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年間ベスト FritzLanger!(フリッツ・ラングfan) 日本映画 その他雑文

BEST1:

「ペパーミント・キャンディ」

 2000年も色々な映画にハマったが、イ・チャンドン監督の作品との出会いこそ最も奇跡的だった。
 処女作「グリーンフィッシュ」といい、二作目のこの映画といい、どちらも苦い酷薄な人生を描きながらもなぜかノスタルジーに満ちている。暖かさとも冷たさともつかない、ある不可思議な温度が映画全体を包み込んでいるのだ。主人公のヒトデナシじみた行動や、その若き日の心温まるエピソードなどの対照的なものを描き出しながら、そこに常に一定の温度が保たれているのだが、この不思議な温度は一体なんなのだろう。あるいは人生に対する達観なのかもしれないが、達観という言葉が似合うほど客観的でもない。映画に奇跡的な出会いを感じるのはこういう、コトバの分析を超えたある「温度」をもつ映画を見た時だ。(ま、「独特の世界」という手垢のついた表現を持ち出しても構わないが‥‥)
 驚くべきなのは、これだけの素晴らしい映画を撮っていてまだ二作目ということ。イ・チャンドン監督のこれからのフィルモグラフィーに、いやでも期待が高まるところだ。
 屈折した人生を送ってしまい、鉄道自殺を実行してしまう主人公の惨めな結末がいきなり冒頭で語られる。映画は、そこからゆっくり彼の人生のフィルムを巻き戻すように、逆向きに展開していく。エピソードがさかのぼるごとに、前進する電車の後ろから見渡した光景を、逆回しにしたフィルムが挟まる。
 人生の節目節目で悪しき結果を呼び込んでしまうツキのない男、その度に屈折を深めていく彼だが、その彼の人生は、いったいどんな駅から出発していたのだったか‥‥
 2000年は「シュリ」をはじめ、韓国映画が一つの流れを作った年だったが、その中でも飛び抜けて印象深かった映画。おかげで私も韓国映画のトリコです。
1999年製作/韓国・日本
監督:イ・チャンドン
出演:ソル・ギョング、ムン・ソリ、キム・ヨジンほか