宵夢
act.4 共鳴

ちゃん、いるかい?」
次の日の朝、デュオがの部屋を尋ねてきた。
「デュオさん?はい、ドア開いてます」
返ってきた声に、意気揚々と扉を開くデュオが目にしたのは、栗毛色の仔犬を抱くだった。
「あれ、どーしたのその犬」
「はい、さっき寮の外で見つけたんです。凍えきってて、可哀相だったので連れてきちゃったんです」
いいながらは、ふんわりとしたタオルで子犬のからだを拭いた。
「へぇ、優しいなァちゃん」
「そんなことないです」
その時、仔犬が唸って目を覚ました。
「あっ、良かった・・・そうです、温めておいたミルクが確か・・・」
は腕のなかで動く仔犬に安心して、台所へ走っていった。
「いやいや、優しいよホント・・・。聞いちゃいないみたいだけどさ」
デュオはなんだかすこしため息を吐きたい気分になった。


デュオが部屋に来てから小一時間が過ぎた。
仔犬はすぐ元気になって、はとても嬉しそうにしている。
しかしデュオはいまいち面白くない。
が仔犬を抱きしめようものなら、
(むむむ、そのポジションは俺のもの[※予定]なのに・・・)
などとしても悲しくなるだけの嫉妬心を抱いてしまう。
「この仔犬、なんて言う種類でしょうか」
「さぁ・・・犬の事は分かんないけど、小型犬の部類に入る気はするなぁ」
仔犬はの膝の上であくびをした。
「あの、デュオさん」
「なんだい?」
「寮って、動物大丈夫でしたっけ」
「・・・うーん・・・・・・・どうだっけなぁ・・・取り合えず、今居る奴等でペット飼ってるやつっていない気はするけど」
話題も仔犬づくしである。
デュオは出された温かいコーヒーを飲みながらまたため息を吐いた。
(ホントなにやってんだか、俺)
全く持ってそのとおりである。


「そうそう・・・名前、どうしようかしら・・・」
デュオの訪問から二時間近くたってから、がふと呟いた。
なんだかもう帰ろうかとか考えはじめたデュオは、うーんと唸ったっきりである。
「・・・『でゅお』ってどうでしょう?」
がにっこり笑った。
「はィ!?」
意外すぎるの台詞に驚いたデュオは、冬眠している熊も飛び起きるのではないかというほどの素っ頓狂な
声を上げた。
「それがいいです。ほら、栗毛色ですし。ねぇ『でゅお』♪」
「ちょちょちょっと・・・」
デュオは本気で焦った。
「ふふ、『でゅお』って柔らかいです」
が仔犬に頬擦りしながらそんな事を言うものだから、デュオはつい赤くなってしまう。
「わーっ!じょっ冗談だろ!?」
「はい、冗談です」
はこともなげに言った。
デュオは必死になって呼吸を整えていた。
(狙ってるのか!?それともやっぱり天然なのか!?)
頭の中はぐるぐると渦巻いている。
「どうかしましたか?デュオさん」
「いや・・・なんでも・・・・・・・」
デュオは冷や汗をかいていた。

気を取り直して。
「そんでさぁちゃん、もーすぐお昼だしどこかに」
「そうそう、サリィさんに聞いてみなくちゃいけないですよね、この仔を置いても良いか」
「・・・ははは・・・そうだね」
デュオ、あえなく撃沈。
「デュオさん、名前決まりました」
唐突にがそんな事を口にした。
「なんて名前?」
「さりあです」
「・・・雄じゃないの、それ」
「雄ですねぇ」
「・・・ま、うん。可愛いと思うよ、さりあ」
「ありがとうございます、デュオさん」
は極上の笑みを惜しみなく浮かべた。
それだけでああ来て良かったなァとか思うデュオが居たとかいうのは秘密の話。


ふと、はソファに掛かっている紅いショールに目を留めた。
「そうそう、これ返しに行かなきゃいけませんね」
「借り物?」
「はい、五飛に」
「ふーん・・・って」
「はい?」
「うーふぇいッ!?」
「そうですけど」
はのほほんと答えた。
「えっ何時の間に呼び捨てっ・・・」
デュオ、再び混乱の度壷にはまっている。
「何時って・・・ちょっと昨晩」
「さくばんッ!?」
「はい、屋上で・・・。呼び捨てにして良いからって言われたもので」
「・・じゃぁっ俺も呼び捨てでいい!」
「そうですかぁ?」
はいまいち理解できないような顔をして首を傾げた。
「わかりました、デュオ」
天国の春を連想させる微笑みを浮かべただった。


「そう言えば・・・。デュオってば今朝は何であんなに必死だったんでしょうね、さりあ」
日の光が雪に反射してきらきら輝く午後。
はさりあに語り掛けた。

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後書き
オメデトウゴザイマス。ヒロインには『ザ・キング・オブ・天然小悪魔娘』が贈呈されました(爆)。
そう、ひたすら天然なんです!狙ってるわけじゃないんです(笑)!ビバ天然(ビバって・・・/汗)!
そしてだんだん壊れるデュオ。犬に嫉妬するなよ・・・(苦笑)。
ふふふ・・・しかしデュオのネタは出る出る。
そしてこのシリーズはデュオが(いや、他パイロットもだけどね)ヒロインに一方的に惚れてるので強気に出れていません(笑)
照れが先行するというのだからかなりベタ惚れか(笑)
なんてったって必殺押せ押せ戦法(私の想像ですけどね)が通じないもんだから・・・。

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