早起きして空港バスで金浦空港国内線ターミナルへ。急に決めたから束草(ソkチョ)の ことがよくわからない。行ってみなければどのみちわからないのだが、簡単な予備知識ぐ らいあってもよい。寝る前にざっとガイドブックを読んだが、雪岳山(ソラクサン=ソr ・アク・サン)の記事ばかりである。雪岳山は何度かヒョンやママの娘に勧められたこと があるが、1人で行って楽しいのだろうか?しかもこの寒空の下。
初めてみる国内線はなんだか小さくて「飛ぶんだろうか?」と疑ってしまう。普通は大き なものを見て「こんなものが飛ぶのか」と思うものだが、自分は確かにそのときそう思っ た。飛行時間は50分。高速バスでも市外バスでも5時間ぐらいかかるが、飛行機なら日 帰りできてしまう。しかしせっかくだから1泊することにした。残りの日数がもっとあれ ば2泊でも3泊でもしたかった。
束草に着く。「韓国で一番寒い」と李さんに脅かされたが、天気がよかったので耐えられ ない寒さではなかった。これからどこをどう行ってどう迷って、あたふたしているうちに リコンファームを忘れるといけないので、すぐカウンターで確認してもらった。その間に たまにしか来そうにない市内バスが行ってしまった。このとき、レンタカーの案内カウン ターをちらりとでも見ておけば、翌日のバカなマネをせずに済んだのだが、その時は行っ てしまったバスの代わりに、タクシーに乗らねばならないということに神経を集中してい た。なんだかぼられそうな雰囲気だった。
旅館は市外バスターミナルと高速バスターミナルの近くに多いと書いてあったので、近い 方の高速バスターミナルへ向かうつもりだった。タクシーに乗ると、「高速バスターミナ ルまで7千ウォン、市外バスターミナルまで1万ウォン」と言われた。いやに高い。自分 が外国からの旅行者と見てふっかけたなと思った。運転手は発進していいかどうか返事を 待っている。ふっかけるなら到着してからではないんだろうか。先に料金を提示してしま ったら「高いけどいい?」と聞いているようなものだ。バスを待つことを考えたら、仕方 ないと思って「行って」と答えた。
メーターがおかしい。「アジョッシ、料金メーターはどこ?」一応聞く。「メーターでい くらじゃなくて空港からどこまでいくらと決まってんの」と、助手席に置かれた表を見せ る。用意周到だ。なんとか安くさせようと、「日本から韓国語を勉強してきた」とか「韓 国がとても気に入っている」とか「束草ではどこを見ればいいでしょうか」などとしゃべ りまくって機嫌を伺う。韓国が初めてでなく、つまりタクシー料金の相場ぐらい知ってる んだというところをさりげなく伝えたつもりだったが、アジョッシは終始愛想よく話をし てつかみどころがない。それならどこか旅館の見えるところで降りてしまえばいいと思い、 「旅館を探してるから、旅館が見えたら降ります」と言うと、「あ、そうかい」という感 じでモーテルが2,3軒並ぶあたりで止まった。料金はしかし7千ウォンだった。
あーやられたと思ったのだが、こんなところで韓国語でケンカする度胸もなかった。初め てぼられた!と、気分が悪かったが、その後いろんなところで道を訊ねて、その際「タク シーでいくらぐらいですか?」と聞くとだいたい似たような料金を言うのである。空港が らみは誰が乗っても高いのかも知れない。今度行くときは絶対にバスを待つことにする。
オカトホさんによると、地方ではメーターを使わないそうです。この場合、確かに料金は 高目に設定されていますが、予め料金を提示したのはむしろ親切なアジョッシだったよ うで、やはりぼられたのではないみたいです。
降りたところはしかし、海でも山でも何でもないところで、モーテルがでんと建ってはい るが車がちらほら通るだけのところだった。降りる前によく考えればいいものを・・・ でたらめに歩きかけたが、どうやら本当に何もない。遠くにアパート(マンション)風の ものが並んで建っているのが見えるだけ。少し行っては戻るのを何度かやったのち、小さ な雑貨屋に入った。
