続・お約束パターンへの考察
   
1999.3.31
  

 「お約束パターンへの考察」で書いた通り、従来の「オタクがもてる話」はもう衰退期に入っていることは疑う余地もありません。
(そんなこたぁないって? いいからそう考えるよーに。笑)
 しかし、このコラムを書いてから早一ヶ月以上が経過しました。
 その間にぼくとしても考えることがあり、あれだけではまだ足りなかった事に気付きました。
 つーわけで、今回も引き続き「お約束パターン」ってヤツを考えてみます。
 
 
 この手の恋愛物のお約束の一つとしては、「三角関係」があります。
 男女男だろーが女男女だろーがどっちでもいいけど、とにかく三角形になってしまうあれです。
 例えそれが頂点の一つが他の二点から比べて遙かに遠い、数値で表せば三辺の長さが10M/10M/1mmなどという極めて不合理な形の二等辺三角形だとしても、三角関係は三角関係なのです。
 この結果、最終的に相思相愛の新婚男女カップル一組とあぶれ者一人ができあがるって寸法なわけですね。
 男女の愛憎劇を描くのにもっとも良く用いられる形です。
 しかし、この三角関係、上手く作り出すのは、さほど簡単ではないのではないでしょうか。
 ほとんどの場合、三角形の一角を担うのは、ストーリーの主人公です。
 ゲームであればプレイヤーである主人公、ドラマやアニメでも、主点となって描かれる人物です。
 三角形の別の一角がヒロイン(またはヒーロー)であり、最後の一角がお邪魔虫。
 で、最終的に、主人公とその想い人が結ばれ、お邪魔虫があぶれるってのが「お約束」です。
 この形にすること自体は、文句のつけようもありません。
 いくらでも深く描いていける題材です。
 しかし、この形にする場合、もっとも重点を置かねばならないのは、お邪魔虫をどれだけ魅力的に描けるかということです。
 お邪魔虫は、その名の通り「邪魔をする」ためにシナリオに絡んでくるキャラです。
 基本的に主人公と結ばれることはなく、その想い人には勝てません。
 もちろんこれはゲームシステム上の話ですが。
 恋愛ゲームの場合、ユーザーにいかに感情移入してもらうかというのも重要な要素なんです。
 ヒロインに魅力を感じられない恋愛ゲームを買う人なんていないでしょう?
 それは、お邪魔虫キャラにも言えるんです。
 このキャラにどれだけ感情移入できるか…それによって、シナリオ上の「三角関係」も生きてくるんですね。
 ピンと来ない方は、やるドラシリーズvol.2「季節を抱きしめて」をプレイされることをおすすめします。
 このゲームのヒロインは当然麻由なんですが、トモコというお邪魔虫キャラもいます。
 このトモコ、はっきり言って可愛くない。
 主人公の邪魔をするばかりで、その魅力はほとんど語られていないんです。
 これでは、「三角関係」と言うよりも、「好き合っている二人に無理矢理割り込もうとしている」だけにしか見えません。
 だから、シナリオそのものも陳腐な物に見えてしまう。
 トモコに気を回す主人公の行動に共感できなくなってしまうんです。
「最初ッからはっきりした態度をとってればいいじゃないか」となってしまう。
 この点を上手く描いたのが、「ときめきメモリアルドラマシリーズvol.2 彩のラブソング」でしょう。
 ヒロインはもちろん片桐さんですが、オリキャラである美咲鈴音ちゃんもすごくいい子に描かれているんです。
 特に、片桐さんが素っ気ない間、鈴音ちゃんはすごく健気だから、ついつい感情移入してしまう。
 そうすれば、後半の主人公の行動にも納得できるってもんです。
 ようは「ただのお邪魔キャラで終わらせてはいけない」ってことです。
 カクテルのWith Youあたりは良い感じですね(まだクリアしてない。笑)
 同じ事は、アニメや漫画にも言えます。
 悪い見本として一番に頭に浮かぶのが、「まもって守護月天!」
 宮内出雲、ルーアン、どちらもはっきり言って邪魔なだけ。
 その存在にうざったさしか感じさせないようでは駄目なのです。
 出雲、ルーアン、共にシャオと同じくらい魅力的に描けていれば、あの漫画は格段に面白くなったと思うんですが。
 感情移入できるだけのキャラになっていれば、シナリオもより生きてくるでしょうし。
 この「お邪魔虫を魅力的に描く」のがすごく上手い漫画家は、赤松健氏だと思います。
 AIが止まらないラブひな、どちらもヒロインは確定してます(扱いの特別さで一目瞭然)が、その他の女の子キャラもすごく魅力的に描かれている。
 メインヒロインを食ってしまうくらい。
 それくらいやってこそ、初めて「三角関係」という設定を、シナリオに生かせるんだと思います。
 まぁ赤松健氏の場合、三角形ではなく、角が十くらいある多角形になってしまうのが難点ですが。
 
 
 ところで、色々言ってきましたが。
 そもそも根本的なつっこみがありますね。
「ンな上手い具合に話が転がるワケねーよ」と。
 はいそうです、その通り。
 ぼくもそう思います。
「ンなに上手く話が進むかい」と思ってます。
 でも、その事について文句を言うのはナンセンスでしょう。
 なぜなら、(言い方は悪いですが)ゲームだからです。
 ゲームはエンターテイメントの一種。
 趣味の一環として、「楽しむために」プレイするんです。
 やたらリアリティばっかり追及して、全然上手くいかない、ハッピーエンドなんて初めから無いような恋愛ゲームを作ったところで、そんなゲームをプレイしたいと思うでしょうか?
 ぼくは思わないです。
 今や恋愛ゲームと言えば、エンディングがあるキャラが複数いるのが当たり前って風潮になってますが、それでも良いと思ってます。
 むしろヒロインを限定するほうが不自然。
 前述のWith Youも、ヒロインが二人しかいないということが不評でした。
 やっぱりサービスパックを出すらしいですが。
 メインキャラ全員分のエンディングが欲しいと思うのは自然な事だし、ユーザーの希望に答えるのがソフトメーカーの仕事だと思います。
 その成果かどうかは知らないけど、PS版THでは綾香シナリオが追加されましたし。
 
 確かにストーリーが上手く進みすぎるきらいはあります。
 しかし、それに文句を付けてはいけません。
 文句を言うくらいなら、最初ッから買わなきゃいいんですからね。
 
 
 ぼくはやたら守護月天を貶しますが、別にこの漫画に恨みがあるとかそんなことはありません。
 ただ、下手な割に知名度はそこそこ高いので、例に出しやすいだけです。
「じゃあお前なら、それだけの物が書けるのか?!」と問われたならば、ぼくはきっぱりとこう答えます。
「書けません!」と。
 ですが、だからと言ってぼくが桜野みねね氏を批判する権利がない、ということにはなりません。
 何故なら、桜野みねね氏は、仮にもプロの漫画家として「漫画を書くことで金を貰い、読者に買ってもらっている」んです。
 当然その漫画も公表されています。
 公の場に出された物を批判する権利は誰にでもあります。
 もちろんぼくも、こうして発表している自分の意見に対する批判・反論などを受ける義務があります。
 その点は重々承知しています。