赤道儀をかかえて、気合を入れて皆既日食撮影....という場合は、万全な準備をしましょう。なにせ、一般の天体写真と異なり、回数が多くても1年に1度、わずか数分で終わってしまう現象なのです。重い赤道儀をかついで行く以上、何とか成功させたいのは人情です。しかし、何かしら失敗を毎回してしまうのが皆既日食の撮影です。致命的なミスを犯さず、かつ、できるだけミスを減らすためのヒントとなれば幸いです。

赤道儀のセット

さて、まず最初に心配するのは赤道儀のセットです。何せ、昼間は北極星が見えません。夜間に望遠鏡の極軸をセットすることが可能ならば問題ありませんが、通常のツアーですと難しいでしょう。

で、私の行っている方法は、方位は方位磁石をベースに地磁気の修正を加え、角度も水準器をベースに角度を設定する、という、星野写真のことを考えると非常におおざっぱなセットで行っています。せいぜい700mmぐらいの光学系を数秒の露出で撮影する場合は、これで大丈夫です。

ビデオなどで連続数分の撮影をする場合はより正確なセットをしないといけないでしょう。その場合は、観測地へ早めに入って、太陽が南中前後であれば以下の通り方位を修正してください。

 太陽が北へずれると=極軸が西向き
 太陽が南へずれると=極軸が東向き

フィルター

さて、皆既日食の撮影するときはフィルターは不要です。しかし、皆既日食を撮影するためにはフィルターは必要です。....と、書くと、何か矛盾するようですが、実際には部分食の時点でフィルターを付けて撮影の準備(構図合わせやピント合わせ)を行い、皆既の直前でフィルターを外します。

また、部分食を撮影する場合はフィルターが必要ですし、フィルターを付けないで通常の状態の太陽を直視すると、失明してしまいます。(それこそ、「目玉焼き」になってしまいます)

さて、このフィルターですが、私は皆既のときに外しやすいように対物レンズの前にD-4(1万倍)を付けています。もう少し濃い方がピント合わせが行いやすいとは思うのですが、入手の容易性からD-4を使っています。

太陽の視野への導入方法

ファインダーを使う....なんてことはしちゃいけません。ファインダーは家に置いておきましょう。望遠鏡の影を見れば太陽は導入できます。望遠鏡の鏡筒の影を真円になるように動かせば、太陽が視野に入るはずです。やったことのない人は事前にトレーニングをしましょう。

構図

よっぽどの意図が無い限り、太陽を中心に入れましょう。レンズは中心が最も解像度が高く、収差も少ないので。

あと、コロナの広がる方向ですが、こればかりは皆既にならないとわかりません。1999年のヨーロッパ日食のよう全方位に広がる場合もあります。ということで、慌ててカメラボディーを回転させる事態が発生することも考えておきましょう。

ピント合わせ

構図の次はピント合わせです。これが結構難しい。

まず、部分食が進行している時点で、黒点でピントを合わせます。部分食を撮影される場合はこれで大丈夫でしょう。で、部分食が進行するにつれて、黒点が無くなってピントが合わせににくくなります。

さて、皆既の本番です。まず、フィルターを外します。これでピント位置は、ずれます。さらにずーーーと太陽を望遠鏡に入れているため、レンズにも鏡筒にもどんどん熱が溜まります。その結果、EDレンズやフローライト(たいていの人はこーゆー望遠鏡を抱えていく)の望遠鏡の場合、ピント位置がかわってしまいます。ということで、フィルターを外したときにも必ずピントを確認しましょう。フィルターを外した後にピントを確認しないと以下のような写真になります(涙)。

通常の一眼レフのファインダーでは倍率も低く、暗いため、ピント合わせは意外にやりにくいです。私は高倍率ファインダーを使用して、できるだけ確実にピントを出せるようにしています。(ま、失敗するときは失敗しますけど)もちろん、鏡筒もピントが合わせやすく、かつピントが勝手に変わらないようなしっかりしたものを使うことが肝心ですね。

露出

構図もきまってピントもあった、あとはシャッタースピードを決めるだけ。望遠鏡の場合は絞り値を変更できませんからね。

で、露出なのですが、難しいとも簡単とも言えます。

太陽に近い内部コロナやプロミネンスは非常に明るく、太陽から離れた外部コロナはそれに比べて非常に暗く、両方を同時にうまく写すことはでいません。で、もっと困ったことにコロナの明るさやプロミネンスの出かたはその時にならないとわからない、という...。

逆に言えば、シャッタースピードを変えて、シャッター切りまくらないといけない、ということになります。

以下のデータを参考にしてください。(ISO 100, F16の場合です)

ダイヤモンドリング
内部コロナ
外部コロナ
1/500秒
1/8秒〜1/4秒
1〜2秒

レリーズとミラーアップ

写真で起こるミスは「ピンぼけ」「露出ミス」「手ぶれ」の三つが大きなものかと思います。ピンぼけは上記のピント合わせをきっちり行うことにより、また、露出ミスは露出を変えて写すことによりかなり防げると思います。

最後は手ぶれですが、これは「しっかりした赤道儀にしっかりした三脚、さらにしっかりした組み立て」といった基本的な部分をきっちり行います。さらに撮影時では、レリーズを使って、ミラーアップをすることもシャッターのショックを小さくします。

時間割作成と事前トレーニング

さて、撮影のプランニングの最後の段階になりました。撮影のときのタイムスケジュールを作りましょう。

皆既中は昼間とはおもえないほど暗くなります。例えば、シャッターダイアルの文字盤の数字が見えないほどです。特に、部分食を一生懸命見ていると、目が暗順応していませんので、余計に見えにくくなります。そうした暗さの中、また、心理的に非常な興奮状態にある中で確実に作業を進めるためには時間割を作成して行ったほうが良いでしょう。

時間割のサンプルを参考までに示しますが、もちろん、これはサンプルで、実際にはみなさんでアレンジしてください。

私の器材紹介

器材の一例として、1999年8月の日食に持っていった撮影器材を紹介します。

まず、鏡筒ですが、Borgの76EDを使っています。焦点距離は500mmでちょっと短めですが、価格のわりにはヘリコイドなどスムーズで良くできていると思います。

赤道儀は五藤光学のマークX。南天や移動観測には非常に使いやすいシステム赤道儀ですが、すでに20年前の製品となります。若いファンには知らない人も多いかも。

今回は三脚はビクセンのポータブル赤道儀用の三脚を使用しました。なぜかマークXにぴたりと合うという(笑)。軽かったのですが、やはり強度は通常の架台を使ったほうが強いですね。

カメラは望遠鏡に付けたメインがニコンF3。高倍率ウェストレベルファインダーを付けられてそこそこ安く軽い点が選択理由です。(その意味ではペンタックスLXでも良かったかも)サブのカメラはニコンF801に300mm F4を付けました。写真ではテレコンバーターが付いていますが、テレコンバーターはゴーストを発生させるかも...というリスクがあります。ゴーストは意外に目立ちますので、シュミットカセグレンは避けたほうが賢明だと思います。

往年の名機Mark-Xにビクセン三脚、ボーグの鏡筒というハイブリッドシステム。

ツアーのお客さんの赤道儀は高橋とビクセンとで二分されていた。

2000年に生産終了宣言が出たニコンF3。高倍率ファインダーによる撮影は快適。
こっちはサブ機(アブハチ取らず機)のニコンF801。これもピント確認用にマグニファイアーを付けている。

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