2.三枚の謎めいた絵、彫刻

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A.ティツィアーノ「聖なる愛と俗なる愛」
B.ミケランジェロ「勝利」
C.ブロンヅィーノ「愛のアレゴリー」

 ここに挙げました二枚の絵画と一枚の彫刻は、どれも「愛」について描いているものです。しかし現代の私たちから見てもその意味は簡単には分かりまん。「愛?これのどこらへんが?」と思うでしょう。

A.ティツイアーノの「聖なる愛と俗なる愛」ですが、裸の女性と服を着ている女性がいて、間に水をかき回している子供がいる。これは何なのか。
 これは結婚を記念して描かれた絵であることが最近の研究では定説となっているのですが、どこらへんが「結婚」なのか、謎だらけです。しかしこれは、当時の人々にはどれが何を表しているのかすんなり分かったであろう絵であると、若桑氏は言っているんですね。その意味ではマニエリスムと言うよりルネサンス的な絵である、ということです。

B.ミケランジェロの「勝利」の像は、これまた愛の形について描いた群像です。これはどうでしょう。若い男性が老人の上にのっかってポーズを決めています。これのどこが愛なのか?

C.ブロンズィーノの「愛のアレゴリー」に至りますと、裸の男女が抱き合ってキスしているので、ちょっと愛っぽい、と見えるかと思います。これは美のであるヴィーナスとその息子であるクピド、いわゆるキューピッドですが、その接吻を描いています。それだけならいいんですが、右上の方には恐い顔したオヤジが顔出してるし、背後には頭を抱えて泣き叫ぶ老女、仮面や無表情な女の子がサソリを持っていたりして、単純にキスシーンを描いて愛を表した、というようなものではないようです。

 こうした絵画が描いている「愛」の形を知るためには、当時のルネサンス人たちが熱狂していた愛についての議論、今で言う「プラトニック・ラブ」について知っておく必要がある、と若桑氏は言っています。実はこのプラトニック・ラブ=プラトン的愛というのは、ルネサンス以降の西欧文化を考える上でも欠かすことのできないファクターである、という考えが徐々に一般的になってきています。

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