ジョンシク、フル回転

頼まれもの

韓国人は図々しい、という見方がある。日本人より馴れ馴れしい、という見方もある。自分はそうは思わない。図々しい人もいれば控えめな人もいる。すぐ友達みたいになれる人もいれば、なかなか打ち解けない人もいる。それは自分が日本人だからというよりも、その人それぞれの対人関係のスタンスなのだと思う。「日本人はこうで、韓国人はこうだ」という押し付けは、日本人にも韓国人にも認めたくない。もちろん文化の差は随所にあって、「ああ、これは韓国人だ!」と思うことはある。きっと相手も「ああ、これは日本人だ!」と感じているのだろう。それはある。大声で「ある!」と言える。しかし、それでも「韓国人はこうだからねぇ」なんて他人に言われたくない(主観)し、たぶんそう言い切ってしまうのは間違いだろう(客観)。

さて、自分がこれまでに知り合った韓国人の中で、一番馴れ馴れしくも図々しいアジュmマの登場である。この人はカラオケ居酒屋と韓国エステの経営者で、自分と顔見知りになってたった1週間で「韓国の妹に渡してくれ」と現金5万円を託し、そのときに妹から荷物を受け取って来てくれと頼むのであった。それ以来、自分は決して韓国クラブや韓国料理屋で「いついつ韓国に行くんだ」なんて話はしないことにしている(笑)その理由は、これから書く。

まぁ鐘路(チョンノ)あたりで会って金を渡して小荷物を預かるだけだと思っていたし、向こうもそう言っていたから、その日はそれほど煩わしさも覚えずに、その人の妹に電話をかけ、鐘閣(チョンガク)の近くで昼飯を奢ってもらう。このときに帰りの苦労がわかっていたなら、カルビを死ぬほど食べてやるのだが、自分は控えめにテンジャンッチゲ(ちょうど食べたかったし)を頼む。その人の妹は、姉とは反対に控えめで遠慮深く(体形はそうは見えないが・・失礼^^;)、いきなりパンマルでしゃべった姉とは違い、最後まで丁寧な言葉づかいだった。・・・が、帰る日に空港に現れた「小荷物」は20kgを超えるキムチやら肉やら・・それをその娘(高校生?)がタイヤ付きのキャリアに乗せて引いて来たのだが、わざわざキャリアから降ろして渡してくれるのである。どこから見ても母と娘である(つまり同じガッチリ体形)2人を前に、自分と見送りのジョンシクは絶句するのである。・・・日本で途中の駅まで荷物を受け取りに来たそのアジュmマのダンナは、「こんなの人に頼む荷物じゃないよ!」と驚いたり恐縮したり、我が妻の図々しさに呆れ返っていた。

蚕室球場

午後ジョンシクを呼んで「野球を見に行くぞ」と伝える。まずお決まりのコースとなった南大門市場で眼鏡を2つ買い(これで4つめ^^;)、地下鉄で蚕室球場のある総合運動場に向かう。途中三成(サムソン)で降りてキムチ博物館を目指すが、今回もまた工事中(もう2度と行ってやらん)。ヒョンの友達に電話をかけてみると、都合が悪くて野球を見に行けないと言う。すまながってくれたが、どっちみちこちらは断りの電話を入れるつもりだったから、ちょうどよかった。

対戦カードは斗山(トゥサン)ベアーズ対LGツインズ。本拠地がソウル同士の対戦なので、日本でいうと巨人対ヤクルトか?(かなり違うような気がする)斗山というのは昨年までOBという球団だったものが身売りして名前が変わったのである。(訂正:OBはもともと斗山系列でなので、「身売り」ではないそうです。Lucyさんありがとうございます)前回応援したベアーズを、今度もまた応援する。選手の名前の記憶がかなり怪しく、はっきり記憶していたのは外人助っ人のウージュ(日本読みだとウッズ?)だけである。最初に座った席は応援団のすぐ前だったのだが、その位置は出入り口に近く、トイレ帰りの観客達がたむろして見えなくなりそうなので、数段下の席に移動する。ところがこの席、チアリーダーの踊りを下から見上げる形になり、なんとも恥ずかしいのである(でも見上げるのだった^^;)。

例のカンカン打ち鳴らすバット風船を買い、ジョンシクにも渡して応援を強要し、新しくなった応援歌に合わせて右に左に振りまわす。そう、これをやりに来たのだ!・・・が、ベアーズはこの日大敗する。前日も翌日も、たしかその次も勝つのに、よりによってこの日だけ。自分が観戦して2戦2敗である。次に見に行って負けたら、ベアーズには見切りをつけるつもりだ(--#)

ジョンシクと別れ、旅館近くでカルビタンを食べる。このカルビタン、カルビを売りにしているような店で注文すると、なんとなくガッカリされる(ように感じる)。アジュmマの顔が「そんな安いもの食べるの?」と言っている(ように感じる)。が、好きなのだから安かろうが高かろうが大きなお世話である。焼き肉を注文して欲しかったら「2人分から」なんてお約束を早くとっぱらってもらいたい。どんな風にうまいのかは、説明するより食べてみるほうが早い。あまり辛いものに慣れていない人は、このカルビタンや、ソルロンタン、コムタンを食いつないでいけば、韓国3泊ぐらいは大丈夫である(たぶん)。

