東京マラソン2008

2008.2.17日  東京都庁〜東京ビッグサイト


【プロローグ】
あまり魅力は感じないが,在京の駅伝仲間がみんな申し込んだので,「まぁ,当たったら考えよう」と思って申し込んだら,なんと(!)2年連続当たってしまった東京マラソン。
定員3万人に対して応募は15万人。周りでもはずれた人が多い中で,「旅費がかかるし(去年までは川崎に住んでいたので,会場まではすぐだった),寒いし(去年は雨だった),人が多くて記録は狙えないし,行きたくないなぁ」とはとても言い出せない。
ま,みんなに会えるし,同窓会のつもりで,と参加を決めた。

昨秋入ったランニングクラブで,「サブスリーできる("サブスリー"とは,フルマラソンで3時間切ること。一種の壁であり,市民ランナーの憧れである)」と言われ,1月指宿菜の花マラソンでサブスリー,即スピード練習に切り替え,2週間後に静岡で駅伝,その3週間後の東京は,お祭り・・・のはずが,指宿は3:15の撃沈で(涙が出るほど悔しい思いをした),シナリオが崩れてしまった。
指宿直後は,「東京で再びサブスリーを狙おう」と思ったが,駅伝遠征で風邪をひいてしまい,その後1週間まるまる練習を休んだのと,年度末になって仕事が佳境に入ってきて,なかなか練習できない。

どう走ろうかと思っていたところへ,出発直前に2泊3日指宿出張。残業続きの身に,ゆっくり考える時間と睡眠時間が持てた。と同時に,水曜夜に指宿菜の花マラソンのコースで当日を振り返りながら30km走ができたことと,当日40km付近で応援してくれていた先輩から写真をもらい(情けない顔で,足は上がってない),菜の花マラソンの時は,(当時の自分にしては)前半から突っ込みすぎた,今度は自分のレースをしよう,笑顔でゴールしようと,身を以って思った。
今回,指宿前よりも準備ができたとは言えないし,狙っていくと,また撃沈してしまう。
サブスリーは断念である。またチャンスはある。
「賢く走るフルマラソン」(福大 田中教授)を再読,指宿の時との体重差(2〜3kg),昨秋のハーフマラソン,10kmのタイムなど,いろいろ計算して目標(予想)を3:05に定め,スタート時のロス2分+4'20"/kmペースで行くと決める。
水曜に30km走るのも,この本に書かれているカーボローディングという調整法に従ったものだ。
3:05というのは,2年前の直接対決では勝ったものの,私が11月下旬から12月に奥尻島に出張している間にライバルが(私も出る予定だった河口湖マラソンで)たたき出したタイム。私の10年前の自己ベストを5分以上も上回っていた。
そして,3:15という私の指宿菜の花マラソンのタイムに「俺を油断させる作戦か?」というメールをもらっていた。

「力はある」と言われても,結果を残せなければ,ないのと同じ。今年のフルマラソンシーズンは東京でおしまい。悶々とした夏を過ごさないためにも,3:05は,欲を出さず,絶対にクリアしておきたいラインだった。

3:05。(前の週の土曜に4'30"×20kmのペース走が楽にできたので)きっちりペースを守れば,行けるかなと思い,去年亡くなった元同僚Oさんへの鎮魂の祈りを込めて,また,大勢応援してくれる友人への目印のために,ソフトバンクホークスのマスコット,ハリー人形をかぶって走ることにした。
生前,多摩川駅伝に応援に来てくれたOさんは,私を見付けることができず,「目立ってなんぼ。かぶりものして走れ」と言った。(わざわざ買って臨んだ大会では,都合により来られなかったのだが)
そして,異動の際,寄せ書きにもそう書いてくれたものだ。(大会前日,その寄せ書きとともに,ようやくご実家を訪問することができた)
と同時に,仮に3:02で走ったとしても,周りは納得しないだろうから,「今回はサブスリー狙いではない」という明確な意思表明でもあった。自分に対しても。

「(応援の都合上)予定時間を知らせてくれ」という駅伝チームメイトに,「ライバルに勝つ。必ず勝つ。3:05」と送信。
「まずは打倒ライバル!そして25km過ぎから余裕があればサブスリー目指して頑張って下さい!」と返信をもらう。

