宵夢
act.1 邂逅
マリーメイアの事件から3週間−−−。
己のガンダムを廃棄したパイロット達は、プリベンターとして活動を始めていた。
ジャンク屋をヒルデに任せて入隊したデュオ=マクスウェル曰く、
「平和保持のために戦うってのも悪くないんじゃねえの?せっかく手に入れた平和どうこうしようってアホがいた時、
小火のうちに飛んでって殴り倒せるってのがいいよな」
だそうだ。
カトル、トロワ、ヒイロも時期はぞれぞれ弱冠ずれるが何だかんだでしっかり入隊している。
事件解決直後から参加していた五飛を加え、5人はプリベンター独身寮にて生活していた。
「あーやっと眠れる眠れる・・・ったく入隊すぐに残業続きで嫌になるなホント」
厚着をして肩をとんとん叩き、昨晩の内に降ったらしい雪を被った朝霧の並木道を一人ごちりながら歩いて
ゆくのは、栗毛色の長い三つ編みの少年、デュオ=マックスウェルである。
徹夜の残業開けの寝ぼけ眼で、ぶらぶらと独身寮に足を向ける。
「あの、すみません・・・」
ふと投げかけられた、細い女の声にデュオは足を止めて振り返った。
「なんだい、お嬢さん。オレ眠いんだけど・・・」
気だるそうにそこまで言って、デュオの言葉は止まった。
振り返ったそこにいたのは、優雅な烏の濡れ羽色の髪と吸い込まれそうな琥珀色の瞳をした、思わず見とれて
しまうような綺麗な少女だった。
年の頃なら17.8、デュオより少しだけ年上のように見える。
「お疲れのご様子のところすみません・・・あの、少しお尋ねしたい事があるんですけど・・」
彼女の申し訳なさそうな、それでいてどこかのんびりした声で我に返ったデュオは慌ててどこか、引きつった
笑みを浮かべて言った。
「あ、いや、お嬢さんみたいな可愛いコなら大歓迎なんだけど」
「はぁ・・・?えっとですね、この辺りに教会って有りますか・・・?」
少女はのほほんとした口調で尋ねた。
「教会?・・・・・・・・・うーん、思い当たるところはちょっと無いなぁ」
デュオは小首を傾げつつかなり必死に頭に街の地図を描いていくが、誠に残念なことに思い当たる節が無い。
「そうですかぁ・・・・・あ、お手数お掛けしてすみません、ありがとうございました。それじゃあ私はこれで・・・」
少女は少し思案に暮れた顔をしてから、にっこり笑った。
「役に立てなくて、悪いね。・・・ところでお嬢さん、良かったら名前教えてくれない?俺はデュオ=マックスウェル
っていうんだけど?」
「=・・です」
「ふーん、日系?」
「はい・・・あ、そろそろ行かなきゃ・・・ありがとうございました、デュオさん」
梓はまた優しい笑みを浮かべて、踵を返した。
「引き止めて悪かったな、ちゃん。また、今度会えたらお茶にでも誘わせてくれると嬉しいんだけどなーv」
「え、まぁ・・・・ところでデュオさん、疲れてるみたいです・・・・・・・・・ちゃんと睡眠と栄養取って下さいね、私・・・
心配になっちゃいます」
どうやらデュオの台詞の後半は聞き流したらしく曖昧な返事を返して、は少し心配そうに眉根を寄せて笑って
立ち去った。
彼女が付けていたのか、薄く紅梅の香がした。
そして残されたデュオが、
「・・・くぅっいいなぁ、あーゆー娘・・・ちゃんv」
とか何とか言ってたとかそんなことは歩道側に立つ街路樹しか知らない事である。
「どうしたの、デュオ。随分嬉しそうですね」
お昼時を小一時間ほど過ぎたころの独身寮の談話室で、いやににこにこしながらコーヒーを飲んでいるデュオに
そう尋ね掛けたのは金髪碧眼の少年カトル=ラバーバ=ウィナーだった。
「今朝ちょっと素敵な出会いがあったんだよ、あーやっぱりいいよなぁv」
「女か」
「ああそうだろうな」
無茶苦茶に浮かれて、クッションをぎゅぅ〜っvとかしてるデュオを、多少冷めた目で見て会話するのは張五飛と
トロワ=バートン。
「いやマジいい娘なんだってば〜vホントもうなんつーか」
「五月蝿い」
ごづっ。
鈍い音がしてデュオの頭の上に辞書並の厚さの本(しかも角)が着地した。
「痛ってえな、なにすんだよヒイロぉ」
涙目になって抗議の声を上げるデュオに、茶色がかった髪を無造作に散らして静かな怒り交じりの声でヒイロは
言った。
「お前の声が五月蝿くて安眠の妨げになった」
「えー嘘言うなよーお前の部屋3階じゃねえか、ここ1階だしそれに」
「それくらいお前がやかましいって意味だろう」
ふんと鼻を鳴らして五飛が突っ込んだ。
「うっ・・・お前までそーゆーコト言うのかよ」
「五月蝿いのは事実だ諦めろ」
トロワもコーヒーを飲みながら肯いた。
目線は決して合わせずに。
「あああっ畜生トロワまで結託する気だな!」
デュオは意地になって叫んだ。
「もうみんな止めて下さいよ、収集つかなくなるから」
カトルが、内心これ以上ごたごたしはじめたら僕何するか分かんないよ(黒)などと考えながらも、止めに入った。
「何やってるのよ貴方たち・・・」
そんな五人に呆れた視線を投げかけながら、ぼそりと呟いたのはプリベンター隊員の女性サリィ=ポーだった。
「あんたか」
デュオはいまだに怒り収まらぬ顔で振り返った。
「ああもう、いい加減にしてちょうだい。話してなかったかしら、今日ずっと空いてた管理人が入るって・・・」
まったくもう、と言った感じでサリィは言う。
「管理人〜?・・・そんな事言ってたっけ」
デュオははて・・・といった顔になった。
どうやら朝の一件で一時的に記憶の許容量を埋め尽くしてしまったらしい。
「・・・一回脳の摘出手術受けて水洗いしてみろ」
半眼になってヒイロが言い放った。
「もう、ヒイロ!」
サリィが止めに入らなかったら、デュオの怒りが再熱して騒然となっただろう。
「もうすぐその子が来るから、貴方たちは大人しくしててくれないかしら」
時計は午後の一時半を回った。
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後書き
はーい、ドリー夢小説初挑戦です(笑)てゆーか展開バレバレですよね(汗)
ヒロインちゃんの性格はひたすら天然路線です。他バージョンも創りたいとは思ってるのですけど、うーんどうだろう・・・
そして判明した事が一つ。
デュオりん(やめろ)はとっても書き易いですね☆
そして何気にカトル様が黒いです(笑)。単にわたしが黒カトル様が好きなだけだったり(死)。
・・・それとですね。MY設定のGパイロット結局全員プリベンター、のつじつま合わせを・・(死)。
マリーメイアの事件(12/24〜31)後すぐに(ポイント。映画だとなんか雪無いですけど気にしな〜いv/死)全ガンダム廃棄→
五飛入隊→1〜2週間後に他パイロットもぞくぞく入隊→そんで現在、1月の末になってて。
・・・まぁ、深く考えないで読んでみてください(死)。
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