旅行記1のどこだったかに、「3年経ったら、今の気持ちはもう書けない」みたいなことが書かれているが、最初の旅行からもうすぐ3年経つ。当時の感動は忘れていないつもりだが、もはや韓国旅行は一世一代の大事件ではなくなってしまっている。韓国は近いのだ。それに比べて、この11回目の旅行の半月前に出張で行った、アメリカ(シリコンバレー)の遠いこと遠いこと。そして、そこは韓国ではもうあまり感じなくなった、まさに「外国」だった。10年前にはそこそこ自信のあった(根拠は曖昧だが)英会話は、風化した上に韓国語が邪魔をして、普段自分が一線を引いているツアー客と、語学的には何も違わないレベルであることに厭でも気づいてしまった。だから韓国語なんかやめて英会話学校に通うか?・・ははは。それは「あっかんべー」である。英会話もやらなくちゃ、とはもちろん思う。でも韓国語をやめようとは思わない。韓国語を忘れて、韓国に行くのをやめても、それで英会話が上達するわけではないから。
11回目の旅行を前にして考えていたのは、そんなことだったと思うが、そこへ追い討ちをかけてくれたのが、ジョンシクである。ホームページに韓国語の掲示板をつけてくれ、「ヒョンの韓国語はもう少しでネイティブです」なんて持ち上げてくれておいて、国際電話で話すや否や「韓国語がヘタになりましたよ」と、奈落へ突き落としてくれた。頼みの韓国語まで・・この10ヶ月、韓国語を使わなかったわけじゃない。その系統の飲み屋へ行けば、ずっと韓国語で通して来たし、ある店で日本語を教えるアルバイトもしてみた(ただし1ヶ月でクビ^^;)し、いろいろと韓国語を使う機会は多かったのだ。それなのに「ヘタになった」とは。
そのジョンシクが、ちょうどアルバイトをやめてヒマになったので、空港に迎えに来るという。発音、抑揚、言い回し、細心の注意を払わないと「やっぱりヘタになりました」と言われかねないので、やや緊張気味に金浦空港に降り立つ。アメリカに比べたら本当に一眠りしている間に着いてしまう距離だ。ジョンシクが道で転んで顔をすりむいた、という話は掲示板で知っていたのだが、現れたジョンシクは本当に痛々しい顔である。顔の筋肉を動かすと痛いのか、今回のジョンシクはいつになく無表情に思えた。ジョンシクと少し話した後で「オレの韓国語どうだ?」と訊くと、「ヘタになりました」と、やはり表情を変えずに答える。10ヶ月前よりヘタになった!韓国語を聞く耳が少しマシになった分、しゃべる方が衰えたようだ。・・10ヶ月前だってたいして上手くはなかったはずなのに・・実は変化などなく、ジョンシクが単にこちらを過大評価していただけじゃないんだろうか?数日後、ヒョンに会いに行って「僕の韓国語、ヘタになったってさ」と言うと、「元からそんなもんだ」と言われるのだ。やはりジョンシクが10ヶ月の間に、自分の虚像を作ってしまったのだと思うが・・ジョンシクに言わせるとそうではないらしい。
いずれにしても、そのまま受け取ろうと思う。今や自分にとって必要なのは「韓国語上手ですね」と言ってくれる人ではない。「そこまでしゃべるなら、もっと鍛え直せ」と言ってくれる人なのだ。以後、帰国するまで気を付けたつもりだが、ジョンシクの最終評価は訊くのを忘れてしまった。入国時よりは帰国時がマシになっていた・・と思いたい。
午前10時の便だった。普通、国際便は2時間前にチェックインしろと言われ、でもまぁこれまで、1時間半ぐらい前に着けば何も問題はなかった。ところが今回、チケットを頼んだひのみかりん(ひのみかりんが誰だかわかります?わからない?・・以前あちこちの掲示板でお馴染みだったんですが・・まぁいいです、とにかくそういう女性です)に、かなり脅かされていた。つまり、最近のソウル便はとても混雑するので、2時間前にチェックインしないとキャンセル扱いにされてしまうのだと。「そんなことはないでしょ?」と電話では強気に答えた自分だが、前日になって急に不安になってきた。「10時の2時間前だから、あーでこーで・・6時に出発すればいいな」そして当日、目が覚めたら6時10分だったのだ!!
