講義ノート 刑法
放火罪
第1 放火罪の客体
1 現住建造物等(108条)
(1)人の住居・・・人(犯人以外の者)が住居にしている建造物
住居であれば放火のときに人がいなくてもこれに含まれる。
建物の一部が住居に使用されていれば全体に住居性を認める。
(2)人の現在する建造物、汽車、艦船、鉱抗
2 非現住建造物等(109条)
(1)人が住居に使用せず、かつ、人の現在しない建造物
(2)人の現在しない艦船、鉱抗
3 上記以外の物(110条)・・・自動車、無人の汽車、電車、橋梁、門、戸、塀、家具、建具、他の可
燃物一切
第2 放火罪の着手時期
1 目的物に直接点火したとき
2 導火材料が燃焼作用を継続しうる状態に達したとき(住居に対する放火のため隣接する物置小
屋に点火し、これが燃焼をはじめたときなど)
第3 放火罪の既遂時期
1 独立燃焼説(判例) 目的物が独立して燃焼を開始したとき
2 重要部分燃焼開始説 目的物の重要部分が燃焼を開始したとき
3 効用滅失説 目的物の本来の効用を失う程度に燃焼したとき
第4 放火罪の個数
1 1個の放火行為により、焼損された現住建造物が複数あっても、現住建造物 放火単純一罪
(放火罪が公共危険罪であることから)。
2 被害物件が適用法条を異にする場合(例えば、一個の放火行為によって、住 宅、倉庫と商
品、自動車、を焼損した場合など)はもっとも重い現住建造物放 火罪として処断する。
3 住宅に延焼させる意図で倉庫、物品等、109条または110条の目的物を焼燬
し、住宅に延焼するに至らなかった場合は、現住建造物放火未遂の一罪として処断する。
第5 放火罪における「公共の危険」
自己所有の非現住建造物等(109条2項)及び建造物以外の物(110条)に対する放火罪は「公共
の危険」(不特定または多数の生命・身体・財産に驚異を及ぼす状態)が発生しなければ成立しな
い(具体的危険犯) 。