個別会談2

オカトホさん・りなぽんさん

オカトホさんとかりなぽんさんとか、ネット上の名前で書いていると滑稽なのだが、非常に 苦労された2人である。なぜ韓国へ?という質問はあまり意味がない。もう9年もそこで生 きてきたのだから、そんな経験のないものが気安く聞ける質問でもない。自分はきっかけよ りも苦労話の方が面白いので、きっかけを聞かせてくれたような気もするがよく覚えていな い。オカトホさんは連日のサービスで、りなぽんさんは子育てで疲れているのに深夜まで話 につきあってくれた。ただ、自分は特に言いたいことがあって訪ねたわけではないので、り なぽんさんの手料理と酒を出してもらって雑談をしてきたのである。深刻な雰囲気でたとえ ば「韓国と日本の将来」など議論したのではない。

寒い寒いと聞かされたソウルはそれまでたいしたことがなかったが、この日あたりから冷え 込んだ。地下鉄をこれでもかと乗って着いた駅で、手土産も持たずに来たことに気づいて、 迎えに来てくれたオカトホさんに子供の好みを聞いて、なにかケーキでも買おうと思ってい たのだが、「どうもどうも」とやってるうちに忘れてしまった。寒くて急いで車に乗ったの がいけなかった。

りなぽんさんは緊張していたそうだが、自分は電話でも実際に会ってもリラックスしていた。 前にも書いたが、日本語で構わないというだけで気が緩むのだ。あえて韓国語だけで通そう とする自分の姿勢と矛盾するようだが、そう感じるのだからそれでいい。少し前に呉善花さ んの本について掲示板で意見交換(自分達は激しくやりあったつもりはなく、そもそもお互 いに争っているという意識はなかった)したので、その件で少し意見を聞いた。先日ある人 に「チマ・パラム」3冊をあげたのだが、「韓国人がわかった」という感想だったので慌て てその本の読むべきポイントを教えた。あの本に登場する韓国人が、そのまますべての韓国 人であるはずはないのだが、りなぽんさんの言うように日本語の深い理解と文章の巧みさが 逆効果となって、韓国との接触が薄い人は誤解してしまう危険があるのだった。自分は本当 は、韓国語を少しでも勉強した、あるいはこれから始める人にしか読んで欲しくない。その 点について、直接話ができてよかったと思う。こんなことを書くと、何かの学術調査隊が異 国の駐在員宅を訪ねて情報交換しているみたいだが、上に書いたようにそんな雰囲気では決 してない。3人でくだらない話で笑っていたのが本当のところである。

りなぽんさんとは学年でいうと同期である。社会に出ると年齢による上下はほとんど意味が なく、昔からの友達やごく近い同僚を除くと、あまりぞんざいな話し方はできない(口のき き方を知らないヤツはのぞく)ものだが、中学校や高校が同学年だった場合に限って、やや くだけた物言いになってしまう。自分は「馴れ馴れしい」と思われたかもしれない。

りなぽんさんは一見可憐できれいな人だが、他人の嫁さんだからどんなに美人でもいまさら どうしようもないからあまりくどくど賞賛しないが、「いい男」オカトホさんと並んで赤ん 坊を抱いて、その間にあゆち(上の子)が立っている姿は、そのまま家庭用洗剤かファミリ ーカーのCFになりそうである。しかしそんな美しく平和な姿で語ってくれた韓国生活の歴 史は、誰にでもマネのできない壮絶なものだった。あまり詳しくここには書かないが、一時 りなぽんさんは1人で生活していたのだ。そしてオカトホさんは日本へ逆出稼ぎに行ってい たという。言葉の問題と食べて行く苦労と、そんな話を何でもないようにさらりと、時々語 ってくれた。

結局オカトホさんが鐘閣まで車で送ってくれることになって、よけいに遅くまで居座ってし まった。翌日の飛行機がもっと遅い時間ならお言葉に甘えて泊まってもよかったのだが(む しろそうした方が、オカトホさんは深夜に車を走らせずに済んだ)、もう1段階甘させても らって旅館に戻った。

話は変わるが、韓国の治安が悪くなっているから注意せよとのメールをもらった。自分はそ んな気遣いが嬉しくて、韓国が4度目になって少し警戒がゆるんでいるという自覚もあった から、旅館(モーテル)に荷物を置いて出かけるときは常に気にしていた。江南のモーテル のアジュマは前回泊まった自分を覚えていてくれた(鐘閣の旅館もそうだが、韓国語を使う 日本人の1人旅は印象に残り易いのだろう。もっとも2〜3ヵ月しか経っていないからでも あるが)から、気安くいろんな注意事項を勝手に言うことができた。

「最近韓国は泥棒が増えているそうですが、私の部屋には誰も入れないようにしてください。 私は日本からの旅行者だから、こっちに友達はいません。私の友達だと言ってここを訪ねて くる人がいたら、それは泥棒だから警察に連絡してください。」 最後の部分は冗談めかして笑いながら言ったのだが、アジュマは「年末だからそういう話も 出るんでしょう」(ちょっと記憶が曖昧)と、不思議そうにしていた。結論を言うと、自分 が泊まるような「○○荘旅館」や「**モーテル」はたぶん大丈夫だ。盗難の危険があると したら1泊1万ウォン以下の、鍵がしっかりしないところか旅人宿だと思う。そこは韓国の 経済がこうなる以前から危ない。

それでも空港などは特別に注意していた。パスポートや財布以外は、盗まれて困るものはな かったのだが、「盗難に遭ったまぬけな自分」を想像すると悔しいからである。しかし、人 を見たら泥棒と思うような見方はなるべくならしたくない。多くは善意の人なのだから。 いずれにしても、旅行中の注意を促すメールは大変ありがたかった。

旅行記4−3
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