八分音符 Yumi Tanimura 八分音符
谷村有美

谷村有美

谷村有美の唄を聴きはじめてから、かれこれ丸3年になる。

初めて谷村有美の曲を聴いたのは6年ほど前の事だ。当時、インターネットというものはまだ流行っておらず、私は「オタクッ!」などと罵られながらパソコン通信をやっていた。確かに、パソコンに向かいながら他人のメッセージを見てはクスクスと笑い、黙々とキーボードをたたく姿は外から見れば不気味に見えたかも知れない。そういう「パソコン不遇時代」にDTM(Desk Top Music)をやっていた私は(やっていた、といってもほぼ聴くだけであったが。)、頻繁に利用するBBSから大量のMIDIDATAを毎日のようにダウンロードしていた。松任谷由実やDreams come true、B'zやナツメロ、とにかく歌謡曲なら手当たり次第に、だ。

当然、聴いた事のある曲やヒットした曲などを中心にピックアップしていったが、膨大なMIDIDATAの中にはあまり知られていない曲も存在した。

そして、毎日毎日、大量にダウンロードしているとネタが尽きる。そこで、BBSのファイルリストの中でよく目に付いたのが、当時私の全く知らない人、谷村有美だった。

早速、1曲ダウンロードしてみた。その時の曲は「いちばん大好きだった」であったのを記憶している。ところが、このMIDIDATAがお世辞にも良い物とは言えないデキだった。しかしながら、メロディくらいは聴き取れる。この作りの適当さ具合が、かえって私の興味をそそった。ちゃんとしたものはもっとすごく聴かせてくれるんだろう、と思い、他に同じ曲がアップロードされていないか探し回ったが、残念な事にこのあまり良質でないDATA以外に同じ曲はアップロードされていなかった。

数ヶ月経ち、いつものようにBBSへ接続した。そこでふと思い出したのが谷村有美だった。時間も経っていることだし、もしかすると「イイモノ」がアップロードされているかもしれない、と思った私は新しく増えたリストを片っ端から洗っていった。そこで、同一人物が大量に、しかも同じ時期に谷村有美の様々な曲をアップロードしているのに気付いた。気になった私は、知らない曲ばかりだけれども、いくつかの谷村有美の曲をダウンロードしてみた。その時にダウンロードした曲が「HALF MOON」や「生まれかわる気持ち」などで、当時MS-DOSベースでパソコンを使用していた私は「mimpi」というMIDIDATA Playerで「HALF MOON」という曲を選び聴いてみた。すると、画面が突如「mimpi」のMixer画面から真っ黒な画面へと変わり、タイトルが谷村有美の画像と同時に現れ、私は驚愕した。「mimpi」は特有の「WRD」と呼ばれる歌詞追いのマクロデータを使用する事ができ、私も少しはそのマクロを知っていた。しかし、その「HALF MOON」のWRDはとにかく秀逸で、カラーパレットを変えて文字にフェードイン/アウトの効果をもたらしたり、通常はカラオケのように文字に新しい色の文字がかぶるような歌詞追いを、現在地を下線で追うような歌詞追いにしたり、とそれは私にものすごい衝撃を与えた。その上、谷村有美本人の画像が現れているとあっては、これはもう普通のMIDIDATAではないなと思わずにはいられなかった。実際、そのMIDIDATAは中身も秀逸で、本物の曲を聴いた事のなかった私でも、これはすごい、と唸るほどであった。

ただMIDIDATAのデキが良いだけでは私の興味をそそる対象とはならない。やはり曲あってのMIDIDATAだと私は思う。「HALF MOON」という曲は実際に最高だった。サビの盛り上がり方などは特に私の心に残った。

4年前に私は自動車の免許を取りに、福島県いわき市へ友人と共に合宿教習を受講しに行った。時が経って、私がすっかり谷村有美の虜になっているかといえばそうではなかった。

当時、森高サウンドやジャーマンメタルに傾倒していた私は、他のジャンルやアーティストにお金をかけられるほど裕福ではなかった。沢山のMIDIDATAを聴いてはいたが、CDを買うほどお金に余裕がなかったのだ。

