味惑の大地へ(その1)

 学生時代からの念願であった鉄道での北海道旅行がついに実現。とは言え大阪の勤め人にとって、北海道は彼方の大地。そう簡単に行ける場所ではありません。

 いや、行くことは出来るんですが心ゆくまで見て回る時間がなかなか取れないんですね。今回は大幅に妥協して目的地を道央圏にしぼりました。しかも当初の予定よりさらに周遊範囲は狭まったのですが、その代わり食を存分に楽しむという予想を超えた展開が待っていました。

 

B777-300

 旅の最初を飾ったのはJALの航空機「B777-300 デネブ」です。B777(トリプルセブン)は「スタージェット」という愛称で呼ばれているそうで、各機体に星の名前が付けられています。写真は新千歳空港到着後に撮ったものです。前情報通り天気は上々。楽しい写真が撮れそう。
 実は私、過去に2度、空からの北海道入りを経験しているのですが、新千歳空港に降り立つのは初めてだったのです。ターミナルビルは大阪(伊丹)空港の旧ターミナルビルと比べものにならない明るく現代的な雰囲気で感心しました。もっとも最近は大阪以外はどこの空港もリニューアルされているようですが、ビルの外に見える広大な景色も相まって、開放的な気分になります。


新千歳空港駅

 ターミナルビルの地下に、新千歳空港駅があります。空港の地下が駅になっているという形態は羽田空港などでも見かけますが、新千歳空港駅は原色をふんだんに用いた壁面など、遊び心も感じさせる作りだと思いました。
 上の写真を撮影していたりで余計な時間をとり、快速「エアポート」を1本逃してしまいました(写真左下)。とりあえずホームで写真を撮りながら次の快速を待ちます。ここで北海道に住む先輩(KazY氏)に連絡をしたところ、次の「エアポート」は特急型車両と教えてくれました。普通乗車券だけで特急電車に乗れるとはなかなかツいてるかも?
 やって来た列車は781系という、初めての北海道専用特急電車(写真右下)。なぜこの列車が特急型車両を使っているのかというと、札幌から先は旭川に向かう特急「ライラック」に変わるためです。


 「エアポート」は見慣れない景色の中を快走し、わずか30数分で札幌に到着です。札幌駅は7年前に修学旅行で訪れたことがあるのですが、そのときはバスで来てちょっと覗いただけだったため良く覚えていませんでした。駅ではKazY氏と待ち合わせ。2年半ぶりの再会です。さっそく昼食としました(実は自分が腹減っていただけですが…)。せっかく札幌まで来たんだからと無理を言ってラーメン屋に連れて行ってもらいました。ラーメン屋での写真がないのは…2年半ぶりに会ったKazY氏との会話に夢中だったため、としておきましょう。撮影を忘れて食べるのに夢中だったということはないです、たぶん。

藻岩山ロープウェイ・リフト

 食事の後は、西4丁目から市電に乗り藻岩山に行きました。電車の中でも会話が弾み、ロープウェイ前の停留所を乗り過ごしたりのトラブルもあったものの、一つ先の電車事業所前にて下車。この停留所からロープウェイ乗り場へ歩きました(写真左上:案内看板前、左下:ロープウェイ乗り場)。
 藻岩山へはロープウェイとリフトを乗り継いでいきます。スキー場ではごく普通に乗るリフトですが、このような雪のない山で乗るのは何か不思議な感覚です。乗り降りもスキーのように滑らないためか「えいヤっ」とやらなければなりません…実際は係の方がいてサポートしてくれるんですけどね。
 (写真右)だんだん登っていくにつれて、背後に広がる景色も気になるのですが、頂上まで登った後の楽しみとしましょう。