缶コーヒーのホットを探したが見当たらない。店のハルモニ(一応アジュマと呼びかけた) に「シオナンゴバッケ オプソヨ?」と聞くとそうだという。ソウルのコンビニにはホット もあったのだが、束草で何軒か立ち寄った店にはないのだった。仕方なく冷たいのを買い ながら、「チョー イルボネソ フェーモグロ ワンヌンデヨ・・」。どうして「日本からサ シミ食べに来たんですが・・」なんてアホな挨拶をしたかというと、ちょっとウケを狙っ てみたのだ。「アイゴッ」と驚いてそのあと笑いながら自分の背中をバンバン叩くような 陽気なハルモニを期待したのだが(ドラマの見過ぎだ)、ハルモニは深刻そうな顔で「そ れはそれは大変でした」みたいなことを(たぶん)言って、何だか気の毒そうに自分を見 つめるのだった。「すべった!」と思ったがもう仕方がない。
タクシーに乗ったら高かったからすぐそこで降りたこと、旅館を探しているがその前にサ シミが食べたいこと、そしてだからどこへどうやって行けばいいですか?と畳み掛けた。 ハルモニの言葉がよくわからなくて自分の聞きたいことだけまくし立てたに等しい。はっ きりわかったのは「サシミが食べたいなら(タクシーの)アジョッシにそう聞かなくては」 「初めて来てわからないのにこんなところで降りてしまって」という内容だった。
聞き取れない部分が多いので、とにかく聞きたいことだけ確認してお礼を言って店を出た。 道を渡って・・・なんだったろう?歩きながら反芻する。確かに「歩いて行ける」と言っ ていた。バスがどうとか言っていたが、自分が「歩いて行けますね」と確認したら「行け る」と言っていた。これはある意味で正解だったが、大事な部分が間違っていた。道を渡 って純韓国風の中庭付き家屋が並ぶ中をズンズン歩く。そしてそのうちパッと視界が開け て海・・・ではなかった。また似たような広めの道路だ。
やっと何か聞き違いをしたことを確信して同じ道を戻り、また雑貨屋に入る。「アジュマ ァ チョm チャルモットゥロッソヨ」(ちょっと聞き間違えました)と言うと、さっきよ り一層気の毒そうな顔で「アイゴッ アジョッシ ミアネヨォ」いや、自分が悪いんですと 答えてもう一度聞く。なるほど。やはりバスに乗らねばならなかった。道を越えてほんの ちょっと左にバス停が見える。ははん、そのバス停まで「歩いて行ける」ということだっ たか。しかし2回目でわかったのだから大したもんだと自分に言い聞かせた。旅行中に落 ち込んでもプラスにならない。
デポで降りろという。実はこの名前は翌日もう1度行って確認してようやく覚えたのだ。 ハルモニの前で2,3度復唱したのだがすぐ忘れてしまい、まぁ海が見えてにぎやかなと ころで降りればいいやと、バスに乗った。ソウルで市内バスはなるべく避けてきたのだが、 この際仕方がない。タクシーは今日はもう乗りたくなかった。バスは同じ会社だが系統が いくつかあるということにあとで気づいたが、その時はハルモニに「来たバスにどれでも 乗りなさい」と言われていたのでとにかく乗った。ソウルのバスよりゆっくりしているが、 東京都内をてれてれ這っているバスよりはずっと早い。
店にはハルモニの知り合いらしい、恐ろしい化粧をしたアガッシがいて、ちょうど友達と どこかへ出かけるところだったので一緒に乗った。正確には自分が勝手について乗った。 しばらく揺られて、海が見えた。さぁどの辺で降りようかと迷っていた。予想通り停留所 のアナウンスなどない。ふと離れて立っていた2人を見ると、チラチラこっちを見てから ツカツカと寄ってきた。側で見ると本当に怖い。「アジョッシ、デポに行くんでしょ?過 ぎたわよ。」ありゃ!と思って2人について降りた。停留所1つ乗り過ごした。2人はそ こから歩いてどこかへ行く様子で、「道渡ってまたバスに乗ってください」と言い残して 行ってしまった。
怖い化粧のアガッシの言葉にしたがって、反対側からバスに乗る。ちょうど立っていたア ジュマに、千ウォン札でバスに乗れるかどうか訊ねると大丈夫だという。来たバスに乗っ て千ウォン札を放り込むと運転手に「どこまで?」と聞かれた。デポなんてその時は覚え てないから「次です」としか言えなかった。どこまで乗るかで料金が違うようだが、最短 で430ウォンだった。デポのあたりからバスで空港まで行くと430ウォンである。さ っきの雑貨屋のあたりからだと・・・それでも大した距離ではないから、せいぜい高くて もこの2倍であろう。空港からのタクシーがいかに高かったかがよくわかる。