その1 / その2 / その3


…その噂を耳にしたのは発表の1週間前だった。サザンクラブのメーリングリストから流れたその情報は、ものすごいショックだったのと同時に、何故か頭の片隅で95%近く事実だろうと思っていた。でも、口に出してしまうのはとても怖かったし、正式発表があるまで残りの5%にかけた。噂に振りまわされるのだけはやめようと思っていてもあちこちのHPを見るたびに、切なくて…苦しくて…様々な思いだけがぐるぐる交錯して夜一人で部屋にいるとなんとも落ち着かなかった。1週間がとても長かった。

 実は不安な思いが最初によぎったのは昨年末。年内一杯活動休止の案内が届いたときだった。それでも年内一杯という言葉を信じた。再び不安がよぎったのは今年最初の会報での桑田さんの"今年はソロ"宣言を読んだとき。時期が時期だけに…という私の心配をSCのみんなは大丈夫だよと励ましてくれた。  半年が過ぎ、不安もほぼ消えて、「波乗りジョニー」も順調、「古賀紅太」の動きに一喜一憂するようないつもと同じ今年の夏を満喫していた矢先の突然の出来事だった。

 8/11、普段はあまり聞く事のない(…。)桑田さんのラジオもオンエア−が始まるまで、裁判中の判決を待つ被告のような気分だった。何をしてても1日落ちつかなかった。この日のテーマは「身近にいるハチャメチャな人」テーマからして辛かった。楽しいトークも笑い声も不安を吹き飛ばしてはくれなかった。

「結論から言いますと大森が脱退します」  ついに桑田さんの口から発せられた言葉…覚悟はしていた。どんな結果になろうと受け止めようと思っていた。でもやはり…無理だった。辛かった。  サザン解散の噂まで流れる中で最悪の結果は免れたと安心したファンもいただろうが、6人いてこそのサザンと思っている私には同じような結果だった。ファンになってからの想い出が一気によみがえってきた。  ファンの痛みを誰よりも理解し、辛いのは大森くん本人そしてサザンのメンバーだろうと、その後の桑田さんの言葉を受け止めてはみたが…番組終了後はしばらく涙が止まらなかった…できれば本人の口から聞きたかった。桑田さんを信じない訳では決してないが、なんだか綺麗ごとを並べられてるような気さえした。

 ムクちゃんがしばらく抜けてた時期も、毛ガニさんや弘さんがツアーを休んだときも、必ず戻ってきてまた6人のサザンが見られるという思いがあったから、寂しくても平気だった。去年末のコンサートだって次回は6人のコンサートだからと寂しさを紛らわせていた。  結局6人のサザンを生で見たのは茅ヶ崎が最後になってしまった。あのライブのとき大森くんの中にはすでにソロ活動が見えていたのだろうか?考え始めたきっかけはなんだったんだろうか?何故今なんだろうか?大森くんの声を聞きたい。

 そもそも私がサザンにはまったきっかけは、初めて見たコンサートでピンスポを浴びて気持ち良さそうに演奏する大森くんに一目惚れしたからである。ギターをひたむきに愛し、情熱を注ぐ姿にすっかりはまった私は、SCの中では"私=大森くん好き"が定着し、コンサートでは桑田さんより誰より大森くんを観てるという特異な存在だ。子供みたいにやんちゃな姿、お茶目な姿、ただただ惚れ惚れするだけの姿、最初で最後だったと思う渚園での演奏中にギターを外した姿、時折見せた最高の笑顔、いろんな姿が焼きついている。  CDを聞いていても気がつくとギターのメロディーラインだけを追いかけている事も多かった。ずっと言いつづけてきた私の夢は"年越しで大森くん寄り最前列"だった。何年言いつづけてきただろう…結局叶うことはなくなってしまったが。

「今後はソロ活動」 …ずっと"サザンの大森隆志"を愛しつづけた私には複雑な結果だった。ファンだから、好きだからソロになってもとことん応援はしていきたい。温かく見守っていきたい。  でもキツくて身勝手な表現かもしれないが、私から"サザンオールスターズの大森隆志"を奪ったからにはそれを越える"ソロアーティスト大森隆志"という存在になってくれないと、サザンをやめた事について永遠に納得はできないし、ソロとしての活動に心からの応援は出来ないと思う。"サザンオールスターズの傍らソロ活動という"行動を選択しなかったからには相当の覚悟があるのだろう。それくらいサザンで約25年間培ってきたものは大きいはずだ。  それは残った5人のメンバーにも言える事。苦渋の結論だったとは言え一人抜けた穴は相当なものだ。今までと同じことをやっていたのでは納得できない。来年か再来年に再始動する、その行方を見ていきたい。  お願いです。前向きな結果だったと証明できる"何か"を見せて。  今はサザンとして活動していないから、私には実感がまだ沸いてこない。数年後にまた笑って6人に会えるような感じがしている…

 あの発表以来1度もCDは聴いていない。1曲1曲にいろんな思いが詰まってるもの、聴けないよ。5人でサザンのコンサートをするときには今までの発表曲を演奏しないでとさえ思ってる。  でも、私達がいつまでもこんな気持ちじゃ、サザンも大森くんもスタート切れないよね。だから私は悲しくても辛くても泣かないって、辛さを乗り越えたメンバー達が動き出せるように応援して行こうって、決めた。次に泣くのは5人のサザンのコンサートを見たとき。それは許して欲しい。その涙の重さは感じて欲しい…

Y.M


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