S c a r * <01>

 

瞳を閉じてから、どれくらいたったのだろう。

異様に瞳が重いことに気が付いたキラ。

それとともに躯も重く、自由が利かないことに気付いた。

 

うっすらと神経が戻ってくる。

瞼がゆっくりと開く。

眩しすぎる光りが入り込んで、また視界を閉じた。

 

 

記憶ははっきりしている。

ザフト軍のMS4機との対戦で"袋の中の鼠"のような状態のストライクガンダム。

今戦ではアークエンジェルも同時にジン数機の襲撃に遭い、追い込まれたストライクガンダムは呆気なく落とされ、プラントに連れて行かれた。

その時、与えられた衝撃によりキラは気を失ってしまった。

 

もう一度、瞼を開く。

今度は光りにも馴れ、視界が開けた。

そこは、白が基調となった部屋のベッドのうえだった。

同じようなベッドが並んでいた。

『・・・病・・・室』

微かな薬品の匂いからそのように思えた。

きちんとした場所を確認しようと躯を起こそうとしたけれど。

「っいた・・・」

刺すような痛みが躯を駆けめぐり、歯を食いしばることしかできなかった。

 

 

また時が過ぎ・・・。

なんとか躯を起こせるくらいに回復した。

しかしその他はまだ不完全で、特に痛みが残っていた。

肩から背中、手首などには包帯が巻かれていた。

『ここは確かプラント。それもザフト軍艇の中。・・・だとするともうストライクは敵の手の内・・・アークエンジェルは・・・』

脳内では今の状態で考えつくことを考え、次々と生まれる自分への虐待的感情を押し殺していた。

どうしてあの時・・・と何度も思う毎に肩が震えた。

 

シュッ―――。

「気が付いたかね。気分はどうだい」

そんなとき。

ドアは開き、一人の男が病室に足を踏み入れた。

「あ、あなたはっ!」

「まぁそう、あからさまに驚かないでくれたまえ。君はもう自分がどういう身でここにいるか理解しているだろう。それに私のことも知っている」

「・・・ラウ・ル・・・・・クルーゼ・・・」

「ご名答」

キラの思考を読んだかのようにその男は言った。

「ドクターが怪我のほうはまだかかると言っていた。無理せずゆっくり治療するといい」

「誰のせいだと思っているんですか・・・」

クルーゼの手がキラの腕の部分の包帯に触れたが、キラはそれを拒絶し、振り払った。

 

するとクルーゼは、そのままキラの了解も受けずにベットサイドに腰を下ろすと、じっとキラを見つめ話し始めた。

 

「戦争というものは不思議なものなのだよ、キラ・ヤマトくん。同じ人類での分離し、殺し合う。その結果が、この身体だ。コーディネイターというだけでナチュラルの者達は恐れ、蔑視し、私たちを隔離した。この段階で一番苦痛を感じているのが、君のような第一世代のコーディネイターだろう。人間すなわち哺乳類は親となる者がいなければ生まれてきたとしても生きていくことはできない。もし何か一つを切り捨てるとなれば、親という存在よりも『コーディネイターとしての自分』の存在だろう・・・」

 

仮面の中の瞳が、キラの思考を鷲掴みにしたようだった。

 

「何が言いたいのですか」

必死に平常心を保とうと聞き返す。

しかし、相手は一枚も二枚も上手だった。

軽く聞き流すとまた話を続けた。

 

「君にとっては『コーディネイターとしての自分』は過去の自分として扱われているようだが。結局、今君は何をしている?戦争が嫌で中立に残ったのだろう?それなのに何故Gに乗っているのだね?」

 

「・・・みんなのため・・・友達のために・・・」

心臓の鼓動が異常に早くなるのをキラは感じていた。

口内がカラカラに乾いてくる。

自分の言っていることに心のどこかで否定し、悩み苦しんでいる自分に気が付いた。

 

 

「君はそのためなら命までの神に捧げられるかい?」

 

「それは・・・」

 

「そのためなら、目の前にいる同じ人間を殺せるかい?」

 

「・・・」

言葉が続かず、二人の間に静かな沈黙が降りる。

 

戦う者の運命。

自分の正義を押し通せば、反する者が有る。

それを倒さなければ、自分の正義を押し通すことはできない。

 

誰でも死を恐れ、拒む。

誰でも自分が一番可愛い。

正義を語る者。

その感情を全て捧げた者のほうが真の強さを持ち、自分の正義を作り上げる。

 

 

沈黙を破ったのは、クルーゼの溜息だった。

 

「この話は止めにしよう。客人に失礼なまねをしてしまった。今の君には難しい質問だった」

「…いえ」

 

「ゆっくり休養するといい。今から君を収容する所を探しに行かなければ。いつまでもここに客人を寝させておくわけにはいかない。なにかあったら大変だ」

 

「…どうして…」

 

「ん?」

 

 

 

「…どうして、僕を殺さないんですか…。僕は敵のパイロッ…」

 

 

 

「しかし、コーディネイターだ」

 

「それだけで、僕を生かすというのですか」

 

 

「それだけで充分だ。ザフトは君を殺す気も無いし、兵士にする考えも無い。今は一日も早く傷を治すことに専念するように」

そういってクルーゼは立ち上がると、そのまま部屋を後にした。

 

 

>>Next.

 

〈後書き〉

ゴメンナサイ!!なんか書いているうちにどんどんどんよりした方向へ向っていってしま…ぐはり。(吐血)こっこれはアスキラ小説です!純粋に!!!そう思って本人は書いてます、少なくとも…。

Nextは全力でアスキラしますから、どーか…どーか…。(文法がおか死い…)

 

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