ソウル3

セマウル号

セマウル号について何か書いておかねばならない。書かなくてもいいと思うが、ちょっとだけ書いておく。 結果を先に言ってしまうと、セマウル号に乗って特別に感動したわけじゃない。 自分にとってはただの移動手段であって、セマウルに乗りたくて乗りたくてというわけではなかった。 しかし、帰省のたびに乗って飽き飽き(しかも高い!弁当も高い!)している東海道新幹線よりはずっとよかった。 釜山からソウルまで、高速バスより早いが飛行機よりずっと遅く、しかしもっともリラックスして帰って来た。 車窓の景色は高速バスや飛行機とは比べものにならないほどいいと思うが、景色は30分も眺めたらもうたくさんだった。

乗り込んで席(窓側:全席指定)に座って出発を待っていると、アジョッシ(40代と思われる)が話しかけて来た。 アガッシじゃなくてアジョッシなので、それだけでもちょっとガッカリだが、 何を言い出すかと思えば席を替わってくれないかという。 前の席のアジュmマが連れらしいのだが、どういうわけか隣でなく前後の席に座っている。 自分に対する依頼は、そのアジュmマと席を替わってほしいということだった。 自分はせっかく窓側に座っている。ちらりと前の席を見ると、窓側にはハラボジが座っている。 実はこのハラボジも、その前の席のハルモニと一緒に乗ってきてこんな座り方をしているのである。 セマウル号というのは、連れと隣同士になれないものなのだろうか? それはともかく、自分は「この席は譲りたくない!」という気持ちになって断った。 トミーズ雅にそっくりのそのアジョッシは残念そうにしたが、それ以上何も言わなかった。 前の席ではアジュmマが隣のハラボジに同様の依頼をしたが、即座に断られていた。 自分がアジョッシに答えた言葉は「この席がいいんですが・・・」というものだったが、 ハラボジのアジュmマへの返事は「ダメだ!」という男らしい(笑)ものだった。 自分はちょっと2人が気の毒になっていたが、アジョッシに行く先を聞いてみるとソウルの1つ手前のスウォンだという。 もう決定的に譲らないことにした。

しかしその後、弁当を買って(高いしあまりうまいとは言えない)食べたら眠くなって、後半はほとんど眠っていたのだ。 そんなことなら席を替わってあげてもよかったなぁ、と思いながらまたうとうとして、気がつくと2人はもう降りていた。

ジョンシク君と

とりあえず定番の旅館に荷物を置く。前に連絡が取れなかったヌナの友達のことを思い出して電話をかける。 特別に会いたいというわけではないのだが、このまま会わずに日本に帰ると、きっとヌナががっかりするだろうから。 しかし・・・携帯電話に出たのは旦那のようだった。自分が誰なのかを説明するのに一苦労したが、 先方はわりと温和に「ああ、日本からいらっしゃいましたか」なんてことを言って、女房がどこか(聞き取れなかった) へ出かけて留守であることを教えてくれた。このときは何気なく挨拶をして電話を切ったのだが、 しばらくしてヌナから意外な話を聞かされた。なんとヌナの友達は、日本に遊びに来ている間に在日僑胞といい仲になって、 現在は離婚話が進行中なのだそうだ。自分とコーヒー1杯で1時間話したあの日、その相手とは既に始まっていたのだろうか。 ソウルへ帰る日に成田から携帯に電話をかけてきて、「ソウルで会いましょう」なんて言っていたが、 その後何度も日本の彼氏に会いに来ていたらしい。 まぁそれは他人事だからどうでもいいが、その時ソウルの旦那が既に女房の浮気を知っていたとしたら、 電話をかけて来た自分を誰だと思ったのだろう、と考えるとちょっと気分が悪い(笑)。

鐘閣に泊まると恒例の仁寺洞歩きをしてみたが、土産物も飴売りもまったく珍しくなく、 やっぱり安物音楽テープだけを買って旅館に戻った。 仁寺洞に行く前から面白くないのはわかっているのに、なぜ行ってしまうんだろう?と考えながら、 ジョンシク君を再び呼び出そうと思って、それともハラボジに会いに行こうか、ママも来ているし・・・・ しかし結婚式の夜なんかに会いに行っても、やっかいものになるだけではないか・・・ しばらく迷った挙げ句、ジョンシク君とビールでも飲むことにした。

ポケベルでジョンシク君を呼ぶ。いちいち外まで電話をかけに行くのが面倒で、ものは試しで部屋の電話を使ってみたら、 なんとつながった。旅館の部屋の電話は市内通話専用と思っていたら、ポケベルにもかけられるのだ。 自分が録音した旅館の電話番号が間違っていて(アジュmマに聞いたのに)何度もポケベルにかけ直したから、 部屋の電話が使えるという発見は大きな収穫だった。寝る前には釜山のスーバクちゃんをも呼ぶことも試したが、これもできた。 こうなると自分もポケベルが欲しくなってくる。

結局、旅館の電話番号の間違いに気づいたのは、業を煮やしたジョンシク君が「自宅に電話してください」 というメッセージを録音した後だった。ジョンシク君の自宅はソウルではないが、市外局番が不要ということだった。 面倒くさがりの自分がこの日ジョンシク君に会えたのは、以上2つの幸運が重なったからだった(笑)。 「疲れて動きたくない」という自分のわがままを聞き入れてくれて、わざわざジョンシク君が鐘閣まで来てくれた。 有無を言わさず「オレが奢るからな」と宣言して(ヒョンとして奢りたい気持ちもわかってほしいのだ)、 テグタンをつつきながらビールを飲んだ。韓国に来たならビールじゃなくて焼酎を飲めと、 蚕室のヒョンを始めいろんな人に言われていたのだが、ビールが一番好きなんだからしょうがない。 ジョンシク君はとくに何も言わず、自分が焼酎を勧めても「ヒョンと同じものを飲む」と言ってビールにつきあってくれた。 できたら世界最高の日本のビールを腹一杯飲ませてあげたいが、それはいつか日本で会える日まで待たねばならない。 新林ではどうだったか忘れたが、ここでジョンシク君は韓国流に横を向いてビールを飲むので、照れくさくなってやめてもらった(笑)。

帰国

寝る前にハラボジのところに電話をかけて、「挨拶もできなくて申し訳ありません」という挨拶をして、 1時間違いの便で日本に帰る(帰るのか?行くのか?)ママと空港で朝ご飯でも食べようという約束をして、 そのあとスーバクちゃんから電話をもらって(ポケベルで呼んだんだけど)先日のお礼を言って、あっと言う間の10日間が終わった。

ママと韓国で会うのは初めてで、これは自分にとって感慨深いシーンのはずだった。 1年前にハラボジと会った金浦空港で、韓国行きのきっかけとなったママと会うのだから。 が、お互いの性格を知っているがために深読みして、 空港の中で待っていた自分と空港の周りを探し回ったママ(後で知ったのだがヒョン夫妻も一緒だった)は、 結局イライラしながらすれ違うこともできなかった(笑)。スナックでその日のことを罵り合ったが、あとの祭りである。


旅行記5・完

旅行記5−6
帰ろう