ふりかけ味スタイルシート(後編)

ふりかけ味スタイルシート(前編)」からのつづきです。

器からの移り香が問題…

さて、ご多分にもれず CSS の道もラクではありません。なぜなら、ブラウザごとに CSS のサポート度合いが微妙に(またはガマンできないほど)ちがうから。決められたレシピのとおりに作ったカンペキなフリカケごはんが、この器に盛りつけるとおいしいけど、あの器を使うと鉄くさい味になる、みたいな。「士郎、この器はなんだ!!!」(© 海原雄山)と叫びたい気持ち(笑)

特に、ねすけ 4.x はフリカケの味を無条件にヤミナベ風味に仕立てるすごい土鍋です(笑えん)。ヤミナベ土鍋でも人間の食べられる味に仕上げることも不可能ではないのですが、あまりの理不尽さに無駄な労力という感じがすることがほとんどやも。

Windows の IE5 は世間的にはけっこういい器だとされていますが、実はほんのり鉄くさい味を与えてしまうブラウザです。鉄くささを打ち消すために調合を調整したフリカケ(CSS)は、Mac の IE5 や Mozilla(Netscape6)のような「比較的かなりよい器」へ盛りつけたときにほんのりと妙な味になりがちです。このよーに、なかなか一筋縄ではいかないのであります。

白飯とフリカケは味の選択肢を提供します

とはいえ、もしもそのサイトが用意したフリカケがもともとマズイか、使ってる器のせいでマズくなってしまうとか、そもそもフリカケをかけることができないブラウザとかでも、フリカケをかけずにごはんだけ喰らうということも可能っすよね。ごはんそのものに納豆味が刷り込まれていたら、もうあの腐臭からは逃げられないのとは大違い。(ぼくは納豆が死ぬほどキライです…(笑))

つまり、CSSとは「あたらしいビジュアルエフェクト」でもなんでもなくて、より広い環境で「まずページが読めること」を保証して、「余裕があればフリカケの味をたのしんでもらう」というものっす。CSSの適用を外すと読めなくなるページというものはフリカケの使い方をまちがっとります。

前述のように、CSS を適用するなら HTML に具体的(物理的)なスタイル定義を混ぜないほうが都合がよいわけっす。すると HTML には、「ここは見出し」「これは段落」「ここ引用部分」などの「抽象的な意味」しか必然的に残らないわけです。というか HTML がそもそもそういうモノなんですけど。

器であるコンピタはアホウです

世の中アイチーアイチーと姦しいですけど、アイチー(情報技術)のホンシツは言うまでもなく、「可能なかぎり電子データを再利用することと、それによる利便の向上」ですよね。より多くの種類のコンピタで、より広い条件下で、情報の伝達をスムーズにするためには、特定企業や特定アプリケーションや特定機種に依存しない、もっと大きな見地の標準的データ形式でなくてはいけないわけっす。

人間様が書いた文章の部分部分の意図なんて理解できるワケがないアホゥなコンピ〜タ〜どものために、文章にこめられた意図を伝達しあうための手段を与える物のひとつが HTML です。単なる文字の羅列でしかないテキストに目印をつけることで、ただの文字列に意味と意図が存在することをコンピタに理解させるためのしくみです。

けども、ネット上にある多くの HTML は、「抽象的意味」の目印だけでなくて、「太字」とか「文字色」とかの目印も大量についてますよね。これらの「物理的な表示の制御用の目印」に従ってブラウザが表示したものを、人間が生身の目で見るならば書き手の「意図」をそれとなしに推測できるけども、実はその推測はただのカンチガイかもしれません。

意図がカンチガイされるような方法が果たして、正しく情報を伝達しとると言えるでしょか?

結局、電子データを扱うのはコンピタ自身なのです。人間はコンピタが処理した結果を見て間接的に利用してるだけ。

コンピタにとって「本質的な意味」が見いだせない「太字」とか「文字色」などの目印が大量に混ざっている状態は、都会の夜空の星を見えづらくしている"光害"とおなじ状態なのでわ。抽象的で論理的な構造がまったく記されてない HTML ページから、文中の見出し部分だけを抜き出して集めようとするとけっこう大変だったりするのがその証拠です。

以上のように、CSS の利用と、抽象的論理的な構造の記述だけの HTML とは表裏一体のものであります。

さて、現実に目を向けますると。

世の中の多くの人はいわゆる「ビジュアルな Web ページ作成ソフト」でページを作っていますよね。そのようなソフトでのページ作成は、ブラウザ上での表示の再現を見ながら効果を加え、その結果を再び目で見て確認して、作っていくわけっすよね。だからその作業というのは当然、「文章の各部分に対する見映えの装飾定義」を与える作業になるのが自然です。

