さらに、NWのパイロットのストライキである。
ここで少し説明をしなければならない。まず自分の使用した無料航空券だが、これは正確に書くとTransportation Voucher と言って、ただ金額が書いてあるだけのもので、大雑把に言うと航空券にしか換えられない金券である。3回目の旅行の際に US $1000 分を3つに分けて受け取ったのだ。何故受け取ったのかは、ここで繰り返さないが、とにかくエコノミーでゾーンペックスで、時期を選べばNRT−SEL往復が無料(お釣も Voucher でくれる)になるのだった。期限はその日から1年後、つまり今年の10月8日。それを4回目と6回目の旅行で使い、今回が最後になる。と言っても、それぞれのお釣を合わせると現在のレートで2万円ちょっとになるから、次も格安航空券より安く行けるかも・・まぁそれは今どうでもよい。
ところがこの Voucher は、直接NWの予約課へ出向かないと使えないのだ。せっかくうちの会社に旅行代理店が出入りしているというのに、自分で日比谷まで行かねばならない。無料になるんだから仕方がないと言えばその通りだが、こっちはなにも物乞いをして Voucher をもらったわけじゃない、NW航空に協力した代償として受け取ったんだから、負い目なく言わせてもらう。また、もし自分よりもっと遠くに住んでいる人ならもっと不便だろう。新幹線に乗らなければ予約課に行けないような人にとっては、あまり「お得」な感じはしない。そして Voucher を受け取る時には舞い上がっていて、そこまで考えが及ばない・・これは自分だけか(笑)
予約課に行くのは代理人でもかまわないのだが、自分の周囲にはちょっと頼める相手がいない。去年は土曜日も営業していた(少なくとも4回目の旅行のときまで)からよかったが、いまは平日の朝、有楽町駅から帝国ホテルまでを猛ダッシュで往復しなければならない。早めに会社を出るという方法もあるが、仕事の能率を考えると午後から夜は会社にいたい。それすら、自分にフレックスタイムというものがなかったら半休をとることになる。
まぁそういう事情があって、NW予約課へ何度も足を運ぶのはつらいし、日程もずらせないので、ストの長期化を心配した予約課の人の説得にもひるまず、予約課へ出かけた日に Voucher をチケットに換えたのだった。
が、ご存知のようにNWのストは長引き、11日のNW09便の欠航が決まった。そこからが大変だったのである。勤務中にスキを見て予約課に電話・・これがなかなかつながらない・・をかけ、他社便への振り替え状況を聞く。最初に候補に上がったのは、翌12日午後のKAL便ソウル行きだった。しかし12日午後には大邱に着いていなければならない事情があって、ソウル行きでは困る。そこで成田からでも関空からでも富山からでも福岡からでも、ソウル行きでも釜山行きでも大邱行きでも、とにかく「12日の午後に大邱に着けるように」とわがままを言って調べてもらった。そしていったん11日のKAL便釜山行きが決まった。大邱へ行くならソウルよりも釜山から行くほうがずっと近いので、喜んで大邱の山田ル太ー議長と釜山のスーバクちゃんにメールを送った。ところがその直後にNW予約課から電話が入り、11日の釜山行きは消えた。なんでもその路線が廃止になったと説明されたが、スーバクちゃんが調べたところによるとそういう事実はなく、これはいまだに謎である。
「また調べます」と言って電話は切れ、白紙に戻った。仕事の方も大変なことになっており、頭の切り替えが難しかった。「ノースウエストから電話です」などと、周りに聞こえる声で取り次がれると「ヒヤッ」とするのだ。そして「ソウル」だの「釜山」だのと電話口に向かって話すのも苦しかった。自分の仕事にまるで関係のないキーワードだからだ。
定時ギリギリに電話が入り、羽田−富山−ソウルというルートが提案された。そのルートは構わないが、羽田空港に早朝に行かねばならない。NWのチケットを持って行って、それを書き換える手続きの時間を考えたら、始発電車に乗ってもイチかバチか・・という時刻だった。その検討をしているあいだに「あ、ちょっと待ってください」という声がして、羽田−関空−ソウルが次の候補に上がった。が、それは関空での待ち時間が7時間近くもあった。それでも他にルートがないと言うので、OKを出した。
そして不安なままに翌日の日帰り出張を終え、関空での時間潰しに京都から謎の京女「いちごホップ」(ちゃん省略)を呼ぶことにして、出発の前日に念のためにNW予約課に電話をしてごねてみると、11:30羽田発伊丹行きが見つかった。伊丹空港と関空との間はバスが走っているという。もっと好都合だが空席がないという11:40発関空行きをキャンセル待ちにしておいて、当日羽田のJALカウンタに着くまで粘るという作戦だった。とりあえず納得して、明朝の「とんでもない早起き」と「とんでもない時間潰し」が回避されたことに喜んでいると、 明朝まずNW予約課に来てくれと言われた。チケットの書き替えは自分が想像していたよりもややこしいものらしく、最初にすべてをNW側で処理する方がその後スムーズだと言う。「かなりの混雑が予想されますから、扉が開く1時間前から並んでください」などと言う。もう自分はあれこれ言う元気もなくなり、「はいはい」と答えていた。
