パラムと仁川

月尾島(ウォルミド)

インチョンと言うと、韓国に興味がない人でも、昔学校で歴史の時間に習った「仁川上陸作戦」を思い出して「ああ、マッカーサーか」と言いながら遠い目をするかも知れない。まさかと思ったが、こういう人は実在する(会社の同僚)。自分は当然、そんなものはとっくの昔に忘れているので、ここウォルミドでマッカーサーの像を見ても、どうしてマッカーサーがここに立っているのかわからなかった。パラムと話したことは、日本読みの「マッカーサー」と韓国読みの「メガド」の、どっちがおかしいかということだけである。

パラムはインチョンのプピョンというところに住んでいるが、もともとインチョンの生まれではない。とりあえず自分を案内するために「ウォルミドへ行かねば」とは思ったようだが、細かな地理はよくわからないそうで、なんだか不安ではあるが、ともかくいい加減に(なんて言ったら失礼か^^;)バスに乗ったらちゃんと着いたのである。実に久しぶりに海を見たように思う。遠くに霞んで見えるのが中国かと思ったが、そんなに近いわけはない。カップルだらけの中を揚げ物の菓子を食べながら歩いて行くと、突然見覚えのある顔が現れる。

なんと今朝がた別れた「澄まし屋」連中である。見回すと10人ぐらいいる。「ウォルさん!!」と、向こうも驚いている。一斉になんやかや言われて自分は面食らうが、パラムはもっと驚いたことだろう。聞けば朝方まで飲んでから、インチョングループを中心に皆いっしょにウォルミドへ遊びに来たのだと言う。呆れるぐらいに元気なのである。皆が皆、勘違いをしたようで「奥さん、おきれいですね」等と言い始め、自分は「いやそうじゃなくて」と慌てるが、パラムはただキャラキャラと笑っている。顔から火が出そうになりながら一団をやりすごし、やはりジョンシクを引っ張って来るんだったなぁと思う。(サシミが苦手なジョンシクはインチョンと聞いて尻込みしたのである)

感激のメウンタン

せっかく海辺にいるのだから、ここはサシミにメウンタン…なのだが、経験上こういういかにも「観光地」であるところは妙に値が張るのである。かと言って、地元住民でないパラムも「穴場」的な場所は知らない。そこで仕方なく半分ボられる覚悟で、立ち並ぶ店の一軒に入る。思ったとおり高い。高いが、うまい。サシミはまぁ、例によって白身の魚ばかりですぐに飽きが来るのだが、グツグツ煮立って運ばれて来たメウンタンは、これまで食べたどのメウンタンよりもうまい。とくに魚のワタ---つまりブヨブヨやプルプルやグチョグチョの(これらは日本語です…なんだか知性のない表現^^;)---のところが、うっとりするほどにうまい。そういうグロテスクなものに、パラムが難色を示すのをいいことに、珍味な部分はほとんど自分が食べてしまう。このとき飲んだ清河(チョンハ)という酒は日本酒そのものの味である。焼酎と日本酒、どちらがサシミやメウンタンに合うのか?それは個人の好みである。自分なら生ビールでもかまわない。

その後でウォルミドの遊園地(正式な名称は忘れた)で、ある乗り物(これも一度覚えたのだが名前を思い出せない)をしばらく見物する。これは、まず男女20人ぐらいがタライのような形の乗り物の中にグルリと向かい合って座る。このタライがときに速く、ときにゆっくりと、回転する。それだけなら目が回るだけだが、このタライが傾くのである。すると乗った人は回転によって上側になると、ずり落ちないように手すりにしっかり捕まって踏ん張らなければならない。これを音楽とDJ付きで延々とやっている。見回すと高いところにDJ席があり、タライよりも一段高いところではお姉さんが踊っており、さらにタライの中心では踊りながら宙返りをするお兄ちゃんがいる。タライはときどき反転しながら回り続け、見物人はあとからあとからやって来る。たまにミニスカートの女の子(なぜか必ずいる)が乗り込むと、タライのオペレーターはその子が上側に来る位置で止めて、大きく揺さぶったりするのである。…しかしこれ、かなり人気があるようだが、乗る人は何が楽しくて乗るのだろう?目は回るわ、連れの彼女が落ちないように(自分だって落ちそうなのに)押さえなくちゃならないし、その彼女がミニスカートならそっちのケアもしなければならない。オジサンには理解できない娯楽である。

プピョン

パラムの住む富平(プピョン)に移動する。自分にとってはソウルに戻る途中で立ち寄る形になる。ここはインチョン第2の都市で、観光地ではない(と思う)。駅から延々と続く地下街を抜け、バー?カフェ?に入る。とりあえずそう書いたが、正式にはよくわからない。ショットバーのようでもあり、ホプのようでもあり、世界各国のビールがずらりと並んでいる。年齢層はわりと低いが、オジサンオバサンもいないことはない。パラムと自分はカウンタ(半径がうんと小さい回転寿司のカウンタが動かない、と言えばわかりやすいかも)に向かい、ビールを選ぶ。

まぁとにかくよい雰囲気でありながら、店も客も気取っていない。後日オクチュと入る喫茶店もそうだが、こういう手頃で感じのいい店が、韓国にはごろごろしている。日本には(と言っても東京周辺しかわからないが)こういう「いい感じの店」が非常に少ないと思う。雑誌に地図まで載っているような街でなければ、ほとんど皆無である。また、ちょっと「いいな」と思うようなところには、すぐにあちこちから人が殺到して雰囲気を台無しにしてしまうし、あるいは着飾らないと近づけないような変な格式をつけて偉ぶってしまう。(ちょっとひがみも入ってるが)日本から学ぶことが多いと、いろいろな韓国人に言われるが、こういうところはもっと胸を張って誇ってもいいと思う。

そろそろソウルに戻らねばならない。ここの店のBGMがとても気に入ったので、バーテンさん(?)にそのCDを教えてもらって店を出る。パラムと何を話していたのだろう?長時間しゃべったわりに、相変わらず端から忘れてしまう。メモを取りながらの会話なんかしたくないし…困ったものだ。

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