講義ノート  刑法
窃盗罪

1 窃盗の保護法益
  本件説
  所持(占有)説
  平穏な占有説
2 不法領得の意思
    使用窃盗
     たとえ一時的にせよ完全に権利者を排除し物を自己の所有物のごとく使用すれば、使用後に返
    還する意思があっても窃盗罪を構成するとするのが通説判例
     乗り捨ての場合
     自動車の場合
3 「財物」の意義  管理可能性説
4 窃盗の着手時期
 @ 物色行為開始時に着手を認めるのが一般的(住居に侵入したのみでは、いまだ着手なし)
 A 特定された目的物については、その物に接近したときに着手を認める場合もある(現金のみを領得
  しようとしてレジスターに接近した場合など)
 B 土蔵、倉庫など当然に目的物が内部に存在することが明らかな場合は、侵入した時点での着手を
  認めることがある。
5 窃盗の既遂時期
 @ 他人の占有を侵して財物を自己の占有に移したとき(取得時説) 判例通説
 A 目的物が小さいときは懐中に納めたときとするのが一般的
 B 目的物が大きいときは屋外または構外に持ち出したときとするのが一般的

強盗罪

1 強盗罪における暴行、脅迫
  相手方の犯行を抑圧するに足りる程度のたることを要する(この程度に達しない場合には恐喝罪の
 問題となる)。
2 暴行脅迫と財物奪取との時間的関連
 @ 暴行脅迫を加え、相手の犯行を抑圧した状態の下で財物を奪うのが原則型
 A 財物奪取に着手後、被害者を制圧するために暴行脅迫を加える場合も強盗罪
 B 先行する暴行脅迫により抵抗不能状態にある被害者から、新たに領得意思を生じて財物を奪取
  する行為は、先行行為が強姦の場合を除き強盗罪を構成しないとするのが判例。
3 事後強盗罪 238条
 @ 主体は窃盗犯人(既遂、未遂を問わない)
 A 暴行・脅迫の目的 (1) 財物の取還を防ぐため
                 (2) 逮捕を免れるため
                (3) 証拠を隠滅するため
 B 暴行・脅迫の時点  窃盗行為との密着性が必要(時間的、場所的接着性及び被害者からの追跡
  の有無などを総合的に考察する)
4 強盗致死傷罪 240条
 @ 主体は強盗犯人
 A 死傷を生じた時点 財物強取の手段として用いられた暴行より生じた物に限らず、およそ強盗の
  機会において犯人の行為から生じたものであれば足りる。
 B 本罪の共犯の責任の限度 
  @ 強盗の機会に行なわれた暴行から生じた死傷であれば、強盗共謀者全員が強盗致死傷罪の
   責任を負う。
  A 強盗の機会に共謀者の1名が殺意を持って人を殺害したときは他の共謀者の1名が殺意を持っ
   て人を殺害したときには、他の共謀者は強盗致死罪(殺害が未遂に終わった場合には強盗致傷
   罪)の罪の責を負う。
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