。
アンにも、幸せになって欲しかった…。
それだけが心残りです。