腰痛と彷徨

翌朝、なぜか腰痛なのである。今はなんともないので、もうその痛みは忘れてしまったが、この日は腰がギシギシと痛んでいた。野球場で冷えたのだろうか?・・それでもジョンシクと待ちあわせた時刻まで、前回入れてもらえなかった曹渓寺(チョゲサ)を見に行く。お釈迦様の誕生日(プチョニm オシン ナル)の行事用の飾り付けに忙しい。物々しい警官隊は跡形もなく、壊れた建物の修復工事さえなければ、あんな騒動があったことなど忘れてしまいそうである。そのあと鐘閣駅前の謎の建物の写真を撮る。いろいろ問い合わせても韓国人に聞いてもサッパリ要領を得なかったこの建物、今でこそ誰もが国税庁と答えるが、そのもっと以前から自分は「何ができるのだろう?」と、旅行のたびに見上げて首をかしげていたのである。その写真と、それからその工事案内の看板の写真は、もう今更見せてもしょうがないので、自分のハードディスクに眠らせておく。

待ち合わせ時刻に鐘閣駅に向かうと、ジョンシクが警官と立ち話をしている。近くまで行くと、単なる立ち話ではない雰囲気である。しばらく横に立って待ってみるが、なんだか話が長引きそうなので、地上に上がって煙草を吸いながら待つ。いったい何をやらかしたのだろう?・・・そのうちジョンシクが1人で上がって来る。「なんだ?」「なんでもないです」・・・よけい気になるじゃないか!

この警官との謎の押し問答は、10ヶ月も経ってからやっと教えてくれた。答えは、なんということはないのである。単に職務質問を受け、ジョンシクが身分証明書(住民登録番号が書いてあるカード)を持ち歩いていないため、話がこじれてしまったのだと言う。そんなことその場で説明してくれればいいではないか。このカードを携帯しない癖は、次回の旅行で自分にちょっと痛手を与えるのだが、その話はまた次回に。

豚のカルビ(テェジカルビ)が食べたい。が、なかなか食べられない。どうもジョンシクは珍しいものを食べさせたいようで、こういう要求はなかなか認めてくれない。あのなぁ、焼き肉関係は2人分からの注文が基本だから、1人でいるときには食べられないのだよ。それでもどうにか納得させて、カルビにありつく。ちなみにジョンシクが一発返事でOKしてくれるものは、プデェッチゲだけである(笑)。

トッケビシジャン(お化け市場?)というのが、東大門市場の近く(あるいはその一部か?)にあって、いろいろ怪しいものがある、という情報があった。そこで勇んで出かけるのだが、自分が名前を知らなかっただけで、以前来たことがある通りである。ふと露店に並ぶ時計に目が止まり、数カ所で検討した結果、迷彩色のG-SHOCKの偽物をW1万で買う。こういうごつい時計が好きなのだ。・・・が、この時計がとんでもないヘタレ時計だったのだ。その場で腕にはめて、帰国して会社で見せびらかし、飲み屋で見せびらかすまではよかったが、約1ヶ月後、真夏の陽射しを浴びて通勤し、強冷房下の職場に着くと時計のガラスが曇ってしまう。曇ったり引いたりを数回繰り返したのち、この偽物ヘタレG-SHOCKは永久の眠りについてしまうのだ。いまも部屋のどこかにあると思うが、探す気にもならない。

その後、龍山(ヨンサン)に向かうが、とくに買物もなく、ブラブラしたあとで早目の晩飯にする。ジョンシクが是非食べさせたいと言う、タンスユクである。スユクというのは以前ジョンシクが謝って注文し、これが自分にとって意外にうまかった記憶がある。しかしタンスユクは中華料理で、日本で言うと酢豚みたいなものだ。味は甘口で、量からして1人で注文するものではないらしい。なかなかうまいが、これは以前ヒョンと食べたことがあり、「どうです?珍しいでしょう?」というジョンシクをややガッカリさせる。ビールを2本頼むと、アジョッシが「サービスです」と言って揚げ餃子を持って来てくれる。

腰痛がだんだんひどくなる。我慢できないほどではないが、できれば早く横になりたい。歳だろうか?それとも韓国で緊張感がなくなっているのだろうか?とにかくコーヒーショップでジョンシクと別れて旅館で寝る。せっかくの旅行でもったいないが、この早目の就寝ですっかり回復できてよかったのだ。なんせあんなに重たい荷物を預かることになるのだから。

空港でクソ重たい荷物を預かり、すぐにカウンタで預け、ジョンシクと簡単に別れて飛行機に乗る。すぐにまた、そう、夏にはまた来る、遅くとも年末には・・・と信じて疑わなかった。ところがこのあと10ヶ月、来ることができない。飛行機の事情、自分自身の事情、だんだんと韓国旅行が困難になる。グチって終わりたくないが、韓国ブームなんか自分には大迷惑なのである。(ふんっ)


旅行記10・完

旅行記10−2
帰ろう