走りながらだと,どうもうまく計算できないし,その時の気分でペースがいい加減になってしまうので(いけいけになってしまう),一応,25kmからでどれぐらい上げることができるのか,計算しておく(金曜,指宿出張からの帰りの「つばめ」号の中で)。
2分+4'20"/kmで最後まで行くと,ゴールタイムは3:04:51。
25kmから21'00"/5kmに上げると3:02:33。
さらに,35kmから20'00"/5kmまで上げると(!)3:01:06。
去年の東京で記録した35-40km区間の自己ベストラップが20'36"だから,どう考えてもこれがmaxだ。これ以上はありえない。

当日朝,maxの3:01:06のシナリオを腕に書き込む。
マジックは持ってくるのを忘れたので,コンビニで買った。
補給食カーボショッツも(せっかく前日にランパンにポケットを縫い付けたのに),タオルも忘れ,電車には乗り間違え,空港では搭乗ビルを間違え・・・本当にボケぼけした遠征であった。

悩んだのが,A監督お勧めの,"スタミナが2時間は持つ"という,VESPAを飲むかどうか。
「1日100kmを飛ぶスズメバチのエキス」で作られている,1袋\700もする「プロ向け」飲料だ。
2年前の河口湖マラソンでも,去年の東京マラソンでも飲んで,代謝が活発になった結果,トイレが近くなってタイムロスする結果ともなった。
自分自身では効果の確認はできていないのだが,実は,出向解除になったときにF波さんがくれた送別の品(5個ぐらいくれた)。
最近飲んでいないおかげで,賞味期限が迫ってきた。
よし,飲もう。
一緒に走るA監督にグリコーゲンリキッドをもらう。
いつかのデュアスロン大会みたいに,"借り物"競争やな。。。

当日。朝食は,スタート4時間前の,まだ暗い朝5時過ぎに松屋で牛丼豚汁セット。
これまた「賢く走るフルマラソン」に,「当日朝はもはや炭水化物食の必要はない」,と書かれていたので。
6:30,溝の口駅でA監督と合流。7:15頃,新宿駅下車。いくら東京は人が多いとはいえ,普段こんなにみんなが同じ方向に向かって歩くことはない。なんか,宗教の集団みたい。
トイレに行くと,長蛇の列で,30分待ち。A監督を待つ間,トイレ(小)に2回行き,十分ストレッチできた。寝転んでヨガのポーズまで。

荷物預かり締め切りは8:30。参加者が3万人もいるので,スタート位置に整列するための時間が40分も確保されている。
とりあえず着替えて,荷物を全て預けて,ストレッチもそこそこに並ぶ。
(申告タイム順に,ゼッケンに印刷されている,前から2番目のBブロックに並ぶ)


        ラップ <目標ラップ> (通過タイム)
★スタート〜5km 23:37 <23:40>    (23:37)
スピーカーを通して「バーン」という号砲とともに,わぁ〜っと拍手が沸き起こりスタートするも,人が多すぎてスタートラインをまたぐまでに1:31かかる。しかし,4車線走れるので,集団はすぐにばらけて,走りにくくはない。
最初はゆるやかな下りだが,挽回しようとして飛ばし過ぎないように気を付ける。


★5〜10km 21:28 <21:40> (45:05)
寒さによる足先のしびれは(ランシューズはものすごく通気性がいい),ようやく7km付近で解消。慎重に足を運ぶ。
1km=4'20"と思っているが,1km,1kmの看板がすぐにやってきて,周りの流れもあって,4'15"ぐらいで進んでしまう。
前半のちょっとした貯金(のように見える)は,後半大きく借金となって返ってくることは,散々これまで実証済み。我慢してペースを抑える。4'23"になる。また次の1kmがくる。4'15"に上がってる。抑える。・・・ずっとこの繰り返し。


★10〜15km 21:31 <21:40> (1:06:36)
10km過ぎ,給水のため右に寄り(他のランナーとの交錯を避けるため,給水しない時はセンターライン寄りを走った),応援しているS氏,Oさんから「うっちー」と呼ばれて,ハイタッチ。


