なんだか最近、馬食日誌になっている気がする。


今シーズンの最高気温を記録したさなか、「第一回・単一メゾンを極める会」になるはずだったんだが…。
Brut NV Pol Roger
 ブリュット NV ポル・ロジェ
  (フランス/シャンパーニュ/エペルネ、シャンパーニュ)
シャルドネ 1/3、ピノ・ノワール 1/3、ピノ・ムニエ 1/3 使用。ヴァン・ド・レゼルヴは 20%〜30% と比較的多い。最低三年間熟成。ドサージュは平均 1.25% 以下。ホワイト・フォイルの愛称で愛好者が多い……らしい。

わずかに緑がかった明るい麦藁色。トーンの高い花の香りに軽やかなクリーム香。そして黄色い柑橘類のような爽やかな香り。飲むと酸がフレッシュでまるでみずみずしいフルーツを口にしているようだ。飲んだ後には少し焦がしたようなクッキーの香りが鼻に抜け、泡の刺激がそれから遅れてやってくる。グラスを傾ける度にボディは強くなる。温度が上がるとリキュールっぽさが出てきた。爽やかで端正ながら、しっかりとした骨格はまさに英国紳士のようであり、単なる NV としては出色の出来。ファンが多いのもうなずける。伊勢エビやアワビに良く合ったのは、スモークが効いていたからかな?
「ミナ (シッタカ貝) のラヴィゴット・ソース トマト・ファルス」
ミナは磯の香り高く味わい深い。シャンパーニュとの相性はまずまず。


「伊勢エビのスモークとアワビのグリエ 伊勢エビのコンソメジュレ寄せ」
いずれも濃い味の素材だが、冷たいスープ仕立てのようでかなりさっぱりした味わい。スモークの香り高く、不思議と和風の雰囲気もある。冬瓜なんかが入っていても合いそう。

Extra Brut NV E. Barnaut
 エクストラ・ブリュット NV バルノー
  (フランス/シャンパーニュ/ブージー、シャンパーニュ)
あれっ?「単一メゾン…」なんだったらなんでバルノーなの?と普通思われるでしょ?実は事前に持ち込んだときに私が "Rose '90 Pol Roger" と間違えて持ち込んだんです、エチケットの色が同じだったので…。まあ気を取り直して飲んでみた。(実際にはかなりめげていたけど (^-^;))
上のポル・ロジェよりトーンは低く、最初から熟したリンゴ、梅酒のような深い香り立ちがする。飲むと落ち着いた感じもあるが、ふくよかというよりは「エクストラ…」という名の通りすっきりとした酸が特徴的であり余韻も短い。そして飲んだ後に鼻に抜けるのがハーブ香なのがその爽やかな印象をさらに強めるのだ。ふむん、悪くはない。ただその他のポル・ロジェと比べると明らかに異質の存在だった。
「本日のお楽しみ・その1 伊勢エビの殻焼き」
冷製前菜に用いた伊勢エビの頭を半分に割って香草パン粉をまぶして焼いたものです。やや火が通りすぎの感もありましたが、とても香ばしくて旨味も強いので手でつかんで食べてしまいました。

Brut Chardonnay '90 Pol Roger
 ブリュット・シャルドネ NV ポル・ロジェ
  (フランス/シャンパーニュ/エペルネ、シャンパーニュ)
シャルドネ 100%。なぜ Blanc de Blancs と名乗らないのかわからない。コート・デ・ブラン地区の自社所有のグラン・クリュ畑 (クラマン、ル・メニル・シュル・オジェ、オジェ、アヴィーズ、キュイ) のブドウのみを使用。ただし一般には熟成に不向きとされる。"the crown jewel of Pol Roger" と呼ばれることもあり、エチケットも金色で派手だ。

卵系でクリームの香り強し。その中でほのかに香るピーチがなんともかわいらしい。飲むと意外とすっきりして軽やかで、熟成感はあまり感じず、ややメタリックな印象すらある。これはやはりシャルドネだけを使っているからかな。飲んだ後のオレンジの風味も印象的だった。
「イッサキのチェット マツタケとカボス風味」
皮の側を軽く火であぶって中は生の状態のイサキを厚めにスライスし、細切りにした野菜 (何だったか忘れてしまいました) とあわせてマツタケとカボスの風味でサラダ風に仕立てた一品。やや温かめのイサキは旨みが活性化しており、ボリューム感も充分。これまた清酒にあいそうだなあ。

