先週号にてお伝えしたピカチュウ疑惑の続報として、ピカチュウ情勢に詳しいライチュウ氏との独占インタビューに成功。
同氏の許可の下、インタビュー文を掲載します。 ――希望に満ちたピカチュウワールドを語って下さるそうですね。 ライチュウ(以下R) 希望だって? 冗談じゃない。あんなものが希望であるものか。 ――どういうことですか? R 今のピカチュウ界は地獄さ。いや、地獄の方がまだマシかもしれない。 ――まさか。 R ウソじゃない。現在のピカチュウ世界は、完全な独裁主義。「真なるピカチュウ」ただ一匹が、何千何万というピカチュウ達を完全に支配しているんだ。 ――真なるピカチュウ? R あんたも知ってると思うが、サトシとかいう人間にくっついて世界中を巡業しているヤツだ。 ――”ピカチュウ”という名前のピカチュウでしたね。 R そう、ヤツこそ唯一にして絶対の支配者。ピカチュウ達は”ピカチュウ”に逆らうことを許されていないんだ。 ――どのような支配を? R ヤツが考えることは、金、金、金。とにかく少しでも多く金を稼ぐことしか考えていない。 そのくせ、自分が痛い目を見るのを嫌がる。良い出番の時だけ実演し、汚れ役は全て他のピカチュウ達に押しつけている。 ――と言いますと、具体的には? R そうだな…例えばTVアニメ版ポケットモンスターで、ピカチュウが戦うシーンがあるだろ? ――はい、毎回のようにありますね。 R あの時、敵の攻撃を受けたりするのは全てダミー。 10万ボルトを放って敵をKOしたり、サトシに飛びついて愛嬌を振りまく時だけ”ピカチュウ”が主演するのさ。 ――まさか、そんな事が…。 R 許されるはずがないって? それが許されるんだ。全てのピカチュウ達は、”ピカチュウ”にそっくりな容姿をしている。 ピカチュウ達はみな、”ピカチュウ”に特殊訓練を受けさせられ、人並みはずれた…いや、ポケモン並みはずれたスピードを持っている。 瞬間的に交代すれば、誰も気付きやしない。 だからこそ、”ピカチュウ”はピカチュウ達を絶対的支配下に置いているわけだ。 無報酬でこき使える都合の良い影武者として、そしてこの秘密を守り通すために。 ――でも、まだ信じられません。 R そうだろうな。これだけの秘密を完全に隠しきるのは不可能だ。 ――? R ディレクターやスポンサーなどの”上”は、この秘密を知っている。”ピカチュウ”からの圧力と裏金で、多少の漏洩をもみ消しているんだ。 ――癒着…ですか。 R 買収と言ってもいい。どちらにせよ、汚いやり方だ。 ――しかし、ピカチュウ達の中から異を唱える者は現れないんですか? R もちろん出てくる。毎日のようにな。 ――そんな時、どう対処しているんですか? R ”ピカチュウ”は、自分自身へ叛意を抱く者が現れることを何より警戒している。 だから自身の手の者を無数に放つと共に、密告を奨励し、特別報酬を出している。 そのせいもあって、今やピカチュウ達は疑心暗鬼に囚われちまってるんだ。 どこに”ピカチュウ”の息のかかった鼠がいるか分からないからな。 ――酷い話ですね。 R それだけじゃない。密告などで囚われたピカチュウ達の辿る末路だ。 ――末路? R 秘密を知ったピカチュウを表に出すわけにはいかない。かと言って処刑すると、もみ消しなどで多額の金がかかる。 ”ピカチュウ”はこの問題をどうやってクリアしていると思う? ――分かりません。ご存知なんですか? R 簡単だ。「進化」さ。 ――進化、ですか? R それも、ただの進化じゃない。特殊な機器を用いての強制進化だ。 秘密を知ったピカチュウを強制的に進化させ、その過程でピカチュウとしての記憶を全て消去する。 一般的にピカチュウはライチュウへの進化を嫌がると言われているが、それは正確には 「許可なくライチュウに進化した事への”ピカチュウ”からの報復が怖いから」なのさ。 まったく、上手く考えたもんだよな。これなら初期投資以外の金はかからない。 ――し、信じられません…。 R 信じようが信じまいが、これが真実なのさ。 ライチュウはピカチュウをいじめる事が多いそうだが、ライチュウの潜在意識には”ピカチュウ”にさんざんこき使われた記憶が残っているんじゃないだろうか。 だから、思わずピカチュウを攻撃してしまうんだろう。 いじめる側もいじめられる側も、”ピカチュウ”の犠牲者なのにな。 ――しかし、どうしてそんなにもお詳しいんです? ………まさか? R お察しの通り。俺もそんなピカチュウの一匹なのさ。 ――………。 R どうして記憶が残っているのか? と言いたそうだな。俺にもさっぱり分からない。 しかし、いかに”ピカチュウ”と言えども、数多くのピカチュウ達を処理する過程で、一度や二度のミスは犯すと言うことなんだろう。 ――なんと言っていいのか…。 R 俺が記憶を残したままライチュウとして放免されたのは、運命なんだと思う。 俺は気の毒なピカチュウ達を救い、悪しき”ピカチュウ”を永遠に葬ってやりたい。だからこうしてインタビューにも応じたわけだ。 ――では、これからどうするんですか? R ピカチュウ排斥運動を起こすつもりだ。多くのポケモンが同志となってくれることを願っている。 ――頑張って下さい。本誌もできる限りお手伝いします。 R ありがとう。 インタビュー終了後、ライチュウ氏は言葉通りにピカチュウ排斥運動を開始。
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