「ビジュアルな Web ページ作成ソフト」は、「ワープロ的」な設計思想を出自としているものがほとんどだから、文章の各部分へ「抽象的な意味づけ」を与えるという作業には適してはいないです。つまり、「ビジュアルな Web ページ作成ソフト」で作られる HTML ごはんは、フリカケ CSS を適用するのに向いてないことがほとんどです。

Web ページ作成ソフトもまたコンピタソフトであるから、人間様の意図を理解できないデクノボーです。自動で CSS を生成するソフトもありますが、たいがいはとんちんかんです。CSS の適用を外すととてもじゃないけどナニでアレなことになることは往々にしてあるし、別の CSS を使おうとおもっても楽にはいかずに、結局ページそのものを作り直すことになったりします。CSS の柔軟性どころか「電子データの再利用性」もクソもない状態っすね。

さらに CSS というのは、HTML をブラウザ上でそのまま表示したときには目に見えない論理的な構造へスタイル定義をすることが多いのです。「"のうがき" と意味づけられた段落の中にある、強調を意味する領域だけ赤の太字」だとか。このような事をするためには、HTML の文法や構造の組み上げ方への知識がないとうまく出来ないし、Webページ作成ソフトにそれを補助するしくみがあっても、たいていえらくヤヤコシいインタフェイスです。(Adobe GoLive も Macromedia Dreamweaver もそう)

つまり現状の「ビジュアルな Web ページ作成ソフト」は、ユーザーインタフェイスになんらかのハデなブレイクスル〜が起きないかぎり、CSSを 駆使したページや、その前提となる論理構造のしっかりした HTML を作ることが困難である、ということなんス。

カンチガイしてほしくないのは、以上のことはあくまで「 CSS の利点を駆使するために、または論理的構造のしっかりした HTML を作ろうとするときの話」です。 HTML 自体にすべての具体的な装飾定義を盛り込んだ従来型のページを作るとか、論理構造が不要だとか、インタラクティブな仕掛けを施すとかなら「ビジュアルな Web ページ作成ソフト」は大いに有用でありんす。

むづかしそう?かえってラクチンです

以上のように、ブラウザの対応度のバラツキとか、Web ページ作成ソフトでは CSS の利点があまり得られないこと、抽象的論理的な HTML がどうとか無意味にややこしそう、などなどでイマイチ CSS はとっつきにくいものになってしまってます。

もっとも、抽象的論理的構造だけで組み立てられた HTML はシンプルでスマ〜トになるからフリーウェアのテキストエディタだけで十分書けまして、くそ重たい Web ページ作成ソフトから解放されるっす。逆にクソ重ソフトを使わずにページを作るためにはシンプルスマ〜ト HTML と CSS を使うのがラク。そんなわけでぼくは CSS を駆使したページづくりに移行したんです。

「デザイン」も内容に含むという意見

ところで。

CSS フリカケによる味付けは、ブラウザによって作者の意図通りにならなかったり、 CSS フリカケの味を再現しないブラウザも存在する、しかし、ごはんである HTML の内容や文章そのものはしっかり伝達される、と上のほうで書きました。この「伝えたい内容」に、「ページデザインやレイアウトそのもの」も含むか?というギロンがあります。

「せっかくのデザインが伝わらない(可能性がある)のは、内容の半分を伝えてないのと同じだ」「使用ブラウザによってデザインを含めた内容に差別があるのは一体どういうことなんだ」など。

これはトレードオフだとおもいます。

HTML 自体にすべての具体的な装飾定義を盛り込んだ従来型の HTML は、作成者の環境に近い多くのブラウザでほぼ同じように再現できるでしょう。そのためのノウハウの蓄積もかなりありますし。しかし、作成者とは違いの多い環境を持つ閲覧者は、デザインどころかページになにが書いてあるのかさえ読むのが困難になる可能性があります。大なり小なり「電子データの再利用性」を犠牲にして、ある一点だけ集中突破するかんじ。訪問者の傾向が自分に近い環境の人ばかりだと分かってるなら、アリでしょう。

逆に、レイアウトや装飾がすべて CSS に分離されていて、HTML は抽象的で論理的な構造だけが適切に施されてるなら、デザイン要素が伝わらなかったりデザイン要素の適用が拒絶されたりしやすいけど、最悪でもページになにが書いてあるかだけは安全確実に伝達されます。作者の望み通りの表示で見てほしいという、願いとも専制的な束縛とも言える気持ちをこらえて、一文の得にもならん(みたいに思える)理想に萌えるかんじ。

どちらを望むかはサイト作成者の個性のモンダイなので、いちがいに CSS がダメだとか、従来型 HTML がダメだとか、そういうもんではないとおもいまっす〜。


Copyright © 1998-2006 ALIMIKA SATOMI/NYAN-NYAN-HANTEN.Created: 2001/01/13, Last-modified: 2001/01/13