★15〜20km 21:42 <21:40> (1:28:18)
15〜20kmでようやく21'42"に落ち着かせることができた。
折り返しを過ぎ,A監督を見つけ,「がんばれ〜」と声を掛ける。


★20〜25km 21:18 <21:40> (1:49:36)
25kmで余裕があれば,上げて行くと決めていたが,その前に中間点付近で「女性40位」という声が沿道から飛んで,何故か,何かに背中を押されるように,ちょっとずつ人を抜き始める。もう4'20"のペース維持も面倒くさくなって(ペースアップのタイミングが早過ぎて失敗したことも過去にはあったが),体の赴くままに,歩を進める(ここで上げて最後まで持ったのはあくまで結果論なのであって,次回からどうするかは検討すべきところだ)。
中間点は1:33だった。
銀座の真ん中で,ホークスのタオルを持って応援してくれた友人に手を振る
お腹が空いてきて,エイドのバナナを食べようかなと思ったが,朝A監督にもらった吸収の早いグリコーゲンリキッドを23km付近で開けた。
K野さんがいて,「うっちー」と声を掛けてもらう。カメラを構えているので,そのまま通過するわけに行かず,撮ってくれるまで後ろ向きで待つ。

トップが折り返してきて,「がんばれ〜」と声を掛ける。今日はオリンピック代表選考も兼ねている。誰が勝つんだろ。
しばらくして,見覚えのある黒人ランナー,エリック・ワイナイナ選手だ。ありゃ〜こんなに遅れてる。「ワイナイナ,頑張れ〜!」
彼と"一緒に"走るのは,3回目。初めて走った北海道マラソンで優勝したのが彼だった。一緒にと言ってもただ同じコースの後ろ方を走ってるだけなのに,なぜか親近感が沸く。


★25〜30km 20:53 <21:00> (2:10:29)
25kmを過ぎ,意識してペースアップ。周りに,ちょうど上げて行く西欧系ランナー(私は勝手に彼を「グスタフ」と名付けた)がいたが,ちょっと速過ぎたのと,フォームがバラバラで,持つのかな?と疑問に思ったので,後ろには付かず。
28kmぐらい?で,駅伝チームメイトからクエン酸飲料の差し入れ。「ここから上げて行きましょう!」と声を掛けてもらう。

★30〜35km 20:33 <21:00> (2:31:02)
トイレに行きたくなってきたが,「あと45分ぐらいでゴールだし」と思って我慢(そう思えるところがすごい)。
33kmぐらいで足に来たが,腕にマジックで書いた設定ペースより1分ちょっと時間が速かったので,3:05の打倒ライバルは大丈夫,後はここまで来たら,ペースアップして3時間切れるか?ということで,頑張った。
沿道の応援も,ソフトバンクホークスのマスコット,ハリーくんのおかげで,非常に大きかった(特に女性や子どもから「かわいい〜」とか言われて,しょっちゅう手を挙げて応える)。
私はホークス大好き人間。「ホークス頑張れ〜」と言われると,「頑張りましょう」と応えていたのだが,通じただろうか。我々の応援の後押しがホークスを優勝に導くのである。ホークスファンとは2回ぐらい、ハイタッチした。1回はその女性があまりにも熱心だったので,ちょっと戻る感じで(^-^)/
あとは,ひよことか,鳥とか,オウムとか,リックとか,chicken(!)とか,いろいろ言われたなぁ。ま,面白かった。


★35〜40km 20:03 <20:00> (2:51:05)

35km通過は2:31ぐらい。以前考えていた,ぎりぎりサブスリー通過ラインの2:30を超えている。
スタート時に1'31"のロス(号砲から私がスタートラインをまたぐまで)があったが,それを差し引いたネットタイムではなく,スッキリ,号砲からゴールまでの正式タイムでサブスリーしたいという一心だった。
(ちなみに,ホノルルマラソンは,あまりにも人が多すぎるためか,ネットタイムの方を正式タイムとしている)
びっくりしたのが,東京国際女子マラソンで応援した友人の"サプライズ"返し。今朝,「頑張って」とか言うメールをくれてたのに,なんでいるの?!思わず立ち止まってしまったが,また力が出た。

