今日は1999年1月30日。太田裕美さんの事件の興奮からまだ覚めやらぬこの日、私の従兄弟は晴れて結婚式を迎えた。
従兄弟には前々から頼まれていた事があった。それは、「ピアノ演奏」。
プロフィールに記述されている通り、ピアノは全然ダメな私だが、生まれた時から付き合ってきた、言わば兄弟のような従兄弟の頼み、断れない。しかも調子に乗って「オリジナルの曲を書いてアゲル!」とか吹いてしまった私。
言ってしまった事はどうしようもないんで、とりあえずペンを取り、白紙の譜面に向かった。しかし、時は学校の作曲技法の授業でリハーモナイズ(和音再構築)の課題が出ていた頃で、作ったメロディに演奏下手な私でも簡単に弾けるトライアード(三和音)のコード(伴奏)をのせてはみるものの、勢いあまってリハーモナイズしまくり。
お陰でリハーモナイズノイローゼ状態に陥り、自作曲は挫折。
結婚式まであと数日となってしまった私には、既存の曲を弾くことしか思いつかなかった。たまたま、その前の週にも友人の結婚式があり、そこで流れていた曲で私も演奏経験のある曲があった。
それが「ル・ローヌ」。
服部克久氏の名曲である。聞けば、ブライダルミュージックでもポピュラーな方だと言う。だったら演奏経験もあるし、無難なのではないかという両親との協議の結果、この曲を演奏する事になり私は日々練習にいそしんだ。
そして結婚式前日、演奏は完璧に仕上がった。
しかし、既述の通り太田裕美さんの興奮が覚めていないこの日、私は深夜、PCに向かい「感激!」のHTMLを編集し、気付けば朝。
徹夜明けのまま式場に向かい、そのまま結婚式は始まった。
式は滞りなく終了、残すは私の大イベントがある結婚披露宴だ。
式場に入ると目の前に迫ってきたのは、なんと真っ白なグランドピアノ。これにはさすがに驚き、緊張の度合いが増してしまった。
そこでなお思わぬハプニング。契機付けにと飲んだお酒の量がちょっと多すぎたのか、私は酔っ払ってしまい、重ねて徹夜明けというハードな体調の中、すっかり私の視野は狭まり、もはやピアノなど弾ける体ではなくなってしまった。
しかし、数十分後に「その時」は訪れてしまい、私は「セミ千鳥足」状態でピアノの前に向かい、お祝いの言葉を述べた後、演奏の準備をした。
予想通り、譜面が目に入らない。「コリャ、ダメだ。」と観念したが、とりあえず演奏を開始した。
おっ、思いのほか弾けてるぞ!なんかタッチもイイ!
「油断大敵」とはこの事である。その後の出来事はあまりに惨めなので割愛させてもらう。
演奏終了後はお客様からの大喝采が私を包み込み、私はもっと落ち込んだ。
間違いだらけなのに拍手するなよ!それじゃ、ビリでゴールに入ってくるマラソンランナーを一生懸命応援する沿道の人たちと同じじゃん!俺は、俺はビリなのかぁ!?
かくして従兄弟の結婚式は大盛況のまま幕を閉じた。
こんな私に結婚式でピアノを弾いて欲しいという方はご一報ください。