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Macintoshの灯を消すな!

[第2回]

Mac OS X
その勘違いだらけの改良

2000年10月25日
Yoshiki(DreamField)

Public Beta日本語版発売!これで具体的に書ける!(^^)と、さっそく高島屋に行ったのですが、午前10:30の段階で、「閉店までに手続きが間に合わないのでこれ以上は並べません。」、と断られ、購入できませんでした(;_;)。仕方が無い、英語版を元に書くことにします。実は私はDP4から使っていまして、第一回は、知っていながら守秘義務があるので、あーいう書き方しかできなかったのでした。

第一回を読んでない方は、必ず先に読んでくださいね。目の前に実際に物があるかのごとく感じられるように努力を重ねたGUI。これこそがMacだけが唯一持っている優れた独自性であり、MacがMacである条件なのです。

さて、Public Betaを見て、どうでしょうか?残念ながらこの独自性は無くなってしまっています。Finderは完全に覗き窓です。つまり、Mac OS Xは、現段階では最早Macintoshでは無いのです。でも、まだPublic Beta。Apple社は様々な要望を聞いて、改良を繰り返しています。この改良によって、いずれはMacintoshになれる日が来るのでしょうか?それを検証するために、今までどのような改良が行われたのか、その一端を見てみましょう。

Macユーザの要望を受けて、FinderのToolBarを消せるようになりました。リスト表示も付きました。フォルダーをOpenした時に、別Windowで開けるようにもなりました。デスクトップをクリックしただけで、Finderがアクティブになるようになりました。CD-ROMを入れると、デスクトップに現れるようになりました。なるほど、一見どんどん現行Macに近付いているように見えます。見た目だけは。

そうなのです。これは見た目だけなのです。その本質は何ら変わっていません。まず、フォルダーを開いてみましょう。フォルダーをダブルクリックすると、通常はウィンドウの内容がその中身に変化しますが、設定によっては別ウィンドウが開きます。この別ウィンドウを開く機能が、Macユーザーの要望によって、取り入れられたものです。でも、ウィンドウ自体に表示している場所を変更する機能がありますから、その中身をくるくる変えることができてしまいます。しかも、既に開いているウィンドウと同じ場所にも変更できますから、同じ場所を表示しているウィンドウを複数開くことも可能です。つまり、目の前にある物体が、突然変化したり、2ケ所同時に現れたりするのです。現実の世界の物だったら、こんなことが起こるわけがありません。つまり、これは覗き窓にすぎないのです。

これは、実は大問題を含んでいます。そもそもMacユーザーが別ウィンドウを開くようにして欲しいと要望を出したのは何故でしょうか?Macユーザーは、無意識の内にFinderが実際に目の前に物があるかのごとくふるまうと思い込んでいますし、それが人間にとって自然な形ですから、それを実現して欲しくてそう言ったはずです。ところが、Apple社では、何故こういう要望が出たのか、その理由を深く考えることなく、言われたままを実現しました。こんな改善には、何の意味もありません。かえって一貫性がなくなるだけです。

ToolBarを消して欲しいと言う要望も、目的は同じです。ただ消せば良いというものではありません。でも、Apple社では、素直に要望を受け入れ、消せるようにしただけです。

極め付けはCD-ROMを入れたらデスクトップに表示するようにして欲しいと言う要望でしょう。デスクトップに表示する理由は、アクセスするのを簡単にして欲しいからだとでも思ったのでしょうか?確かに、デスクトップにも表示できるようになりました。でも、Computerの中にも同じものが入っているのです。もう、悪い冗談にしか見えません。ひょっとしたら、今のGUIを愛している人達が、わざと勘違いしているんじゃないかと邪推してしまいます。だって、あまりに考えが無さ過ぎでしょう?

本当に現行Macの操作性を再現させるつもりがあるのなら、まず、この設計思想そのものを変えないといけないはずです。目の前に本当に物があるかのごとく感じられるGUI。これさえ守られれば、見た目なんか変わってもかまいませんし、もっと斬新なものが考えられるのなら、操作性を変えたってかまいません。ところが、Apple社では、本質に何一つ手を付けず、見た目だけを変えています。これは、例えるなら、WindowsをSkinでMacそっくりにするようなものです。見た目だけ同じにしたら、それは使いやすくなりますか?

では、何故このようなことになってしまったのでしょう。現在のMac OS Xの改良は、やってはいけない方法で行われています。それは、一つ一つの要望を取り入れ、まんまその要望通りの改良を行ってしまっていることです。ToolBarを消して欲しい。消せるようにしました。フォルダーを開いた時、別ウィンドウで開いて欲しい。開けるようにしました。そうじゃないでしょう?何でそういう要望が出たのか、その根本を考えて解決しなければ、何の意味もありません。ユーザーが要望を出す時、その本当の理由には、自分自身気付いていないことの方が多いのです。こうなったら便利だなー。そういう具合に要望は出ますが、本当に重要なのは、何故そう思ったかです。こうなったら便利。それは、本当の要望の一面にしかすぎません。本当にやりたいことを解決するもっと良い方法があるかもしれませんし、その一点だけ改良してもまるで不十分かもしれません。それどころか、実はやりたいことはもっと他にあって、現状の制限から、そういう要望が出ただけなのかもしれません。何より、全体から見たらかえって使いにくくなってしまうことだってあります。いや、むしろそういうことの方が多いです。このように、言われたことをそのまんま実現しても、要望に答えたことにはならないばかりか、かえって使いにくくなってしまうことがほとんど。こんなことはプログラムにおいては常識です。でも、こんな基本的なことを、分かっていないとはとても思えないのですが。

