でんしゃのしくみ

第3回・車両のしくみ(その2)


電車に使われるモータ

 前回(いつだったかな…?)電車を動かす電力についてだけお話ししましたが、今回は電車そのものの仕組みに参りましょう。ご存じのように電車はモータによって走るわけですが、このモータ(主電動機)は元来直流モータだったことは前に述べたとおりです。直流モータとはミニ四駆とかラジコンカーなどといった玩具に用いられているモノと基本的には同じ構造をしています。これらの玩具で遊んだことがある人は知っているかもしれませんが、モータにかける電圧を変化させることで回転速度も変化させることができます。これは電車でも同じ様なことが言えます。

電池1個分の場合電池2個分の場合

電圧が高い方が、回転も速くなります。

 簡単に言えば、電車の速度制御もそれと同じ原理を利用しているわけです。つまりモータにかける電圧を変化させるのですが、これが工夫のしどころです。電車の進化とはこの方法の進化のことと言っても良いくらいです。一番最初にとられた方法が、モータの前に抵抗器を入れるによって電圧を下げることです。抵抗器というのは単純に電気エネルギーを熱として消費するだけのものです。この抵抗器の数やつなぎ方を変化させることで抵抗値を変え、モータにかかる電圧を変化させます。電圧は、一般に速度の変化と合わせて変化させます。速度が遅いときに急激に高い電圧をかけても、モータの回転力がレールと車輪の間に働く摩擦力より大きくなって車輪が空転してしまいます。そのようなことがないように、速度に応じて順番に抵抗器をつなぎ変えるようにしなければなりません。また抵抗器だけでなく、モータそのものも直列つなぎ・並列つなぎを切り替えて、モータそれぞれにかかる電圧を変化させます。

つなぎ方を変えるとは?

 つなぎ方を変えるのは、スイッチの切り替えによって行われます。運転台のハンドルを動かすと、その角度に合わせて電圧が変化するようスイッチが動くようになっています。当初(明治時代頃)は運転台で直接そのスイッチが動くようになっていましたが、モータの出力が大きくなったり、1両で走っていたのが何両かつないで走る必要が生じてくると、スイッチの遠隔操作が必要になってきました。ここで考えられたのが、モータや空気圧といった動力を用いて、各車のスイッチを速度に応じて切り替えるという方法です。具体的に言うと、運転台のハンドル(マスコンという方が有名?)を回すと、制御装置に付いているモータが回転します。このモータには軸がつながっていて、その軸に「カム」が付いています。カムというのは円盤の円周が一部出っ張っていて、回転によってその出っ張りが他の部品を押したりするような仕組みです。

この、カムの回転によりスイッチを順番に切り替えて、主電動機にかかる電圧を上げていきます。ハンドルを回す角度に応じて、カムもある角度まで回り、そこで止まります。止まったところではかかる電圧も一定になるわけです。ハンドルをもとに戻すとカムは再び回転して、スイッチが切れる位置まで動きそこで止まります。このような装置が各車両に付くことで、何両か分のモータを1箇所の運転台で制御できるようになりました。この制御方式を「カム軸制御」といい、抵抗器を切り替えていくことで電圧を変化させる方式を「直並列組み合わせ抵抗制御」と呼びます。

 「直並列組み合わせ抵抗制御」は我が国の電車では大変ポピュラーなシステムで、現在でもかなりの割合を占めていると言えます。その中で大都市圏を走る電車をいくつか紹介しましょう。

113系 103系

写真はJR東海道線(首都圏)で活躍する113系、JR常磐線で活躍する103系です。そろそろ新しい制御方式(後述)を用いた新型車に取って代わられそうな感じもしますが、当分は見られることでしょう。


☆次回は「車両のしくみ(その3)」として、「電車の止まるしくみ」を紹介する予定です。

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