第9章 マーケティングにおける関与概念への着目


商品を分類するに当たって、購買行動と関連させた「最寄り品/買い回り品」、あるいはその財の性質から「耐久財/一般財」などいう分類を、旧来マーケティングでは行っていた。その分類の意味はある程度共有化され、その意味に基づく購買行動を拠り所にして、プロモーション戦略を組み立てていた。ところが、そのような商品を販売する「店」そのものや、生活者の情報環境の変化、またそれに伴う生活者の商品に対しての価値観の変化、これらが相互に影響しあい、さらに新たな商品・サービス開発を引き起こしていくようになった。拠り所としていた分類の意味そのものも希薄化していく。また、グループ・インタビュー(集団面接)実施場面では、「耐久財=買い回り品」とは限らない点や、「当該製品の使用量が多くなれば情報収集行動も活発になる」とは必ずしもいえない点などが、よくあられてくる。旧来の商品分類だけでは、的確に把握できない状況になってきている。
これと併行して、低関与型製品の購買行動研究が進行し、マーケティングにおける広告管理の立場からも、「未知―知名―理解―確信―行動」のモデルにあてはまるものと、そうではないものがあるということにも着目されてきている。つまり、個別マーケティング活動において、旧来以上に精度の高い基準が必要になってきているという側面もある。
「関与」は以上のような背景の中で注目され、消費者行動を説明する概念として重要な意味を持つようになってきたのである。