自室で本を読んでいると、ノートを抱えた末莉がやってきた。

末莉「あのう、おにーさん。良かったら、勉強教えてもらえませんか?」
司「いいけど、俺じゃわからないかもしれないぞ」

 はっきり言って、俺の学力は低い。
 学生時代、勉強に力を入れてこなかったからだ。
 勉強に専念することが出来る環境ではなかった──と言えば体面は保てるが、同じよう
な境遇でありながら、末莉の成績は良い。
 俺がいい加減だったのか、末莉が勤勉なのか、或いは天性の才能なのかはわからないが、
俺が末莉の勉強を見てやることなど出来るのだろうか。

末莉「いいんです、お願いします。それで、これなんですけど…」
司「どれどれ」

 末莉の差し出したノートを見てみる。
 男と男が睦み合う濃厚なイラストが描かれていた。

司「おい…」
末莉「きゃっ、ご、ごめんなさいっ、間違えましたっ!」

 真っ赤になって飛び出していった。








 夕方、居間でテレビを見ていると、末莉がやってきた。

末莉「そろそろお夕食の支度を始めようと思うんですけど」
司「ああ」
末莉「今日はこんなお料理に挑戦してみたいんですが、どうでしょう?」

 末莉が本を差し出してきた。
 男が男の男たる部分を咥えているイラストが描かれていた。
 しかも咥えているのは俺だった。

司「おい…」
末莉「ああっ、ま、またっ! ご、ごめんなさいっ!」
司「………」

 脱兎の如く逃げていった。








 真純から現在の家計簿担当が末莉であることを聞いた俺は、末莉たちの部屋に行った。

司「末莉、家計簿を見せてくれないか」
末莉「はい、ちょっと待って下さい。それならここに…」

 机の引き出しを開けて、ノートを一冊取り出した。
 その拍子に、別のノートがバサッと落ちた。
 男が男の男たる部分を挿入されているイラストだった。
 しかも挿入されているのは俺だった。

司「おい…」
末莉「うわあああん、み、見ないでくださいいぃぃぃっ!」

 部屋を追い出された。

司「………」

 末莉……。
 この間から何度も何度も見せているのは、本当にただオッチョコチョイなだけなのか?
 或いは、少しずつ俺を慣らしていって、そっちの世界に引き込む気なのか?

司「どっちなんだ…。どっちなんだ、末莉ぃぃぃぃぃっ!」

末莉「ニヤソ」