自慢じゃないが、自分は旅行前日になっても、荷物の3分の1もまとまっていないのが常である。それを約15分でかき集めてズタ袋に詰め、顔も洗わず鏡も見ないで雨の中を飛び出したのだった。歩きながらタクシーを探すが、平日の早朝にこんな住宅地をうろうろしているタクシーはいない。途中コンビニの前で止まっているタクシーを見つけて、「駅までいいですか?」と訊くと、「ごめんね、お客さん待ってるの」とオジサンが答える。コンビニで買物をしている客のことらしい。そんな悠長なことしてるヤツなんか放っておいて、自分を乗せて突っ走って欲しかったが、そうも言えない。「どうせ駅まで行くんだろうに」「電話で呼んだんだろうか?」「くそ!準備のいいヤツめ!」とぶつぶつ悪態をつきながら早歩きを再会する。(あれ?また現在形になってる^^;)
結局ズタ袋をしょって---そうだ、しかもダウンジャケットを着て来てしまった。これがあとで邪魔でしょうがなくなるのだ---折り畳み傘をさして、駅まで歩いてしまう。切符を買うのももどかしく、電車に飛び乗る・・と言いたいが、そんなにタイミングよく電車は来ないのだ。ジリジリしながら電車を待ち、京成スカイライナーの時刻表を思い出す。予定していた時刻発はもう乗れない。次に間に合うかどうか。それに乗ると成田に着くのは・・あああイライラする!
電車が止まるたびに「こんな駅なんか素通りしやがれ!」と勝手なことを頭の中でほざきつつ、のんびり乗って来る通勤客には「さっさと乗れ!次の電車でもいいのに乗って来やがって!」と、どうしようもない屁理屈で怒鳴りつけ(もちろん腹のうちで)、自分はカリカリしたり溜息をついたり、だんだんと半狂乱になる。ドアに荷物挟むんじゃねぇったら!ああ、またドア開けやがった!減速するな!止まるならすぐにドアを開けろ!開けたら閉めろ!・・・で、ようやく日暮里に着く。
走りだそうにも人が多くて自由にならない。いろんな人に荷物をぶつけながら(わざとじゃないが)京成の切符を買う。スカイライナーは・・・くそ!どうやって買うんだっけ?考えてるヒマなんかないので、とにかく金を放り込んで何も考えずに喫煙席を選ぶ(いや、考えて選んだのか^^;)。そしてホームに降りると場内アナウンスが、スカイライナーの満席売り切れを告げる。「危なかった!」
ここまで来ると、もう開き直るしかない。あとは空港でダッシュするのみ。・・と考えていたらバッタリと会社の先輩に会う。「おお!ああ、ふ〜ん、じゃぁ」と、意味不明の会話をして別れる。ここで自分はその人が成田へ出張するものと思い込んで納得し、その人は自分が会社へ向かうものと思い込んで納得したらしいが、あとで訊くとその人は、なんと同じ韓国へ出張だったのだ。そうとわかっていたらソウルを案内したのに。
成田に着く頃になって、第1ターミナルか第2ターミナルかを忘れていることに気づく。急いで荷物を引っ掻き回して確認する。スカイライナーを降りると猛ダッシュ・・のはずだったが、なんで皆こうのんびりと歩いて邪魔をしてくれるのか。バカでかい荷物をガラガラ引いて、エスカレーターの前を塞ぐ。チケットを受け取るカウンターへまっしぐらに(気持ちだけ)たどり着くと、なんと誰もいない。空港でチケットを受け取るパターンというのは初めてなので、また何倍も不安になる。時計を見ると搭乗の1時間20分前。やはり2時間前で締め切ったのか!?
カウンターをコツコツ叩きながら待つこと10分(たぶん)。待つしかない。締め切ったのなら待っても仕方がないのだが、じゃぁどうしろと言うのだ。・・そこへ「お待たせしましたぁ」と、品のいいお姉さんがやって来た。恐る恐る引き替え券を渡す。「はい、ソウルですね」拍子抜けするほど落ち着いて、なんでもない顔つきでチケットをくれる。ようやく自分は自分を取り戻す。間に合ったのだ。・・・間に合った?もしかすると、これは当たり前なんじゃないのか?自分は最後にお姉さんに訊く。「キャンセルになっちゃうのって何分前ですか?」するとお姉さんは「そうですねぇ、40分ぐらいでしょうか」・・・自分はクラクラした。何が2時間前だぁ!!(ひのみかりん、これ読んだらメールよこしなさい(笑))