宇宙に雨が降る。
彼女(ユニット)は脊髄だけで反応した。光化(レーザー)した神経が炎を吹き上げ、血管がアドレナリンで爆発しそうになる。ばかばかしいほど強化された強化された視覚系の全周視界、網膜の全天球図(プラネタリウム)。彼女(ユニット)は眼球で高真空を感じる。死を覚悟する暇など無い。
『音源不明のレーダー波!Gが嫌いな奴あ対G姿勢!』
クルーの脳を結線(ワイヤード)しているケーブルにデジタルでそう叫んだのは、彼女(ユニット)のせめてもの良心だったのかもしれない。ドッキングモードからの戦闘機動。もう何もかも間にあわない。生にも死にも不感症。正気の沙汰じやない。
『何しやがるこのばかやろお!!』
無視。
『よお、まるでケツでも触られたみてえだな、え?』
無視。
『          』
外にいた奴(EVAクルー)の恐怖など言葉にもならない。無視。
【ジャミングポッド射出完了Cスラスターセフテイ破壊完了レーダー波発信源不明特定作業進行中E対応104起動211起動腹へった腹へった】
船の副脳−−人格ROM−−が彼女(ユニット)の頭の中に自分の義務を垂れ流す。差し迫った死はさほどリアルに感じられず、それを彼女(ユニット)は薬物のせいにする。
 長い長い一秒が過ぎた。彼女は生きていた。