特命リサーチ200Xを斬る!
   
1999.3.15
  

 これ、ホントは日記用に書いた文章なんですが、思いの外長くなってしまったのと、割と良い感じでつっこめたと思うんで、コラムに回すことにしました。
 
 日本テレビ系列で毎週日曜PM8:00くらいから放映している人気番組「特命リサーチ200X」
 そんな奴ァいねぇ!!と思うけど、もし万が一「特命リサーチ200X」の内容を真に受けている人がいたら気の毒だから、アレが如何にデタラメな検証しかしていないのか、3月14日の同番組の内容を元に突っ込ませていただきやしょう。
 
 まず今回の元ネタは、どこだかの病院の元院長が、在職中に霊体験と思われるような不思議な現象の相談を職員からよく受けていたから、全国の病院関係者に対して大規模なアンケート調査を行った結果、同様の体験をした者が多数いたと言うことを突き止め、それをまとめて学会で発表したということ。
 なんかもうこの時点で、定年退職したじじぃが暇つぶしにやった事を企画のネタにしただけという気がしないこともありませんが、まぁいいでしょう。
 
 まず、絶対に忘れちゃいけないのが、そのアンケート調査の実施数。全国197の病院に対して行い、5200通弱の返信があったそうです。
 この数値を忘れちゃいけません。
 非常に重要なファクターなのです。
 
 最初に検証したのが、「深夜に霊安室前を通ると中から読経の声が聞こえる」とゆー不思議体験。
 これについて番組中では、
「霊安室の隣は通常解剖室になっており、その中にある保冷室(遺体を腐敗させずに保存するための装置)の温度調整用コンバータの発する重低音が、『外壁がコンクリートによる二重構造になっている』という病院独自の特異な環境の元での反響音によって読経のように聞こえた」と解明しています。
 ちょっと考えりゃ分かりますが、とんでもなく無理があります。
 そもそも聞き間違えるかどうかも怪しいけど、それ以上に無理なのは、上に書いたように回答が5000通以上あったということです。
 霊安室前で変な音を聞いた、という回答は、少なく見積もっても百通以上は来ているはずです。
 読経以外の音を聞いた人も多いでしょう。
 読経は、まぁコンバータの音で誤魔化せるとしても、読経以外の音はどう説明するつもりなんでしょう?
 
 そんな事はさておき、番組は次の検証に進みました。
 深夜診察室前を通ったら、不気味なうめき声が聞こえたというもの。
 これについては、エアダクトを通じて他病室内の患者のうめき声が聞こえただけなんだそうです。
 エアダクトの少ない場所で声を聞いた人はいないんでしょうか?
 
 どんどん行きましょう。
 続いての検証が、
「深夜、亡くなったばかりの患者が生前使っていた電動車椅子が廊下に放置されており、それを片づけようとした看護婦の前で勝手に動き出した」
 さらに、
「亡くなったばかりの患者が愛用していたCDラジカセが深夜勝手に鳴り出した」
「深夜、亡くなった患者の居た部屋のナースコールが勝手に鳴り出した」
 これは、電磁波の影響なんだそうです。
 これらは全てナースステーション近辺で起こっており、ナースステーションには最新医療機器が多数あるため、常に電磁波が発生している。
 電動車椅子やCDラジカセ等の電子機器は、電磁波を受けると誤動作する事があり、それを霊現象と勘違いした。
 これは実験で確かめられ、電動車椅子にある種の電磁波を当て続けた結果、動いたのが確認できた(資料VTRとして放映していました)
 あのなー、あんたらが行った実験ってのは、電動車椅子からわずか三十センチくらいのところから三分間電磁波を当てまくって、それでようやく車椅子が十センチ程度動いただけでしょーが。
 そんなモンがどーして病院内の事象と一致するって言えるわけ?
 それに、亡くなったばかりの患者の車椅子が廊下に放置されてるわけないって。
 普通はそれなりの場所に置いてあるはずじゃないの?
 さらに、CDラジカセやナースコールもなんで深夜にしか鳴らないんだよ。
 電磁波の影響なら、真っ昼間にも起きなきゃおかしいだろ。
 
 まだ続きます。
 最後は、
「亡くなった患者の側で一人で作業をしていたら、肩や背中に触られた」
「誰も触っていないはずなのに、確かに誰かがおぶさってきたような感覚があった」
 これは、こう言った現象が起こっているのは全て深夜であることに着目し、人間の身体は深夜は体温が少し高くなり、交感神経過多の状態になる。
 そこへ電磁波を受けたため、筋肉が収縮して触覚に似た感覚を感じた。
 亡くなった患者を看取ったという先入観もあり、触られたと感じたのだろうと。
 深夜にしか起こらなかったかどうかは、実際そう書かれていたかもしれないので、つっこみようがありません。
 しかし、番組中で、
「作業中、誰かがおぶさって来たような感覚を受けた。後で調べてみたら、その看護婦がよくおぶっていた老婆が昨日亡くなっていた事を知った」と言っていました。
 先入観どうたらはどうした!
 亡くなったことを知らなかったのに、それでも先入観を持っていたと言うんかぁぁぁ!!
 さらに、この電磁波による錯覚も個人差があり、触られたと明確に感じる人はかなり少ないとか。
 ここで問題になるのが、最初にも書いたとおり、回答が5000通以上あったと言うこと。
 ご丁寧にも回答内訳まで表示して下さって、「回答の40%以上は、この「触られた」という物である」そうです。
 5000通の内の看護婦の占める割合が47%ほどで、この中の40%が「触られた」だから、概算でも1000通前後の回答が来たはずです。
 そりゃね、日本全国の病院の看護婦さんの内、一人か二人しか経験してないってのなら、まだ納得できなくもありませんが。
 個人差が大きいのに、1000通もの体験談が寄せられるってのはどーゆーことなんでしょうね。
 
 とまぁこれほどにつっこみポイント満載の論理を展開したあげく、
「全ての霊現象は科学的に解明できる」とほざいて終わっています。
 つまり、この番組は、
「まぁ、そんな風に説明できるパターンもあるかもしれないね」という偶然を、あたかも真相のように大仰に語っているだけなんですね。
 こんな番組を信じないように。
 ぼくは昔は真面目に信じていたんだよなぁ…ああ恥ずかしい。