オフ二日目(下) 『龍臥亭事件』
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ちょうど峠のてっぺんあたりで、ひとりの老婆とすれちがった。

老婆は手ぬぐいを姉さまかぶりにして、背中に大きな風呂敷包みを背負っていた。

すれちがうとき、老婆はいっそうふかく頭を垂れて、口のうちでもぐもぐつぶやいた。

『ごめんくださりませ。おりんでござりやす。おしょうやさんのところへもどってまいりました。なにぶんかわいがってやってつかあさい』

『悪魔の手毬唄』の引用だが、それを地でいく山道が続く。老婆にあったわけではないが。

途中、地図にあるように羅生門へと続く道へ曲がる。・・・脳裏をよぎるのはあの『十字路』での出来事である。また道を間違えてはいないか?

程なく羅生門の駐車場についた。道は間違っていなかった。


羅生門へ続く坂道
そこで『kanosato niimi』という新見市の観光ガイドをいただく。

その人によると羅生門は天然橋の4つの門で構成されているらしい。

大洞穴が、一部を残して陥落した場所のようだ。羅生門へと全員で歩く。

思いのほか山道は長い。それが終わると羅生門の真下へ続く坂道が続いていく。

これも長いようだ。

第一の門らしき場所をくぐり、さらに下へ歩いていく。

下りる。下りる。ぐんぐん下りる。雨にぬれて、道はにわかに滑りやすい。

歩いていける一番下まで下りる。


羅生門

一番下から上を見上げる
みんな言葉少なげだ。そうそうに上へ戻っていく人もいる。

休憩がてら、それぞれにカメラを向ける。

・・・が、どれが第2、第3、第4の門かが、わからない。

しかし悩んでもしかたないのだ。わからないものは、結局わからないのだ。

そして、また来た道を駐車場まで帰る。

上る。上る。ぐんぐん上る。みなの足取りは重たい。

羅生門に圧倒されたのか、全員言葉もない。

いや、結構ハードな道にみんな疲れたことは否めないが。

羅生門の鬼・・・いや、羅生門が鬼だったのだ。

戻ってきた駐車場で、アンケートをしていた。

アンケートが終わった人からまた車に乗り込んでいく。

真上を見上げる

しかし、すぐ車に戻らない人も。どうやらどれが何番目の門であるのか聞いているらしい。ここでは別の人物が浅見光彦となったようだ。


満奇洞へ向かう。いろいろな点を考慮しても、時間的には大丈夫のように見えた。旅は順調だ。

満奇洞へ到着するか、しないかというところで携帯電話が鳴り始める。昼ごろメールしておいた真珠さんだ。

忙しい合間をぬって電話してくれたに違いない。ひとりでばたばたしながら、言葉少なげに他の人へ電話を渡す。

あとで、また話をすればいい。電話を渡した相手はどうやら話込んでいるようだ。

『じゃあね』

と、電話は無常にもそのまま切られた。ばんなそかな!

すぐに電話をかけなおすのも変なので、気を取り直しそこから満奇洞まで歩く。満奇洞のすぐ前にある駐車場ではなかったので少し距離があった。

洞窟に入らない一人を残して、満奇洞の入り口に続く坂を上り始める。

電話が鳴った。知らない番号のようだ。電話に出る。

『ええ?ああ、小山順子さんとおっしゃるんで・・・?

はあはあ、なるほど、いや、そのご心配なら絶対大丈夫です。はあはあ・・・いや、そのご心配はいりませんよ。たとえ相手が警察のご連中でも、

依頼人の許可がないかぎり、ぜったいに漏洩するようなことはございませんから・・・』

と、『悪魔の降誕祭』の前述を引用したところで何人がわかるだろうか?電話は耕心村からだった。

お風呂の準備があるので、いつごろ到着するのかを聞いてきたのだ。基本的に耕心村に管理人は常時いないみたいだ。

耕心村でお風呂に入るか、それとも温泉に行くのか。結局せっかく奥津までいくのだから温泉をえらんだ。

指定された温泉は、午後9時に閉まるらしい。

『午後9時か、解った』

『おい、おい、はは、まさか・・・・』

『午後9時までに温泉に入って見せる!少なくとも、この手記を衆目に晒さなくてもいいところまでは、事態を進展させてみせる!』

『そりゃ犯人を指摘できない限り無理だ』

『聞いてなかったのか?解決とは普通そういうことをいうんだ。犯人を君んちの玄関まで連れていくのは無理かもしれないと言うことだよ』

と『占星術殺人事件』に挑む御手洗潔ばりの発言はしなかったのだが、ここで時間的制約が課せられた。


古本にお金の糸目をつけない人も満奇洞の入洞料は少し渋ったようだ。

与謝野鉄幹・晶子夫妻の歌碑が、入り口の前で出迎える。これには記憶がある。

私は井倉洞か満奇洞、どちらかに来たことがあったのだが満奇洞だったようだ。


満奇洞入り口
中に入る。撮影に使われたであろう場所を探す。皆目見当もつかない。

デジカメなので写真を撮ってあとで検証だ。しかし光が乱反射してうまく撮れない。

結局足早に洞窟内を抜けた。

帰る前に洞窟の下にある食堂に撮影の資料があるということで中に入る。

そこにはこれまで来られた芸能人のサインが幾つか並んでいた。

ひときわ大きい写真には農民姿に扮した何人かの人が。

『いやあ、これは前の『八つ墓村』の撮影のときのものですよ』

とお店の人が親切に語りかけてきた。そこでいろいろその時の話などを聞くことに。

とうとうここではそこにいた全員が浅見光彦に。情報収集に余念がない。

どうやら満奇洞内の一番奥が辰弥が農民に追いつめられた所を撮影した場所らしい。


辰弥が追い詰められた場所
夢の宮殿
稲垣金田一『八つ墓村』で、辰弥役を演じた藤原竜也さんはとてもいい人らしい。お店の人は話の最中何度もそう言っていた。

満奇洞から車まで戻る。以前の作品もあわせ『八つ墓村』の撮影に使った場所がどこだったか?わかったか?という話になる。

今回は横溝作品の映像に精通している人が多かったのだが、洞窟内ということもありよくわからなかったようだ。

ある人は、横溝作品の映像に精通してるのではなく、女優に精通しているらしい。撮影場所がどこだろうがあまり関係ないらしい。

あとは、午後9時までに夕食をすませ、一度耕心村に行った後、温泉に入り終えねばならない。

高速に乗り、津山市を目指す。

津山市。私としては、津山自体は『八つ墓村』というより島田荘司作品『龍臥亭事件』というイメージがする。

この地でアヒルを見ることがあるならそれはすなわち勝手に平太と名づけるだろう。

途中、一度車を止める。

かもしか

ここで再び、真珠さんに電話を試みる。忙しいに違いないと思ったが電話はつながった。何人かが話をする。

そこにいる全員が真珠さんと話しできればよかったのだが、こちらの都合ばかりは言っていられない。

真珠さんの参加断念は残念でしたが、電話ではありがとうございました。また機会がありましたらお会いしましょう。


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