S c a r * <02>
肩の震えが止まらない。
傷口の痛みより、ある一箇所の痛みが止まらない。
胸の奥が…。
けれど、今の自分にこの痛みを取り除いてくれるものは近くにいない。
「…ゆっくり休もう…はやく治さなきゃ何もできない」
"逃げることも"
また目の前を襲う、暗闇。
ゆっくり意識を手放す。
何故かキラには敵の艦内で眠りにつくことに戸惑いは無かった。
殺されるならば、もう既に殺されていても可笑しくないだろうと言うのがキラの考えだった。
『おやすみ…』
誰に向けて?
医務室から各隊員の仮眠室への通路。
そこから出てきたクルーゼとそこへ向かおうとしていたアスランがすれ違う。
軽く敬礼をして過ごそうとしたアスランに声がかかった。
「あの少年は君の管轄とする」
「えっ、といいますと」
「この船がプラントに着くまでだがね。本部に話は入っているからその後どうなるかは定かでないが」
・・・君が父上に願するのもよいが、ね。
「は、はぁ」
「それでは宜しく頼むよ、アスラン・ザラ」
「はっ!」
医務室のドアが開いた。
数個並ぶ白のベッドの最奥。
そこだけカーテンがひかれている。
『キラ』
何年ぶりだろう・・・と。
あの桜に木の下、別れを告げた日から・・・。
あんな再会を無かったことにしたら、もう二人が別れてから3年以上の月日が流れている。
アスランはそのカーテンを開けた。
そこに眠る無垢な少年。
それは過去、一緒に時を過ごした何色にも染まっていない、何も知らない少年の頃の顔と変わらぬ物だった。
あの頃は自分だけの物だった、と切ない想いを思い出す。
純粋にこの眠り姫に恋をしていた。
いつもどこか抜けていて、それが天然で。
自分の事だけで一杯一杯のくせにすぐ他人に気を遣うお人好しで頑張り屋。
それで自分が潰れそうになったら誰も見ていないところで涙を流して・・・。
アスランは何度その涙を拭ってやったかと溜息をついた。
それくらい二人は一緒にいた―――あの頃。
アスランの手はまだ眠るキラの頬に触れていた。
ふと顔が綻ぶ。
「おかえり・・・キラ」
眠っているときならばそう言えるのに。
戦争の辛い現実だ、とアスランは微笑した。
柔らかくきめ細かな肌は変わらない。
長い睫毛も変わっていない。
さらり、と絹のような髪も変わりはしない。
変わらない・・・ぷっくりとした唇に、アスランは自分の唇を重ねた。
軽く触れるだけの、優しいキス。
しかし・・・。
「あす・・・ら・・・ん・・・?」
【神は何時になったら僕に幸せを与えてくれるのでしょう】
大きな瞳がゆっくり開かれた。
紫水晶の瞳が見開かれる。
アスランから先程までの柔らかな表情が消えた。
「キラ・ヤマト。この鑑に居る間、私が君の監視に着くことになった。これからプラントへ向かい、本部との交渉をする予定だ。それまで君は軟禁となる。入室は、決まり次第。まぁ大抵が監視の目が届く範囲ということになるから、同室か、隣室かになると思う。
―――軟禁だからと呉々も脱走なんて思わないように・・・」
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後書き》》
あぁ眩しい!!初日の出です。初夢なんてなんのその!!!完徹ですvv(腹減った。さぶい。)
2003。私にとってどんな年に、皆様にとってどんな年になるのでしょうね。
・・・・・と。そんなことを考えたら思った。
SEED今年の10月で最終回!!!!!!\(*O*)/