WILD ARMS/PS
  
1999.4.19
  
キャラクター  ◎
演出  ○
ストーリー  ○
システム  ◎
総評  ◎
  
・概要
 
 プレイステーション二周年の節目に発売された、SCE製作のRPG。
 一周年記念と銘打っていた「ビヨンド・ザ・ビヨンド」がかなりバランスの悪いゲームだっただけに、「こっちもそうなのではないか?」と懸念してもそれは仕方のないところですが、蓋を開けてみるとあらビックリ。
 ゲーム史上にその名を残せるほどの良質なRPGに仕上がっています。
 しかし、どことなく地味で控えめな印象があるせいか、「名前くらいは知っているけれどプレイしたことはない」という意見がほとんどです。
 そこで、このゲームに感銘を受け琴線を震わされたぼくが、少しでも普及させるべくレビューを書いてみることにしました。
 なお、レビュー中では主人公三人をそれぞれデフォルト名である「ロディ」「ザック」「セシリア」と記述しています。
 
 
・ストーリー、システム
 
 ロディ達が生きる世界、ファルガイア。
 1000年前に起きた「人間と魔族による世界の覇権を賭けた大戦」の影響により、日々大地は荒廃し、ゆっくりと、しかし確実に滅びの道を辿っている…。
 そんなところからゲームは始まります。
 荒野と言うとおり、全体的に西部劇を感じさせる作りになっています。
 シナリオの出来映えはかなりのレベル。
 謎めいた伏線がいくつも張られ、その全てが納得できる形で明かされます。
 ストーリー自体は勧善懲悪の王道に則った展開ですが、中盤以降かなり盛り上がります。RPGのシナリオとしては十分合格点です。
             (「のっとった」と読みます↑)
 
 このゲームは、とにかく快適にプレイできることを徹底的に突きつめて作られています。
 フィールド移動時のダッシュやアイテムのまとめ買いは当然のこと、コントローラボタンへの役割配置、読み込み回数の少なさ・読み込み時間の短さ、雑魚敵は弱めの戦闘バランス、AI機能の完備等々。
 細かくみれば、武器屋で新しい武具を購入した際、即時に「装備しますか?」と問われ、「はい」と答えれば装備がつけ換えられることまで。(よって、買い物してからメニューを呼び出して装備を変更し、それまでの古い装備を売るために改めて話しかけるという手間が省ける。ここまで気を回しているRPG、他にはなかなか無い)
 ゲームのアクセントとして、ダンジョンは「グッズ」というキャラクター固有のアイテムを駆使して解くパズルになっています。(ゼルダの謎解きみたいな感じ)
 また、戦闘には「フォースアビリティ」という独特のシステムがあります。(FF7のリミット技をイメージしてもらえれば分かりやすい)
 ただフォースを使っていても面白いのですが、楽勝の雑魚戦とは裏腹にボス戦は概して厳しめなので、フォースを上手く活用しなければ勝てません。
 勝つか負けるか、ギリギリの緊張感あるバトルが楽しめます。
 もちろん、「ビヨンド・ザ・ビヨンド」のような意味でのギリギリではなく、理不尽ではないギリギリのバランスです。
 システム上の欠点を言うなら、中盤で少しだけ雑魚敵の出現がうざくなる事くらいですが、そこから少しゲームを進めれば、敵出現率が大幅に下がる魔法を覚えられますし、やや動き方に難はあるもののエンカウントが無くなるグッズが入手できるので、さほどの問題ではありません。
 BGMもかなり良く、使うべきシーンをしっかり考えて流しているので、良いBGMと良いイベントとが相乗効果を生み出しています。
 
 総じて考えれば、プレイしていて煩雑さや面倒くささを全く感じさせず、ストーリーもオーソドックスではあるけれど面白いので、実に心地よく遊べるRPGだと言えるでしょう。
 
 
・キャラクターをより深く描く
 
 「ワイルドアームズ」に於いて、何より特筆すべきは「キャラクターの書き込みの深さ」であると言えます。
 主人公ロディ、ザック、セシリアの三人それぞれに、単純なレベルアップによる戦闘力の向上だけではなく、「内面的な成長」が確実に描かれています。
 私感ですが、特にザックが深く描かれていたように思います。
 敵である魔族側にも、一癖も二癖もある味のあるキャラクターが揃っており、ストーリーを盛り上げます。
 このゲームは、RPGにしては珍しく「熱い」ゲームです。
 「義」「忠」「愛」といった言葉を思わせるイベントの数々、すごくかっこいい。
 演出そのものにはそれほどすごいところはありませんが、イベント自体が良いため、気にはなりません。
 また、昨今のゲームでは半ば常識と化している「クリア後のお楽しみ」、もちろん本作にも完備されています。
  正確には、クリアデータをセーブしてはいないので、ラストダンジョン一歩手前のダンジョンをクリアすれば楽しめるようになる、といったところなんですが。
 クリア後の隠しダンジョンはお約束としても、本編中では話程度しか出てこなかった超強力なボスキャラが何体もおり、それを全て倒そうと思ったら、相当レベルアップする必要があります。
 さらに、ストーリー半ばで姿を消したキャラクターのその後の姿が描かれるイベントも少なくありません。
 つまりこのゲームでは、主要キャラクター(敵味方問わず)には全て何らかの形で結末を用意していると言えます。
 当たり前のようでいて、実際にそれを行っているRPGは数えるほどしかありません。
 ここまで徹底して作り込まれています。
 
 
・システムは文句無し
 
 さて、ゲームをレビューするなら、良いことだけを言ってはいけません。
 悪い部分もしっかり見なくてはいけませんね。
 しかし、さほど大きなマイナス点はありません。
 せいぜい、ダンジョンがやや複雑なこと、宝箱からのアイテム回収を怠るとボス戦がつらくなること、ラストダンジョンがかなり長いこと(もちろんセーブポイントはあります)くらい。
 さらに言うなら、ムービーやアニメーションなどの派手な演出は皆無だということもあります…が、実際にワイルドアームズをプレイしてみれば、所詮そんな事などゲームの体裁を取り繕うだけの上っ面な物に過ぎないと言うことが良く分かります。
 SFCを考えてみて下さい、ハード的にムービーやアニメーションなど夢のまた夢なのにも関わらず、今遊んでも十分面白いソフトが何本もあるじゃないですか。
 面白いゲームの本質とは一体どこにあるのか、ワイルドアームズはそれを雄弁に語ってくれます。
 
 そうそう、セーブブロックはメモリーカード一ブロックにつき一ファイル。
 FFを始め、かなり多くのゲームで見られるタイプです。
 
 
・自信を持って勧められる一作
 
 このように、「ワイルドアームズ」には褒めるべき点はいくつもあれ、欠点らしい欠点はありません。
 しかし、宣伝不足や「ファイナルファンタジー7」の一ヶ月前に発売された等の「ゲームとは関係ない部分での欠点」により、売れ行きはいまいちでした。
 PSベストにもなっていますので、時間と資金に余裕のある方は是非プレイされることをお薦めします。