法律問題Q&A 破産・個人再生
質 問
サラ金数社からお金を借りているのですが,この不況で残業はなくなり,また,金利がどんどん増えていって,もう支払えない状態です。自己破産,特定調停,個人再生などがあると聞いたのですが,どのような制度ですか。どのような特色,違いがありますか。
アドバイス
@ 特定調停手続について
特定調停は,金銭の借り入れや物品の購入が増えたり,住宅ローンを抱えているのに収入
が減ったりして,約束どおりに支払が出来ない場合に,可能な範囲で返済できるよう,毎月の
返済額を減らしたい,返済期限を延ばしたい,分割払いにしたい等な返済方法の変更を債権
者と話し合う制度です。申立をすると調停期日に,調停委員会から申立人と債権者が呼び出
され,申立人から生活の状況,今後の返済計画などを確認した上,債権者に意向を聞き,残
っている債務についての返済計画(例えば,毎月何万円を,いつからいつまで支払うのか)を,
当事者双方の意見を調整しながら決めていきます。
話し合いが合意にたどりつくと,調停調書というものが作られます。この調停調書は判決と
同じような効力があるので,これに記載された約束を守らないと,相手から給料の差押えや
競売の申立など強制執行を受ける可能性があります。
特定調停制度は,調停の一種であり,簡易裁判所に申し立てます。
A 自己破産について
自己破産は,債務者自らが破産宣告を申立,裁判所が破産を宣告し,破産管財人を選任し
て,その破産管財人が債務者 の財産を金銭に換えて債権者に配当する手続です。
通常は,宣告された日までの債務者 のすべての財産を提出してもらい,これを破産管財人
が売却するなどして換金し配当することになります。
ただし,債務者の財産が極めて少ない場合には,破産管財人を選任しないまま破産手続を
廃止することもあります(これを「同時廃止」といいます)。
破産の宣告を受けても,当然に返済を免れるのではなく,そのためには別に免責の申立てを
行い,免責の許可を受ける必要があります。
そして,破産をすることになった事情に,パチンコ,競輪競馬などのギャンブルや高価品の購
入などの浪費行為や,借り入れをする際に年収,氏名などを偽って借りるなどの詐欺行為な
どがある場合,クレジットで買った賞品を直ぐに換金している,財産を隠していた等の場合
(免責不許可事由)には,免責の許可が受けられないこともあります。
なお,破産宣告を受けても,選挙権はあります。
債務者本人が自己破産,免責決定を受けても,保証人の債務がなくなるわけではありませ
ん。したがって,保証人が支払えない場合には,保証人自身も自己破産,免責の申立をしなけ
ればならないでしょう。
B 個人再生について
個人債務者の民事再生手続は,通常の民事再生手続を簡素化した手続ですが,
(1)将来において継続的に収入を得る見込みがあって,無担保債務の総額が3000万円
以下の人(小規模個人再生)や,
(2)その中でも,サラリーマンなど将来の収入を確実かつ容易に把握することが可能な人
(給与所得者等再生)が申立てをすることができます。
この手続においても,債務者は,働きながら再生計画のとおりに返済し,残りの債務の免除
を受けることになります。
ただし,その再生計画の内容は,原則として3年間で分割して返済し,また,返済する総額
は,債務者が破産手続を選んだ場合に配当される額を上回り,かつ債務の合計額の5分の1
(最低でも100万円)以上でなければなりません。
さらに,給与所得者等再生では,それに加えて債務者の手取収入額から生活に必要な費
用を控除した額(いわゆる可処分所得額。政令の定めに従って計算される額。)の
2年分以上である必要があります。