藻岩山からの眺望

 山頂からの景色です。標高531mということで、高層ビルなどとは比較にならない高さです。札幌の市街地の大半が見渡せるようです。北海道で山の展望台というとまず函館山が浮かぶと思うんですが、藻岩山も夜景はかなり期待できるんではないでしょうか。
 この写真でははっきり分かりませんが、札幌市街地の向こうには海が見えています(写真左奥あたり)。函館と違い札幌は海に縁が無さそうと思えるのですが、割と近いんですね。私を含め本州から訪れる人の多くは飛行機で北海道にやってくるため、北海道の中における札幌市の位置は知られていないようです。実際私も来る直前まで認識していなかったんですけど…。普段気が付かないような事に気付かされるというのも、旅行ならではの経験だと思います。


 本当は札幌駅を出たときから気になっていたんですが、この日は晴天ながら大変涼しかったんです。もちろん大阪と比べての話なんですが…街を歩く人々は半袖なのに、自分にとっては冷房の効いた部屋にいるかのような感覚でした。標高500m以上の藻岩山では気温の差もさることながら風も強く、私なんか鳥肌が立ってました。寒さに慣れているであろうKazY氏も「今日はちょっと涼しい」と仰っていたので、天気予報以上に気温が低かったんですね。そういうわけで1時間弱で下山です。

ロープウェイ下り

 左写真は登ってくるときに撮影するのを忘れていた、ロープウェイの搬器(車両?)です。結構年季が入ってます。右写真は支柱付近の景色です。
 一般にロープウェイでは支柱を通過する際に大きく揺れるため、この手の乗り物が苦手な人には怖がられるものですが、藻岩山ロープウェイでは支柱をわざわざ減速して通過します。添乗する係の方が「揺れますのでお気をつけください」と放送するものの減速によりほとんど揺れは感じません。これなら怖い思いをする人も減るのでは?とか思ったりします。


電車事業所

 再び電停まで戻る途中で電車事業所を覗いてみました。丸っこいデザインの車両は旧型車、角張ったデザインは新型車と対照的なのが興味深いです。特に旧型車のデザインは他の都市ではあまり見られない形態で、どちらかというとヨーロッパの電車に似ているとも思います。
 また車庫の中も全体にわたって舗装されていて、さしずめ駐車場のようです。実際に自動車がそばに止まっていました。他の地域だと路面電車でも車庫の中は通常の鉄道のような砂利が敷かれているような気がするので不思議な印象でした。冬場の除雪の都合で舗装されているようですね。


すすきの電停

 ご存じ、北海道一の歓楽街「すすきの」です。市電はすすきのが終点なんですがもう一方の終点「西4丁目」(最初に乗った停留所)とは少ししか離れていません。将来的には起点と終点をつないで環状線にする構想もあるとのことです。すすきのから再び歩いて、大通公園方面に。
 この日、夜はどこかで飲みましょうという話になっていたんですが、まだ全然日は高いので市内をぶらぶら散策してました。


観光馬車

 歩いている最中、道路を馬車が通っているのを目撃。パレードなどで騎馬隊が通るのは見たこと有りますが、自動車が走っているところを馬車が通行しているというのは初めて見ました(他の観光地で乗ったことはありますが、このような大都会ではないです)。開拓当時はこの道を馬車が行き交っていたのでしょうか。


大通公園

 大通公園の噴水前です。大都市の真ん中にもかかわらず、ゆとりが感じられる公園です。というのは人々が座ってくつろげる場所といったら、喫茶店くらいしかないですからね。
 この噴水を撮ったりしているとき、トウキビの露店が目に入りました。私、結構最近まで「トウキビ」がどういうものか知らなかったんですよ。とうもろこし、と言うかコーンのことだということを。サトウキビは知ってたのですが…1文字違うと大違いですな。このトウキビですが、どこでも見かけるたれを付けて焼いた物のほかに茹でただけのものも売っていました。看板では「焼き」「ゆで」と書かれていて、客は「ゆで1つ」とか言って注文していた模様。ご当地のKazY氏は「ゆで」を注文してましたが私はいつもの癖で「焼き」を注文しました。
 広々とした公園でいただくトウキビはまことに美味しかったのですが、実は「ゆで」の方が「焼き」に比べて冷めても甘みが出て美味しい、味に飽きが来ないなどの様々なアドバンテージがあるんですね。それなら各地で「焼きとうもろこし」しか売ってないのはなぜだろう?とも思ったりします。