ところが数時間後、また予約課から電話が入った。明日は金曜日の朝ということもあって、日比谷の予約課の混雑は相当なものになるらしく、箱崎のTCATのNWカウンタに行ってくれと言う。電話を受けながら「また便が替わるのか」とハラハラしていた自分は、ホッとしたすぐ後でその親切さに感激して丁寧に礼を述べた。スト中のNW予約課の忙しさは想像を絶するものだったからだ。客は絶えず押しかけ、電話は鳴り止まず、お姉さん達はものすごく大変なはずなのだった。それをわざわざ自分の旅程の安全を考えて電話をかけてくれたのだから。 ちょっとした休憩時間でも利用してかけてくれたのかも知れない。NW便の欠航はパイロットと会社の交渉のためであって、予約課のお姉さんは何も悪くないのに、なんと親切なのだろう。NW予約課のOさん、それから数日前のIさん、本当にありがとうございました(涙)。落ち着いたら菓子折りでも持っていこうか・・
結局、行きは羽田−伊丹(JAL)、伊丹−関空(バス)、関空−ソウル(KE)となった。いちごホップとの待ち合わせのため、到着が伊丹なのか関空なのかをハッキリさせる必要があったので、羽田−関空はTCATで放棄した。また、帰りまでにスト終結の保証はないので、予めNW10便をキャンセルして、帰りはソウル−釜山(OZ)、釜山−成田(JL)となった。旅行を安く上げるのは大変である。もうこれだけで旅行の半分は終わったみたいだった。
TCATで関空行きの便のキャンセル待ちをキャンセルして、羽田行きのバスに乗る。韓国で乗り慣れた空港バスというものが、日本にもあるらしいということは知っていたが、乗るのは初めてだった。羽田には余裕を持って到着したが、みやげ選びに時間がかかってしまった。本当はいちごホップ用と、韓国で会うソニィ用・ヨニィちゃん用の3種類を選ぶはずだったが、迷っているうちに時間がなくなって同じ物になってしまった。3人のうちでこの事実を知っているのはいちごホップだけである。
いちごホップは人形のようだった。それもかなり完成度の高い美形の人形である。それでいてエネルギーを秘めた姿で立っていた。なんのエネルギーだろうか?・・それはすぐにわかった。よ〜くしゃべるのである(笑)。さすが4つの外国語をこなす才女だけある。しかし相手の話を聞くべきところではちゃんと聞いてくれるし、冗談も通じるし、頭の回転もとても速い。時間潰し程度に呼び出すなんて本当に失礼なことをしてしまった・・なんて思ってももう遅い。
すぐに関空行きのバスに乗る。バスの中で、関空のロビーで、そしてレストラン(?)でビールを飲みながら、初対面なのに次から次から話が尽きない。うっかり出国手続きのことを忘れるところだった。伊丹空港も関空も、ほとんど何も思い出せないのはまさにいちごホップのせい・・じゃなくておかげである(笑)
楽しい時間だったが、韓国語で何か言われたときだけはちょっと居心地が悪かった。以前別な人に会った時にもそうだったが、どうも日本で日本人どうしで韓国語で会話するのが苦手なのである。韓国でならまだしも、日本で「チョウm ベッケッスmニダァ」なんて言われると赤面してしまう。ネイティブでない韓国語を聞くことと、またそれに対して自分も韓国語で何か言い返さなければならないような状況が、どうにも苦手なのだ。こんなに韓国語が使いたくてしょうがない自分も、相手が韓国人でないと急に退いてしまうのだ。たぶん韓国育ちでない韓国人が相手でも、日本でなら同じ反応をしてしまうと思う。日本語、通じるんだから。
プリクラに一緒に写った。自分は一生やらないだろうと思っていたプリクラだが、とうとう撮ってしまった。まったく韓国に関わってから「初めて」が多くなっている。実は大邱ではもっと恥ずかしいプリクラを撮ることになるが、関空でいちごホップと撮っておいたので抵抗なく(いや、抵抗はしたんだった)撮ることができた・・のか? ビールを飲んだ席では自分のカメラでいちごホップの写真を撮った。ちょうど背景に何かのドリンク類の値段が大きく写っており、おみやげ用のきれいな人形が陳列ケースの中で笑っているようである。値段は頭上に「¥200」(爆)・・帰国後も笑わせてくれてありがとう、いちごホップ!
自宅に帰るいちごホップとソウルへ向かう自分とは、関空で誰でもそうする(たぶん)ように、出国手続き後にもう1度フロアの上と下から手を振って別れた。いちごホップはしっかりキマっていたが、自分はそういうのが似合っていないような気がして、本日何度目かの「ごめんなぁ」を小さくつぶやいていた。