第10章 今後の関与研究への期待


以上、本研究では、従来の関与研究において絶えず混乱の源泉となってきた関与の概念規定上の問題点と論点とを明らかにし、等しく関与という名で呼ばれる様々な関与概念の異同を整理するとともに、それらを一定の枠組みの中で下位概念として位置づけ整理するための概念枠組みしたわけだが、これはあくまでも試論的な一つのアプローチであり、今後に残された課題は多い。

10−1.研究上の課題

例えば、関与概念と類似もしくは近接した諸概念(態度、興味等)との間での異同を明らかにするための分類・整理基準が必要不可欠であることをはじめ、上記の関与関連諸概念を取り込んだ消費者関与に関する包括的概念モデルの構築、関与概念を取り入れたヨリ包括的で整合的な消費者情報処理モデルへの展開、また関与の特徴や、高関与者と低関与者の消費者行動の違いなどを挙げることができる。これらの課題については、今後の関与研究に取り上げてもらいたい。

10−2.マーケティング実務への応用

マーケティングにおける仮説の検証とは、最終的には戦略が具体化された形に伴なって、「市場」で検証されることではないだろうか。研究フレームにおいても、もう少し大きなマーケティング戦略の中で、「関与」を関連付けするかを、今後いっそう検討する必要があるであろう。
消費者や対象製品・購買意思決定時の状況などは動的なものであり、それによって購買行動に関する消費者の情報は、今後、いっそう重要になると考えられる。また、マーケティング戦略の構築にあたり、対象となる製品及び購買状況に対する消費者個人の態度変容や関与の成長過程、メカニズム、さらには、マーケティングへの環境の影響要因(経済的要因、文化的要因、社会的要因、自然的要因、国際的要因)を把握することによって、消費者の情報処理行動特性を判別し、これらに対応した戦略内容を選択することも重要になる。そこで、関与の概念などを手がかりに「どのような消費者からその変化が現れるのか」という観点も、予測のために必要になってこよう。
もう一度、マーケティング戦略と「関与」概念との関連について、捉え直す必要があるのではないだろうか。