時計台・旧北海道庁

 札幌市内の定番的観光地である時計台(旧札幌農学校演武場)と北海道庁旧本庁舎です。ともに明治時代に建てられたもので、現代建築にない重厚さや荘厳さがあります。
 時計台(写真上)は1度見た人がよく言っているように、ビルの谷間に建っている感じです。それでもこの建物の存在感ゆえに風景に埋もれてしまうようなことはありません。夕方になっても多くの観光客がいるのが見えました。
 旧本庁舎は赤い煉瓦造りの建物で、こちらは広大な敷地に建っています。背後により高いビルが建っているのですが、そばで見ると隠れて見えなくなります。写真撮影とか写生をするときは遠景よりちょっと近めがいい雰囲気かな、などと思っています。
 この2つのスポットは、ご多分に漏れず修学旅行で来たことがあります。旧本庁舎に至ってはそのときと同じアングルで写真を撮っている始末。何年経ってもやることは変わらないな、と感心してしまいました。前に一度来た、という理由もあるのですがそろそろ日も落ちてきたためこれらのスポットは外から写真を撮るだけに留めました。


札幌駅

 宿のチェックインの都合で一度札幌駅に戻りました(宿が駅前だったため)。夕闇迫る札幌駅はラッシュにさしかかり多くの人でごった返していました。駅前には未来的な地下街APIAなどがあり、さらに百貨店も建設中とのことで風景は様変わりしていくようです。
 チェックインを済ませた後、午前中にも乗った地下鉄に乗って今夜のお楽しみ「キリンビール園」のある中島公園へ向かいました。


 札幌まで来てサッポロビール園に行かず、キリンビール園というのも不思議な感じがしますが、「サッポロ」に比べて「キリン」の方が交通至便なところにあるためか地元の人には「サッポロ」同様に人気があるようです。
 キリンビール園はジンギスカン食べ放題+飲み放題で3300円。北海道に来るたびに(4回中3回ですが)ジンギスカンを口にしているので、それほど珍しい物とは思っていなかったのですが、今回意外なことを知りました。
というのは「ジンギスカンは焼き肉ではない」こと。地域にも依るそうですが、ここでは肉を鉄板の上に直接のせるのではなく、もやし等の野菜の上にのせて野菜の蒸気で蒸すんです。こうすると肉が固くならず美味しくいただけると教わりました。食べてみて、今までに口にしてきたジンギスカンは一体何だったの?と思ってしまいました。これは美味しいです。3回ほどおかわりしてました。
 もう一つ、新しい発見が。北海道限定とされている(少なくとも本州では見たこと無いです)飲み物「ガラナ」。修学旅行で来たとき「キリンメッツ・ガラナ」を見つけて話題になっていたのですが、あまりに怪しげだったので(笑)そのときは飲むことはありませんでした。その後「ドクターペッパー」と同じような味だ、などと聞いたこともありますます離れていたのですが、せっかくなので今回試してみることにしました。
 味は…あっさり目のコーラといった感じ。ドクターペッパーのようなキツイ味ではありませんでした。妙な先入観はいけませんね。北海道では普通のコーラが普及する前にガラナが普及したため、現在もコーラ以上にガラナの方が一般的な飲み物として存在しているそうです。こういう点でも本州との文化の違いを感じられます。

夜のテレビ塔

 ジンギスカンをたらふく食べた(少し残してしまったんですが)後、腹ごなしもかねて札幌駅まで歩きました。その途中で大通公園を横切ったときの写真です。昼間と違ってネオンサインやライトアップされたテレビ塔が美しかったです。
 駅に着いた後もKazY氏と喋りまくり(引き留めてしまってすみませんでした)、気がつくと9時過ぎに。ホテルへ戻って翌日に備えることにしました。


 そんなこんなで北海道1日目は終了。なぜか見たことよりも食べたことの方ばかり印象に残っている気がしますが、それだけ「食」の魅力が溢れている土地であるということですね。2日目以降に続きます。

2日目を見る

お出かけ日記に戻る