
観測と言うと何やら堅苦しいイメージがありますね。しかし、いきなり「日食を見に行こう!」と言っても、何をどうすれば良いのやら....という方もおられるかと思います。
ここでは、実際に皆既日食を楽しむ上で、何を準備したら良いのかを書いてみましょう。
最低限の観測器材は肉眼になります。近視の方はもちろん眼鏡をお忘れなく。実は、皆既日食時のコロナやプロミネンスは明暗の差が大きく、写真やビデオなどでは再現できません。最近ではコンピュータ処理により、肉眼に近いイメージになりましたが、まだまだ肉眼には及びません。なお、皆既日食中は太陽を直接見ても(というか、月なんですけどね)問題ありません。あまり見とれてダイアモンドリングを過ぎた時点でも見続けると強力な太陽光線で目を傷める危険がありますので十分注意してください。
皆既日食中は太陽を肉眼で見ても問題はないのですが、部分食中の太陽は肉眼では直接見てはいけません。また、肉眼で太陽を見ていても眩しいだけで欠けている状態が判りません。望遠鏡販売店などで日食用のフィルターを販売しているので、利用しましょう。また、レントゲンフィルムは使っても問題ないので、病院に知人のいる方は現像済みのレントゲンフィルムの真っ黒なものを譲ってもらうと良いでしょう。
ネガフィルムや下敷きを使ってみる人もおられますが、単純に黒いからOK!というわけにはなりません。可視光線はカットしても、赤外線や紫外線をカットしないものが結構あります。十分注意しないと、目を傷めてしまいます。昔からのモノクロフィルムのネガならばOKのようです。
皆既日食を見ることをより楽しむには、双眼鏡が欠かせません。肉眼ですと、暗い空の中に広がるコロナが見えますが、双眼鏡を使うとコロナの中の細かい構造(流線)やプロミネンスなどが非常にきれいに見えます。日食には双眼鏡は必須アイテムだと言えましょう。
さて、双眼鏡ですが、あまり高倍率なものは不要...というより、かえって使い勝手が悪くなります。よく初心者の方は「高倍率=高性能」という誤解をされます。倍率はせいぜい7倍や10倍のもので十分でしょう。一般の天体観測と兼用にするには、7x50(7倍でレンズ口径が50mmのもの)で防水のもの(夜露がついてびしょびしょになりますから)が使い勝手が良いとされています。それ以上の大型のものは手持ちではなく、三脚を使って固定してみることになります。私はやったことが無いのですが、80mmクラスの双眼鏡を三脚固定で日食を見るとさぞや...と思います。
双眼鏡も立派な光学器械ですので、カメラなどを選ぶときと同じく、信頼できるお店(望遠鏡販売店やカメラ店)で選びましょう。無理な高倍率をうたったり、ズーム機能を強調していたりする新聞の通販広告をみかけますが、天文用にはまったく不向きです。
なお、皆既中はフィルターは不要ですが、部分食の時はフィルターが必要です。
双眼鏡まで用意したなら、単に見るだけではなく、スケッチに挑戦することもよろしいかと思います。スケッチをすると、非常に細かい部分まで頭に記憶を残すことが可能だと聞きます。(と、言いつつ、私は日食のスケッチをやったことが無いので、伝聞情報ですが)
残念ながら、ビデオや写真ではなかなか皆既日食の全容をきれいに記録する、ということが難しいです。その意味では肉眼がベスト!ということになりますが、記憶というのはどんどん劣化してしまいます。(頭のイメージを直接ダウンロードできるようになるのはいつの日か...)その意味ではスケッチはベストな方法かもしれませんね。
こんなきれいな光景だから、何としても写真やビデオに記録したい、というのは人間の自然な気持ちでしょう。
さて、皆既日食の写真は、天体写真の中では比較的難易度が低いものです。通常の一眼レフカメラに望遠レンズを付けて、三脚に固定すれば撮影可能です。欲を言えば600mmぐらいのレンズがあれば良いのですが、200mmとか300mmでも大丈夫です。また、皆既日食は天文現象としては明るい方なので、長時間露出や高感度フィルムといったものも無くても、取りあえずは映ります。ただし、三脚に固定し、レリーズでシャッターを切る、といった点には注意しないといけないでしょう。
ビデオも比較的簡単に撮影できます。こちらは、家庭用VTRカメラに、レンズの前につける望遠アタッチメントを用意すると良いでしょう。
皆既中はノーフィルターで撮影しますが、部分食の時はフィルターが必要です。フィルターなしですとピント合わせも構図のセットもできませんので、必ず用意しましょう。
ここまで来ると病も重度の状態ですね。とはいえ、眼視では双眼鏡の方が良いと思います。そこで、望遠鏡を使う人は写真撮影をメインにする人でしょう。600mmクラスの望遠レンズとなると価格が非常に高くなるので、天体望遠鏡+カメラアタッチメント+カメラボディーの組み合わせはリーズナブルなコストで実現できます。これをカメラ三脚に固定すれば、望遠レンズシステムのできあがり!となります。
このセットを使った人によると、撮影はできるものの、やはりカメラ三脚だと大まかな方向に向けるしかできず、細かな構図の調整がやりにくかった、とのこと。微動を工夫すれば、結構使い易いかもしれません。あるいはボーグや高橋製作所から出ている簡易方式の赤道儀も良いでしょう。
本格的な赤道儀を使った撮影の場合は、別ページでTIPSを紹介していますので、参考にしていただければ幸いです。
さて、日食の中での皆既時間は短い時は1分、長い時でも5〜6分です。この前のトルコでの日食は、2分でした。2分ではカップヌードルも出来上がらないし、ウルトラマンの地上でのタイムリミットの3分よりも短いのです。
したがって、何をするにしても、事前に十分なリハーサルをしてください。特に写真撮影をされる方は露出をずらして何通りか、またはカメラを付け替えるなどの作業をする場合は事前にリハーサルをしてください。ちなみに、皆既の前後はパニックになりますので、余裕を見てスケジューリング〜リハーサルをした方が良いでしょう。(私もフィルムの装填ミスをやっちゃいました(;_;))
また、このような短い時間なので、あれもこれもと欲張るとろくな事になりません。写真なら写真、双眼鏡を見るのは限られた時間で、というふんぎりが必要です。(って、私も皆既が始まってから30秒ほど双眼鏡で見とれてしまいましたけど(^_^;))