しかし、この合宿教習が私の谷村有美に対する興味をより一層、惹かせることとなった。

合宿教習というのは文字通り「合宿」なわけで、1ヶ月程、見知らぬ土地で見知らぬ人たちと寝食を共にするわけだ。幸い私は学校の友人と行ったため不安な事はなかったが、同時に入所してきた人たちは後々聞いてみると初めはやっていけるかどうか不安だったらしい。そんなわけで、数人の友人もできてみんなでちょっとした買い出しに行く事になった。場所は「ヨークベ○マル」。合宿所から歩いて10数分という場所にある、ちょっとしたスーパーマーケットだ。ここは合宿の間、何度となくお世話になった所だが、店内で流れている曲が毎日同じサイクルで繰り返されているらしく、行くと必ず聴く曲があった。知ってはいるがタイトルやミュージシャンは思い出せない・・・と少々もどかしい気持ちはあったが、思い出せなくてもあまり気にせずにいた。

そんなある日、いつものように買い出しに来た。用事を済ませた所でトイレに行きたくなり、友人を待たせて急いでトイレへ向かった。そしてトイレの中で、その「いつもの曲」が流れているのに気づき、聴きなれたその曲をハミングで軽く口ずさんだ。

「♪フフフフ〜ン、き〜っとすくわれ〜る〜」

やっと思い出した。TVのCMで見て聴いた記憶がかすかに残っていたらしく、タイトルもすぐに思い出した。知ってる人はすぐわかるであろう「信じるものに救われる」だったのであった。

そんなことがあって、一人のアーティストとして私の記憶に残った谷村有美。

だが、どうしてか当時の私はCDを購入はしなかった。ただ、唄を聴いてみたいとは常日頃から思っていた。

そして、近所のファミリーマートでアルバイトを始めた私は、アルバイト関係でも少々の友人ができ、仕事中にも趣味などの話に興じたりしていた。

最近のコンビニエンスストアというものは便利になったもので、ゲームや音楽CDを購入できるし、コンサートチケットの予約販売も行っていたりする。ファミリーマートもそれに漏れず、同様のサービスを行っていた。そして、偶然に仕事中に気になるものを発見した。「谷村有美 Final」の文字である。一緒に仕事をしていた友人になんとなしにコレ、いってみたいんだよねぇ・・・、と告げるとその彼は言った。

「チケット取れるんじゃない?」
「う〜ん、この告知が貼られてから随分と時間も経ってるし、無理でしょ。」
「いや、ファンクラブの先行予約はまだだから、俺が取ってあげるよ。一緒に行こうよ。」

そう、その友人は実は谷村有美のファンなのであった。そして、冗談半分に私が話をふった事から実際に武道館で「しあわせのかたち Final」を観覧できることになった。

当然、行くからには曲を数曲でも憶えてから行ってみたい。だが、CDを買う余裕もなく、その友人からもCDを借りるタイミングを逃し、結局はMIDIDATAで聴いた数曲だけの記憶を引っさげて武道館へと出かけた。

武道館に入るとすごい熱気に包まれ、私は息を飲んだ。そしてバンドの演奏が始まり、その場はものすごい盛り上がりとなった。そしてステージ上に現れた谷村有美。いやおうがなしに観客のボルテージは上がる。そのままの勢いでライヴは進み、半分を過ぎたあたりで、とうとう私のお気に入りMIDIDATAの曲である「HALF MOON」が流れ出した。

それはMIDIDATAを聴くよりも数倍も印象に残り、私を谷村ソングに深入りさせる要因ともなった。ともあれ、感激で胸がいっぱいになりながらライヴは無事終了。そしてこれを境に私は決意し、CD購入に踏み切った。もちろん、金銭的な余裕はないので、近所の中古CDショップをあたってみると、「圧倒的に片想い」を発見、直ちに手にとりレジへと一直線に進んでいった。

家に帰り早速聴いてみて、これは・・・!と驚いた。そう、「しあわせのかたち」で聴いた曲が沢山入っていたのだ。

結局、ここまでたどり着くのには様々な偶然の要因が重なった訳だが、おかげで私の本当に好きな音楽を発見できた事はとても嬉しかった。

そして、今現在では「White Songs」を除く全てのアルバムを手に入れ、毎日のように聴いている。それにしてもいくら限定とはいえ、「White Songs」が中古市場価格で14,800円程度とべらぼうに高く、相変わらず手に入らない。SONYには是非復刻で販売して欲しいものだ。


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