偽りの生には、痛みが伴う。
しかしそれと同時に、暖かな光が与えられるのもまた、事実。
魂は死してなお、この地で成長するのだから。
第一話『夜啼鳥』
7 RESTART
「非奈・・・・・・・」
葉月は悲しみを露にして目を伏せた。
「・・・まぁ、非奈がそう言うなら・・」
小梓も、悲壮とそして少しの呆れを顔に浮かべた。
「・・・・・・そう言えば、箕火師遅いですね・・・」
永綺が誰ともなしに言った。
その手には、先ほどからやけにすらすら繋がっているコード。
「あー・・・それはそうだな・・・・・・でもあいつ阿呆だからなー・・・」
「師匠、人のこと言えます?」
また襲い来る、永綺の冷たい笑みに少し押され気味の絹亜。
「あー・・・・・・・・・ああああああああああああああああああああああああああ!!!」
何とか言い返そうという絹亜の思いは、一瞬にして霞と消えた。
理由は、永綺の周りの数本のコード。
「おっおま、お前そのコード!!」
「これがなにか?」
「なんか電力供給コードと情報伝達コードものの見事に取り違えてるだろ!」
「似たようなもんじゃないですか、こんなの」
「違う!全然違う!!!!!」
「・・・・・・えー」
「えーじゃなーい!」
流石に切れる絹亜。
「・・・そーいえば、このコード・・・・・」
「ん?」
「差すときになんか歪んだ音が・・・」
絹亜はぶつぶつ言いながら、永綺の指さしたコードを引き抜く。
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
次の瞬間、思いっきり叫んだ。
「お前なぁぁぁ!!!思いっきり拉げてるぞコレ!」
「あれホントだ。・・でも、良いじゃないですかいっぱいあるんだし」
「あのなぁ、これメインコードだぞ!?っつーかここの機械ぜーんぶ繋げないと100%のネットワーク
できないの知ってるだろーが」
「そうだったんですか?知りませんでしたよ。なんか不便ですねー」
「お前なぁっ・・・・・・・・・!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やーめたー」
絹亜は何やら大きくため息を吐いて、額に手を当てて続ける。
「お前みたいな稀代の機械オンチに配線を委ねたオレが馬鹿だったな、うんうん」
「あっソレその言い方嫌です」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
絹亜は今度は頭を抱えて座り込んでしまった。
「・・・あたしちょっと他に用事あるから、外すわよ」
小梓は呆れ切ったのか、そう言い残して出ていった。
そんな師弟のやり取りを、葉月は本当に呆れた眼差しで見ていた。
しかし非奈は、心なしか微笑んでいるようにも見える。
そして、永綺が絹亜をどつき始めると、ついにくすくす笑い出していた。
「非奈???」
葉月は驚いて、視線を非奈に移した。
「あはっ・・・おかしい・・・・・・えいきも・・・・・きぬ、あさま・・・も」
「え?え?え?僕、そんな可笑しい事しました????」
「おい、非奈っち頭どうかしちまったのかよ」
永綺は狼狽し、絹亜に至っては非奈の頭の心配をし始めた。
それでも非奈はくすくす笑っている。
「・・・・・・・・・・・・非奈」
「あのね、はづき。わたし、だいじょうぶだよ。・・・けど、もしかなしくなったりしたら・・・はづきのところにいくよ」
葉月の言葉をさえぎって、非奈は言った。
「・・・・・・非奈・・・」
「おぉう、青春だねぇ」
「師匠ジジ臭いです。実際そうだけど」
「ほっとけ」
じとりと絹亜が永綺を睨む。
しかしそれをあっさり受け流して、永綺は懐から何かを取り出した。
「さてここにトランプが有ります。そんな訳で葉月と非奈ペア、それに僕と師匠の計1ペアと2人でババ抜き
大会の開催が決定されました」
「永綺・・・・・・あいかわらず変な場面で強引だな・・・」
絹亜はやる気ないようなことを呟いたが、しっかりイスを引き寄せて参加する意志を見せている。
「あ、やりたいな」
「非奈が言うなら」
非奈も、葉月も微笑んだ。