そこから人工島にかかる長い橋の登りでもぐいぐい押して,先ほどの「グスタフ」を捉えた。
声援を一身に浴びながら(応援は本当に力だ。周囲に仮装をしてる人なんていないので,そこらじゅうの応援は,全て私のものだった。何も声を掛けられなくても,こちらから手を振ったり。特に子どもには)
途中3分台のラップを刻んだりして,自分自身「まじか?」とか思いながら,35〜40の5kmを20'03"。
アップダウンで,頑張って抜いて行った女性ランナーを負けじと抜き返し。


★40〜G    8:43 <8:46> (2:59:48)
40km地点で,3時間まで残り9分だったのを,端数の195mを忘れていて「大丈夫だな」と勘違いし,「残り1km」地点で,4分しか残っておらず,そこから猛ダッシュ。37kmからは,「37km」,「38km」・・・の看板に加えて,195m先に「残り5km」「残り4km」・・・の看板もあったため,勘違いしたのだ(後半になると,頭もあまり回ってない)。
困ったことに,スタート時にストップウォッチを押し間違えて,ストップウォッチが公式タイムから7秒遅れていたことも最後まで混乱の元だった。
しかし,ペースは落ちなかったので,「最後は苦しいからゴール手前で待っておくように」頼んでおいたF波さんの前で,「やったゾー」とフライング気味のガッツポーズ。

最後の直線に,電光掲示があり,残り1分。はぁ〜これで大丈夫と思ったけど,まだそこからが長かった。スパートする人々。 そして,3時間になる前にゴール!!
コースの方を向き直って,一礼する。
手元の時計は2:59:42で止まっており,7秒足しても2:59:49。
ボランティアスタッフの方も「皆さん,3時間切りましたよ」と教えてくれた。
前日,受付で予期せず会ったボランティアスタッフのクラブ員さんが,今日はアミノバリューを渡す係をされていて,見つけて駆け寄る。
「よかったね〜防府に出られるね」と言われて(防府読売マラソンは制限時間3時間であり,小倉のランニング仲間ふくまーちさんと出る約束をしている。一緒に参加した指宿では,ゴール後,つい「防府に黄色信号」と言ってしまっていた),すっかり忘れていたので,思わず涙。。。
「ありがとうございました」
それからは,ただ嬉しくて,「お疲れさまでした」というボランティアスタッフの声が,全て自分に向けられている気がして,「ありがとうございました」と応え,たまにはハイタッチしたり,握手したり\(^_^)/

あ〜楽しかったー!
みんなありがとう!!


【エピローグ】
96年(大学4年時)に3時間10分で走った時は,卒業論文作成のため,練習再開からの期間が短かく,コースコンディションもよくなかった。そのため,「この自己ベストはすぐ更新できる」と,その時は思った。
その後就職し,練習もあまりできなくなり,3時間48分で走った福知山マラソンでは,プロカメラマンが撮影した5,000円ほどの写真を購入。厳しい顔をして走るその写真の裏に,「仕事と趣味の両立の証」と書いた。
その後は,練習もせずぶっつけ本番で出たり,3:30ぐらいで走ることが続いた。

34歳にして,「ひょうたんから駒」のようなサブスリー。
再び真面目に走るようになったのは,居酒屋「八甲田」チームや,出向先で出会ったライバルのおかげである。
これからのランニング人生,まだまだ面白い(^^)
みんな,これからもよろしくね♪


【結果】
km 設定ラップ 設定タイム 実際ラップ 実際タイム 心拍
5 23:40 23:40 23:37 163
10 21:40 45:20 21:28 45:05 144
15 21:40 1:07:00 21:31 1:06:36 146
20 21:40 1:28:40 21:42 1:28:18 145
25 21:40 1:50:20 21:18 1:49:36 152
30 21:00 2:11:20 20:53 2:10:29 157
35 21:00 2:33:20 20:33 2:31:02 160
40 20:00 2:53:20 20:03 2:51:05 166
G 8:46 3:01:06 8:43 2:59:48 168

Last updated March 16, 2008
Since March 7, 2008