目の前に実際に物があるかのごとく感じられるようなGUIが嫌で、わざと当たり障りの無い改良をくり返しているのかもしれません。でも、Mac OS Xのユーザーインターフェースは、まったく新しい、さらに先を行くものなのでしょうか?そう感じられる方もおられるようですね。でも、昔から様々なOSを使用し、UNIXでも仕事をしていた私にとっては、こんなの斬新でもなんでもなく、過去いくらでもありましたし、むしろこういう独り善がりなGUIは、もういーかげんうんざりなのです。

(もううんざりだから、唯一そうではないMacを主に使っていたのに。だいたい、私にはMac OS XのGUIって、Windows3.1の延長にしか見えない。Windows3.1が出た時、Macユーザーにはたちの悪い冗談にしか見えなかったはずなのに、今回は何でそうではないのだろう?)

まだ機能的に不十分で、Apple社が頑張れば良くなる部分については、私は何の心配もしていません(例えば、インターネットの設定が再起動しないと行えない、等。)。そういう部分に関しては、時間が解決してくれるでしょう。でも、そうでない部分。どう考えても勘違いしているとしか思えない部分。そこに関しては、悲観的な予測しかできません。今のやり方のままでは、Apple社が何万回改良を繰り返そうと、決して良くはならないでしょう(と、言うより、明後日の方に向かって、どんどん悪くなる。)。私が、Mac OS Xの将来を憂いているのは、これが理由です。早く目を覚まして欲しいと、切に願います。

さて、今回は次回予告があります(^^;)。本気で実用的に長時間使わなければ、本当の評価などできはしない。これが私の持論です。だからどんなに使いにくかろうと、PowerBookに入れて常に携帯、Public Betaを使い続けてきました(今だって、この文書はPublic Betaの上で書いています。)。その結果、大分こいつのGUIの正体が分かってきました。この経験を元に、エンジニアでも何でも無い人にとって(そもそも、こっちがMac OSのメインターゲットのはずです。)、Mac OS Xはどのように使えば(少しは)使いやすくなるかを論じたいと思います。題して「Mac OS Xとつき合う賢い方法」です。さらにその次の回で、Mac OS Xに対する具体的ないくつかの提言をするつもりです。題して「Macは誰のためのものか」です。

2000年10月25日
Yoshiki(DreamField)

補足1:実は、次の日にあっさりPublic Betaの日本語版は買えました(何でも私が追い返された後、すいすい買えるようになったらしいですね。ひどいや〜。 ^^;)。でも、その時には、もうこの原稿の大半は書いてしまっていたので、もう直さなかったのでした(^^;)。

補足2:初めてDP4を使った時、2時間でぶち切れて、Terminalを探し出し、シェルを起動し、emacsを立ち上げたのは、私です(^^;)。こうすれば確かに使いやすい。今だって、仕事上UNIXが必要になるとMac OS Xは大活躍してくれて、携帯できるUNIXって便利だな〜と思う事があるのも確か。でもだからって、Macが無くなってしまったら困ります。UNIXは他にいくらでも代わりがありますが、Macは無いのですから。

補足3:話の展開上、「デスクトップをクリックしたらFinderがアクティブになるようになりました。」と言う改良点については触れられませんでしたが、これもApple社が理由も考えずに言われたままを取り入れている顕著な例の一つです。私、DP4で最初にデスクトップをクリックした時、驚きましたよ。あれ?Finder前に来ないじゃん。おかしいなぁ・・・。ああ!メニューバーだけが変わっている!そうか!確かにプロセスだけはアクティブになっているんだぁ!・・・呆れ果てましたね。だって、何でデスクトップをクリックしたらFinderがアクティブになって欲しいかと言うと、Finderのウィンドウが全部前に来て、ファイル操作ができるようになって欲しいからに決まっているじゃないですか。プロセスだけアクティブになって、何の意味があるのやら・・・。そもそも、Mac OS最大の弱点の一つが、プロセスを多少なりとも意識しないといけないことだと思っているのに、これを強調するような改良するとは・・・。プロセスをうまく隠蔽する方向こそ、さらに先だと思うのになぁ。なお、Public Betaでも、まったく変わっていませんでした。期待したのになぁ。

補足4:そう言えば、FinderのタイトルをFinderじゃなくてフォルダー名にして欲しいと言っている人は結構います。この要望を聞いて、Apple社がどうするのか見物です。これだって、目の前に実際に物があるかのごとく感じられるようにして欲しいから出た要望でしょうが、それを汲んでくれるのかどうか。

補足5:実は私は、Macを消滅させることができるのはApple社以外あり得ないと思っていました。Macは良くできています。他社がどんなにがんばろうと、Apple社がどれだけ傾こうと、簡単なことでは完全に消滅させることはできないでしょう。ただし、Apple社がMac OSを使いにくいものにしてしまったら、これはイコールMac OSの消滅です。だから、Apple社だけはそれができると思ったのです(これを思い付いたのは、System7が出た時。分かる気がするでしょう? ^^;)。まさか、それが現実のものになろうとは・・・。

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