Cuvee Sir Winston Churchill '86 Pol Roger
 キュヴェ・サー・ウィンストン・チャーチル '86 ポル・ロジェ
  (フランス/シャンパーニュ/エペルネ、シャンパーニュ)
ポル・ロジェ社のプレステージ・シャンパーニュ。自分の持ち馬に「ポル・ロジェ」とまで名づけた元英首相ウィンストン・チャーチルが名前の由来。ピノ・ノワールとシャルドネの比は秘中の秘だが、いずれの年もかなりピノの割合が多いと目されている。極上の畑の一番絞りのキュヴェのみを使用し、優良収穫年にしか生産されない。1975 年に生産を開始、その後、1979 年、1982 年、1985 年、1986 年、1988 年、1990 年と作られている。よって本品は四つ目のヴィンテージ、TAK さんにフランスで購入していただいたものです。

わずかに緑がかった色合いで思ったよりもずっと薄く、少し意外。これまた卵系の香り強し。爽やかなハーブと海草のような複雑な風味、バニラもありクリームの香りと相まってアイスクリームを思わせる部分もある。泡は充分元気で飲んだときのバランス感は素晴らしい。それ以上に感動的だったのは、飲んだ後には酸だけでなく様々な味覚の要素が余韻として残り、同時にナッツを煎ったような香ばしい香りが鼻に抜けるところ。基本的には NV の路線を踏襲しているがやはり複雑さや余韻の完成度は見事としかいいようがない。しかし単に濃いシャンパーニュを期待しているのなら少し当てが外れるかも。
「イシダイのロースト ニンニクとタイムの風味」
イシダイのぷりぷりとした触感と強い旨み、それに絡まる香草とキノコの風味が楽しい一品。なぜかイタリアンなテイストもあるが、これなら赤ワインでも充分いけそうです。


「本日のお楽しみ・その2 イシダイのかま焼き」
メインディッシュのイシダイのあらの部分をハーブを効かせてローストしたものです。ゼラチン質が強く、なんとも濃い味わい。これもフィンガーボールが付いていたので手でかぶりついていただきました。

*

以上、渋谷のフレンチレストラン "A TES SOUHAITS (ア・テ・スエ)" で。シャンパーニュにあわせたお料理を作っていただきました。お料理はどれも個性的で素材も素晴らしかったです。そして何よりもよかったのはそのサービス!我々のややわがままな要求にも笑顔で答えてくれましたし、一人一人に配られた手書きのメニューや素材を余すことなく料理にしていただいたあたりにもてなしの心が感じられました。またワインリストのセレクションもなかなかユニークで、値段も比較的お値打ち。今度はメニューにある料理を食べに、そしてお店にあるワインを飲みに行ってみようっと。「ウズラのファルス ホタテとラングスティーヌ入り」なんかが気になっていたりして。



知人宅で。
RD '85 Bollinger
 RD '85 ボランジェ
  (フランス/シャンパーニュ/アイ、シャンパーニュ)
私の持ち込み。色は意外と薄いがややオレンジがかっており、ピンクゴールドを思わせる。泡は盛んで香りも実に豊か。完熟リンゴとオレンジの充実したフルーツに、ハチミツ、クリームやブランデーの濃さ、それでいてハーブのような爽やかさも感じられる。飲むとずっしりとした金属のような質感。酸もメタリックだがとんがった刺激ではなく、磨かれた銀を思わせるような優美なものである。余韻は永遠に続くのかと思うほど。年齢はあまり感じられず、男性的でありながら荒削りなところはまるでないなんとも貴族的なシャンパーニュ。あらめてボランジェのファンになってしまった。

