オフ三日目 『蜃気楼塔の情熱』
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目が醒めてみるとベンチの上だった。

背中がひどく痛く、ずいぶん長く眠ったものと見えて頭痛もする。

俺は誰だ?!だいたいここはどこなんだ?!

あらためて見渡すと、そこは見たこともないビルが並び、

見ず知らずの人々が、俺の知らない感情で笑い合い、楽し気に歩き廻っている見知らぬ街だった。

島田荘司『異邦の騎士』の序文である。

ちょうど一年くらい前に氏の『占星術殺人事件』、『異邦の騎士』に初めて触れ、横溝正史と同じくらい敬愛するようになった。

いままで読むことがほとんど皆無だった現役作家の方のミステリー作品を少しずつだが読むようになったのもこれがきっかけだ。

読んでいない作品を評価してはいけないということがよくわかった。

この日、実際目覚めたのは、6時9分である。正確に覚えてるのは、ある人からその時間メールがきたからだ。


朝の耕心村2号棟
新手のいやがら・・・いや、オフ最終日ということで、寝坊しないようにとの配慮だろう。しかし、また寝た。

午前7時過ぎには全員起きたようだ。ひどく寒かった。

ここではすべて自炊なのだが、前日に朝ごはんとしてパンを買っていたのでそれを食べる。

午前8時ごろに、足踏み洗濯を見れるという事なので、行くことに。

私は行く気はなったのだが、ほかの運転手がいかないということもあり行くことにした。

半分くらいの人数を耕心村に残し足踏み洗濯をしてるであろう温泉街の川へ。

誰もいなかった。他に車も走ってはいない。川は、少し増水して激しく流れている。

そのとき、波間はるかに浮きつ沈みつ、ふたりのまえに展がって来たのは、何ともいいようのない異様な光景でありました。

波のあいだを、艪も櫂もつけぬ一葉の小舟が、ひとひらの木の葉のように、浮きつ沈みつ、浮きつ沈みつ。

しかも、その舟のうえには長持ちほどもあろうかと思われる、大きなガラス張りの箱がおいてある。

そしてガラス張りのその箱のなかには、おお、なんということだ、人間ひとり、身動きもしないで仰臥しているではないか。

みたく『仮面劇場』のような光景はなかったが、とにかく人っ子一人出会わなかった。

少し徘徊した後、耕心村に帰ることに、途中右手に人の集まりを見たような気がした。足踏み洗濯はそこでおこなわれているのかも!

車をUターンさせその場所に行ってみる。違った。やはり足踏み洗濯はおこなわれていなかった。

そこに並ぶは、異形の人、人、人・・・・。これは・・・これは、つ・・・いや、いまは言うまい。


金田一ではないが・・・
耕心村に帰る。出発の準備を整え、先ほどの場所、道の駅奥津温泉へ

そこに並ぶ異形の人々。案山子だ。にわかにみんなを取り巻く興奮の渦。

どうやら『案山子コンテスト』を開催してるみたいだった。つっこみどころ満載だ。

創作のいろいろな案山子が並べられている。

なかには雪だるまをテーブルに並べてベンチに座る2体の案山子も。

韓流ブームはここにも来ていた。一緒に写真を撮った人もいたようだ。

みんなの目を一番惹いたのは←の案山子である。実に金田一っぽい。

名前を確認したが、金田一耕助ではないようであった。

少しの時間だったが、みんなそれぞれに歩き廻り、写真を撮ったりした。

異形の者たち

『その山と、この山と・・・それと、あの辺の山と。
ずーっと見えない先の山まで全部田治見家のもの』
私も幾つかの案山子とそこから見える景色を写真に収めた。

ここにきてある人物が開眼を果たす。この場所が、にわかに創作意欲を刺激したようだ。

そう『八つ幕村』監督である。ほかの人に、エンディングテーマ(?)をも熱烈依頼。

『八つ幕村』の完成が現実を帯びてしまう。

そしてそれは名を変え、ある場所で発表されることになるのだが、それはまた別の話。

怪訝そうにこちらを見る道の駅奥津温泉の人々を尻目にその場を後にした。

ここから八塔寺ふるさと村まではかなり遠い。どの道から行こうかという相談をする。

『美作のラーメン屋を知っているから、そこからならわかりますよ。ウケケケケ』

というラーメンの『点と線』を先頭に一路八塔寺ふるさと村を目指す。ウケケケケと言ったかもしれない。


車を走らせる。しばらく走り続けほどなく美作町へ。

朝食がパンだったこともあって、少し空腹を覚えたが、そのまま八塔寺ふるさと村のある吉永町を目指し走り続ける。

そういえば、私が八塔寺ふるさと村の場所を知ったのは、オフの直前である。オフの肯定表に吉永町と書いてないのは知らなかったからだ。

自分のことながらなんというペテン!解散の時間がいいように捻出できなかったのはそのためだ。暖簾に腕押し、糠に釘。スカスカである。

まさに『ペテン師と空気男』。いやペテン師で空気男か。

途中、道を左に鋭角に曲がった。少し狭い山道のようだ。車一台分ほどしかない道も先へ進むほど細くなっていく。

しかし、民家も時折見える。途中に見える標識には八塔寺ふるさと村の字も見える。目的地に順調に近づいているようだ。

しかし道は細いまま山へ山へと私たちの車をいざなっていく。

と、前の車のブレーキランプが光る。程なく車は止まった。

しまった?!こんなところで対向車か?!

今まで走ってきた道をミラーで確認する。うねうねと走ってきた道でのバックは少々きつい。

が、程なく前の車は先に進んでいく。対向車ではなかったようだ。

しかし対向車であった方が、どれほどよかったことか。

そこにあったのはそれよりももっと恐ろしいものだったのだ。

その正体は・・・


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