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年間ベスト FritzLanger!(フリッツ・ラングfan) 日本映画 その他雑文

BEST7:

「アイアン・ジャイアント」

 単純なストーリー、直接的なメッセージが、ただの平凡さに足踏みすることなく、むしろ青空に抜けていくようなさわやかさへと転変し、あまりにも美しいロボット童話となって結実した傑作。アイザック・アシモフの諸作から「ドラえもん のび太の鉄人兵団」まで、ロボット物語は「機械」という機能性を代表するような存在に、機能性に相反する「ヒトの魂」が宿ってしまうことの悲劇を描いて万人の涙を絞ってきたが、この美しいアニメーションもその系列に属する。この映画で最も素晴らしいシーンは、自らも実は破壊のために作られた兵器であり、身を焦がすような破壊衝動を植え付けられている巨大ロボットが、そのような自分自身のありかたと魂の戦いを演じるシーンで、むしろその克服よりも、彼がわき上がる破壊衝動に身を任せてしまうシーンこそが最も胸を打つ。彼は「機能的な戦争」の時代へ、殺戮機械そのものへ歩み行く核時代の人間の比喩であることがここで明らかになっているのだ。そして最後の彼の決断と行動は、人間の善意への期待そのものだといっていい。
 全てのコドモはこの「僕、ミサイル、ならない。スーパーマン、なる。」というコトバに涙する義務がある。しかし思い出してしまうのは、劇場もっとも涙を絞っているのは巨大ロボット世代のお兄さんばっかりで、コドモたち自身は「意外とイイ話だったんじゃない?」なんて分別くさい意見を吐いたりしていやがっていたことである。まー今時のガキなんてそんなもんだ。
 ちなみにジャイアントの飛行シーンは宮崎アニメが地に足をつけはじめて以来、最も素晴らしい「空飛ぶ」アニメーションだった。


1999年製作/アメリカ
監督:ブラッド・バード
製作総指揮:ピーター・タウンゼント 製作:デス・マカナフ 音楽:マイケル・ケイメン
「アイアン・ジャイアント」デザイン:ジョー・ジョンストン