Collection '61 Krug
 コレクション '61 クリュッグ
  (フランス/シャンパーニュ/ランス、シャンパーニュ)
「死んでいるかどうかわからないシャンパーニュを提供します」と言われていろいろ想像していましたが、まさかこれほどのものが出てくるとは!ホストの主 (同義語反復?) に感謝です。色合いは薄く、やはり泡はすでにない。しかしその香りの豊かさは信じられないほどで、シトラスや白い花のチャーミングな香り、クッキーや甘栗、焦がしたカラメルのような甘い香り、そして中国茶 (プーアール茶との意見あり) のような熟成香までめまぐるしくグラスから立ち上ってくる。味わいも非常に複雑で、まず甘味、そして苦味や渋み、まだまだ元気な酸がめくるめくように現れる。若々しい力強さはすでにないものの、他では考えられないような底力を感じさせるシャンパーニュだ。時間とともに濃さが増すのはその証明といったところか。

Griotte-Chambertin '94 Dom. Ponsot
 グリオット・シャンベルタン '94 ポンソ
  (フランス/ブルゴーニュ/コート・ド・ニュイ、赤)
イチゴやチェリーを中心とした華やかな赤いフルーツ群。ああ、これが赤ワインなんだ、と当たり前のことを思ってしまう。その他、シソや生木、パンのような酵母っぽさや海草など結構複雑な香り。見た目はやや熟成感が入りつつ、かつ、薄くなりつつある。飲むと果実の甘みとチョコレートのような苦味の印象が強く、その間を補完する味の要素に欠ける印象は否めなが、とはいえ旨いワインだと思う。近所の酒屋の主は「ポンソの '94 はワインにすらなっていない」などと酷評していたが、だったらタダで頂いちゃいますよ。

Richebourg '87 Henri Jayer
 リッシュブール '87 アンリ・ジャイエ
  (フランス/ブルゴーニュ/コート・ド・ニュイ、赤)
生まれて初めて飲むアンリ・ジャイエがリッシュブールでいいのだろうかと我が人生を顧みる今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか?
閑話休題。アンリ・ジャイエはこの次の年からリッシュブールの畑をメオ・カミュゼに返したために、これがラストヴィンテージになるそうだ。見た目はやや薄い色あい。まず感じられるのは何種類ものスパイスの刺激。このエキゾチックな印象はヴォーヌ・ロマネ村の特徴なのかな?ミント、赤いチェリーがなんともかわいらしく、植物系の熟成香とのバランスも素晴らしい。しかしこのワインの真価はやはり飲んだときにあるのではないだろうか。最初はあれっ?と思うぐらいにおとなしいのだが、すぐに洪水のような味覚の刺激を受ける。なんというかフルーツに野菜、スパイスに海草や苔までも、あらゆる種類の植物がこのグラス一杯に凝縮された印象。かといって押しつけがましい (=私があまり好きでない) 濃さは全くなく、あくまでも自然体でなんら作為的なものを感じさせないワインなのだ。天から降っていきたような、というと言い過ぎだろうか。

Grand Vin de Leoville du Marquis de Las Cases '76
 レオヴィル・ラス・カーズ '76
  (フランス/ボルドー/サン・ジュリアン、赤)
香りはまさに黒いベリー系。ゆであずき。ほのかにタバコ。しかし歳の割りにはかなりアルコールを感じる。飲んでも非常に若々しくたくましい印象がある。これはよほど保存状態が良かったのではないでしょうか?しかしこういうのを飲むとビーフか羊が食いたくなるな。

Pacherenc du Vic Bilh '97 Ch. d'Aydie
 なんて読むのか全然わからない。すまぬ。
  (フランス/たぶん南西地区、甘口白)
色は金色。最初は白い花とともにかなりの酢酸エチル臭を感じたが、それが飛び去るとオレンジやパイナップルのような爽やかで甘いフルーツが香る。ベースは花の蜜やクリーム。南方のワインのわりには酸や苦みが効いており、余韻も長い。なかなかいいワインだとは思うが、個々の要素のまとまりともう少しばかりの深みが感じられるとさらにうれしいのだが。
毎度のことながら、お世話になりました>ホストさま、みなさま。
次回があれば、そのときはよろしくお願いいたします。



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