魂は時に、本当の生を歩む者よりも『生きている』という実感を得る。

それは戦いの中であったり

友と共に過ごす時の中であったり

また、愛した者の隣であったり・・・

魂は、この地で癒される。

 

第一話『夜啼鳥』

8 師匠と弟子

 

「非奈っっっっっ!!!!!」

ばんと、ドアを蹴破る勢いで男が一人入ってきた。

「皐に聞いて、ここに・・・っ」

「おう箕火遅かったな」

「どうも箕火師。非奈、次絹亜師のカードどれ引く?」

「あれ、ししょうさま???・・・んー、じゃぁこれ」

 

非奈は差し出された幾枚かのカードのうち、勘で一枚選び出す。

途端に絹亜はがっくりうな垂れ、葉月はしてやったとばかりにペアが成立したカードを捨てた。

 

息せき切って走ってきた『箕火』は、その光景に青い瞳を白黒させる。

「・・あー・・・・・えっと・・・・・・?」

とりあえず、心を落ち着かせようと肩に落ち掛かる金の髪をかきあげた。

「そうだ箕火、ついでだお前も混ざれ」

「え、え、え?????」

「はい配りなおしですねー」

「あっテメェ不利だからっておい」

「はい師匠の分です」

「あーーーーーーーーーーーーーーー!?」

「これ箕火師のです」

「あ、え、うん・・・・・・・」

「おっまたなかなかの配札・・・・・一気に残り3枚」

「えー、そうなの?」

「あー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

それもかなわず、ただ箕火は呆然とする。

 

触れれば簡単に手折れてしまえそうな自分の弟子は、泣いているものだとばかり思っていたのに。

師の務めとして、また彼女の兄替わりとして、道を示してやるべきだと思っていたのに。

・・・どうやら、自分の弟子は意外と頑強だったらしい。

 

ちなみに彼はこの段階で、ものすごく状況に流されやすい性格だと言う事を暴露している。

「事態の・・・説明をお願いしたいんだけどー」

「だから非奈っち笑ってハッピーエンドでババ抜きだろ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もういいや」

絹亜の言葉に、体を投げ出すように空いてるベットに座り込む箕火。

そして先ほど手渡されたカードに目を落とす。

 

ちなみに彼は、ほとんどの場合結果的には事態が好転していくあたり、ものすごい豪運らしい。

そしてなかなかあきらめも良い。

 

この先、この彼の性格が幸となるか不幸となるかは、誰も知らない。

 

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