ハモの話 
最近は好みが変わって魚料理も大好きになりましたが、もともとは「肉」か「魚」かの二択であれば、文句なく肉料理に軍配が上がっていた魚嫌いでした。
ですから、暑い夏が来ると必ず食卓に登場するきゅうりもみに、ハモの焼いたんやら、ハモの皮やらが細く刻んで入っていると、「あぁ、またぁ・・・?いややなぁ(^_^;」と顔をしかめたものです。
ハモは骨の恐ろしくきつい魚で、そのままではとてもとても食べられる代物ではありません。
そこで「骨切り」なる調理技術の登場となるわけですね。
骨切りの職人技は、この時期しばしばTVなどでも紹介されているのでご存知の方も多いと思いますが、普通の魚のように骨を取り除くのではなく、信じられない回数の包丁を入れて、その骨が口に障らないように細かく刻んで下ごしらえするという、いかにも京都らしい技です。
この時、身が崩れますからもちろん皮はひきません。文字通り身と「皮一枚で繋がっている」状態です。硬い骨を切りながら身は崩さず、薄い皮にも傷を付けずに、長い長いハモの下ごしらえをするのです(切り身にはしますが(笑))。家ではちょっとできませんね。熟練の技だと思います。
つけ焼きというのでしょうか?たれで焼くほかに、有名なのは「ハモの落とし」。一口サイズに切ったハモを熱湯にくぐらせると、身がぱぁっと真っ白に変わり、細かく入れられた切り込みがまるで花のように開きます。涼しげな器に盛りつけて、梅肉がやはり合うでしょうか、冷んやりとした「ハモの落とし」は京の夏のごちそうです。
盆地特有の蒸し暑さが殊更にきつい京都では、目に涼しく工夫することもお料理の大切な要素のようです。
祇園祭に何故かハモはつきもので、料亭などの7月のメニューには必ずハモ料理が並びます。
海から遠い土地柄、昔は鮮魚などなかなか口には出来ず、生命力の強いハモは、数少ない生で食べられる魚だったとのことです。なるほどそう言えば、あの猛々しい顔つきを見ていると、なんとなく頷けるものがありますよね(笑)。
実際、大きくて良いハモは今も高級魚で、お値段も結構張ります。揚げたてのハモの天ぷらなんかコタエられないのですが、なかなかゆっくりと食べに行く機会には恵まれません。(;_;) 今年は特に入荷が少なく、例年よりもかなりお高いそうです。
庶民にはやっぱり「はもきゅう(きゅうりもみ)」くらいが晩のおかずらしいかも知れません。
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水無月(みなづき)
毎年6月30日が近づくと、どこの和菓子屋さんにも決まって幟(のぼり)が立ちます。「みなづき」と書かれた、この幟を見ると、「ああ、もうすぐ夏やなぁ。」 と感じます。
・・・「みなづき」、ご存知ですか?
もちろん、6月の異名なのですが、幟の「みなづき」は6月の最後の日に食べるお菓子の名前です。
小さい頃から決まり事のように毎年食べていたので、当然どこのどんな人でも、この日には無病息災を願ってみなづきを食べるものだと思い込んでいましたが、なんと、京都を離れてしまうと、売ってないんですね、これが!(本気でびっくりしました(笑)。)
お菓子自体は大して変哲もなく、三角の白いしんこの上にあずきがびっしり、という、見ようによってはややグロテスクな和菓子なのですが、味はあっさりしていて、大きさのわりには結構食べられます。
もともとは、宮中で氷室に貯蔵しておいた冬の氷を、暑い夏(旧暦だから、今なら7月末頃でしょうか?)に取り出してきて、夏越の祓い(なごしのはらい)として召し上がった、それを下々が真似て、手に入るはずもない氷の代わりに作ったのが「みなづき」だと、由来はこのように聞いております。
子どもの頃はそんなことは知りませんでしたが、とりあえずこれを食べないと、なんだか夏が来ないような気がしてなりません。
・・・といっても今の近所ではどこにも作っているところが無く、
「この夏も、どうぞ元気で過ごせますように。」 と、「みなづき」抜きで祈るしかないのが、なんとも寂しいことではあります。
京都には特に、こういった節目節目のお菓子が多いようです。
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おこうこの煮いたん 
子どもの頃から好きなおかずがありました。「おこうこの煮いたん」と言って、お大根のお漬け物をお醤油で煮いたものです。色は茶色いし、輪切りにした真ん中も長く煮くからへこんでいるし、どうみても子どもの喜びそうなおかずではありませんね。
それでもなぜかこのおかずが大好きで、よく母に「煮いて、煮いて」とねだりました。
「これはなぁ、売ってたら”ぜいたく煮”て書いたぁるくらい手間かかるのんえ」といいながらも
こしらえてもらった「おこうこの煮いたん」は、煮きたてももちろん美味しいけれど、一番好きなのは冷蔵庫で冷たくなった2日目以降。お茶漬けに合うんですよねぇ、これが。
漬け込んでから食べられるまでに日にちのかかるお漬け物を、更に「け出し(あく抜き)」した上にことこと長い時間煮くわけですから、確かに手間モノではあります。でも、そのままでも食べられる食品を敢えてもう一手間かけて別の料理にしてしまうところが、「ぜいたく」と名の付いた所以ではないでしょうか。
・・・とは言え、漬かりすぎて酸っぱくなり、そのままでは食べられなくなったような古漬けを、
京都の人たちは持ち前の「もったいない」精神でなんとかかんとか工夫し、根性出して最後まで食べ切った、というのが、ホントのところのような気もするのですが(笑)。
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おなすの焼いたん 
夏になると食欲減退、というのは世間一般のお話。「夏バテしてなるものか!」という気合いのせいか、油っこいものも結構平気です。で、夏のおかずの定番と言えば、これ!・・・「おなすの焼いたん」。
「そんなん、日本全国どこでもしてるやん」、とのそしりをうけそうですが、そんじょそこらの「おなすの焼いたん」とは、少々訳が違います。
茄子は地域によって大変多くの品種がある野菜のようですが、京都のおなすと言えば、やっぱり賀茂なすでしょうね。ごろんとまるい愛嬌たっぷりの大きなおなすです。
これを横に1.5〜2pくらいの輪切りにし、水に晒してあくを抜きます。おなすの例に違わず油との相性が抜群なので、たっぷりのサラダ油で裏表少々焦げ目がつく程度に気長に焼きます。間違ってもイラ焼きされませんように。中までよく火を通すのが唯一のコツなのです。これを生姜醤油でいただきます。
たったこれだけ、と言えば、そしりの声がますますボリューム・アップしそうですが、この場合、調理方法はほとんど問題ではありません。「賀茂なすを使う」・・・この一点のみが重要なのです。
肉質がきめ細かいのでしょうか。とろっとしているのにへたらず、ジューシーで、ご飯に実によく合います。もちろん、ビールのアテにも最高です。
これほどおいしい「おなすの焼いたん」ですが、実は京都を離れてから、あまり口にしていません。
理由はただ一つ・・・賀茂なすが高いんです。近所の高級スーパーのブランド野菜コーナーに奉ってあるものだから、畏れ多くておいそれとは手が出せません。なんとなく悲しくなります。
それでも、お近くでもし賀茂なすが手に入るようでしたら、どうぞ一度は「おなすの焼いたん」をお試し下さいね。男性でも、とっても簡単、そして本当においしいおかずだと思います。
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