ブロードバンドカーニバル2003年3月6日

Broadband Carnival

ブロードバンドカーニバルは、ブロードバンドによる情報交流の活性化を目的としたNPO法人(現在申請中)「ブロードバンドアソシエーション」が、昨夏にソニーから独立したUKインディーズレーベル「トーリューモン」の協力によって開催した、IT系ベンチャー、企業、コンテンツホルダーなどを集めた交流会で、西麻布のクラブ「Yellow」で華々しく開催されました。

事前の報道でイベントの目玉は「ニッポンで初めて版権処理をクリアした合法的なインターネットストリーミング放送」ということだったので、是非そのストリーミング放送の撮影現場や当日の会場の模様を見てこようと思い、ちょっくら行って参りました(写真撮影禁止だったので画像はありません)。

客層

一番多いときで60~70人近くいた来場者の大半は名刺を配りに来た背広組。あとは仕掛け人のトーリューモンの社長さん(元SME)繋がりの業界人とおぼしきコジャレた人達。西麻布という場所柄か女性は軒並みオシャレさんでした。一方で「クラブに踊りに来ました」という格好の方はごく一部、5~6人程度だったでしょうか。その手の人達も後半には姿が見えなくなり、結局会場はほぼ全員仕事の方だけという状況でした。

ラウンジの方々で繰り広げられる会話はほとんどが名刺交換の社交辞令なご挨拶と業界人同士の雑談。挨拶以外で交わされた会話で興味深かったのは業界人風の方のしていた動画配信の話。「動画配信は帯域がねぇ」等と素人でも行き着く今更な話を語ってました。聞いていた方もえらい納得顔をされていたので思わず笑ってしまいました。

そういう人達の集まりだったので、今回の企画がクラブから音楽を配信しているということに関してはあまり関心が無かったように感じました。

フロアの様子

みなさんラウンジで名刺配りと業界トークでお忙しいこの交流会、当然誰も躍るつもりなんてございません。おかげでそれなりにデカイYellowのメインフロアは、ここの模様をストリーミングで流そうというのにスッカラカン。通り過ぎる人がチラホラといる程度でした。結局イベント全体を通じてちょっとでも躍ってた人は10人もいなかったんじゃないでしょうか。わざわざフロアの入り口には「このイベントは録画され後日配信されます」といった旨の張り紙がされ、顔バレ等のプライバシーには気を遣っていたのですが、どうも それ以前の問題のようでした。サクラでも入れておけばよかったのに。

この状況にスタッフの方もこれではマズイと思ったのか、当初は二台のカメラがフロアに向いていたのですが、いつの間にか全てDJブース向けに変更していました。おそらくストリーミングでは最初から最後までひたすらDJブースだけが流されていたものと思われます。これは後日有料配信されたときにわかるわけですがね。

配信映像はこのDJブースの模様の上に専門のミキサーの人がVJとは別の配信用のエフェクトをミックスしたものを使っていました。ラウンジのモニターに映し出されていたので現場でも見ることが出来ましたが、単にネメネメとした画像に「YELLOW」の文字が躍っているだけの単調なもので、ちょっとどうかなと思いましたが、本来コンテンツの彩りになるはずのフロアの風景が全く無いわけですから仕方ないといえば仕方なかったのかもしれません。映像ミキサーの人のエライノリノリな操作が非常に印象的でしたがね。

また紅一点の女性DJ KAORU氏のときはハンディカメラまで動員し、まるでエロビデオのようなグルグルまわる撮影をしていたのが微笑ましかったです。

音源

実態はともあれ、今回のイベントの売りはなんと言ってストリーミング配信を「版権処理をクリアーした音源」で行うという点でした。私もここが最大の関心事だったのですが、これは簡単な話でして、使用楽曲を今回の企画の仕掛け人であるトーリューモンが一括して権利の管理をしてるインディーズの音源のみとすることで実現させていました。つまりトーリューモンが版権管理をしていないそれ以外の曲は一切流れないわけです。

音源は全てCDで供給されていました。そのためメインフロアのDJブースはミキサーにCDJ1000が二台ついているだけの構成。見ていたところどのDJさんもCDの入れ替えがあまり多くなかったので、各DJさんは事前にセレクトした曲を集めてCD-Rで焼いたものか、あるいはレーベルのジャンル毎のコンピレーションCDのようなものを使用していたと思われます。また、DJの中で一人だけ全部カットインだけで繋いでいた方がいたのにはビックリしました。ただでさえ頭出しが簡単なCDJを使っているので大変楽チンそうでしたよ。

一方でストリーミングに乗らないラウンジスペースのDJブースはターンテーブルが装備され、当然のように普通の音源がプレイされていましたが、なんかよく分からない音源ばっかり流れてるメインよりこっちの方が良いというのが正直なところです。やはり全部インディーズレーベルの音源というのはちょっと無理があるんじゃないかと思いました。

イベント終盤&感想

結局、会場も21時を過ぎる頃には名刺交換組の皆さんがチラホラと退散を始めたために人が減り始め、また名刺配りの終了した皆さんもやはりフロアに降りてくる様子はほとんど無く、相変わらずフロアはスッカラカンで、手が空いたスタッフの人が一人フロアの真ん中でウニウニしているだけという状況に。この後の変化も期待できなかったので、最後のDJの方の最初をチラっとだけ聞いて22時過ぎには退散してまいりました。

あれだけ「Club業界初」を謳っていたこのイベント「ブロードバンドカーニバル」でしたが、交流会としての成果は分かりませんが、ストリーミングコンテンツとしては「」な作りで、ましてクラブイベントとしてはハナから成立させる気が無かったんじゃないかと思ってしまうような内容でした。

このようなクラブイベントの有料ストリーミング配信を今後も継続していくやっていくとしたら、今回のような交流会のオマケではなく、ちゃんとしたレーベルのプロモーション事業としてやっていくのだと思いますが(というか今回のような中途半端な催し物はもう沢山です)、海外では合法的な範囲でDJ MIXが無料で配信され、国内でも個人がストリーミングで好き放題DJ MIXを流すのが黙認されている現状で、いくつも手を封じられるビジネスベースで、しかも有料課金コンテンツとしてやることに何のメリットがあるのか甚だ疑問です。

それにネット配信のためにクラブイベントを誰も知らないインディーズの音源だけで行うというのは本末転倒な気もします。このような点から今後もイベントを継続していくのであれば、ストリーミング / クラブイベントの両面からやり方を考え直した方がよろしいんじゃないかと思います。

ただ、今回のイベントの出来はどうであれ、ブロードバンドアソシエーション自体はネットワークを使ってインディーズのアーティストのプロデュースを行うという理念は実に素晴らしい団体ですし、トーリューモンのような一括版権管理を行うレーベルが国内のネットワークで積極的に展開していくのは実に面白いことだと思うので、それぞれの今後の展開には注目していきたいと思います。

これからです、これから。多分ね。(3/18)


関連リンク

ブロードバンドカーニバル … 今回の交流会のページ
http://www.bb-a.org/bbc/

NPO法人(申請中)ブロードバンドアソシエーション … 今回の交流会の主催
http://www.bb-a.org/

トーリューモン … 今回協賛のインディーズレーベル。イベントの仕切りは全てここの方の仕事のようでした。
http://www.toryumon.co.uk/jp/

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