肖像





「はっ……ははっ、はははは……」


薄く弧を描く、笑みは止めどなく。

乾いて聞こえるソレを壊れた思考が聞き取る。

きっとこれは夢なのだと何度も自身に言い聞かせたが、無論手に残る感覚と視界に入るそれが現と解らせる。



ペロリと指にこびり付いた血を舐めとった。

鉄の味がする。

でもこれは君のものだから、砂糖のような甘さが混じる。



「く‥はっ……ははっ…」


響くのは乾いた笑い声。

「はっはは……」


腕の中で眠るソレを抱きしめながら。

ソレから流れ出す血液を拭い、舌で舐め取る。


まだその液体は暖かみを覚えている。


「おいで……"キラ"…」



もう鼓動を打たないその心臓に口づける。


冷たくなった細い指先を口に含み暖めようとする。


無意味な



足掻き




もう一度あの紫水晶が見たい……

もう一度その声で呼んで欲しい………



白色の喉元に刻印を残そうと吸い付く。

しかしそこに鬱血が生まれることはない。

白雪のような躯に流れる内液はすべて外に流れ出たのか……


「キラ…」


青の布地が黒紅に染まっている。
今自身が身につけているものと同色の紅。



「キラ……」


今にも崩れそうな天井から光が差し込む。

塵がヒラヒラ舞って二人を包み込む。


「キラ………」


遠く。
そう、遠くで爆発音がする。
また再開された、抗争。


「キラ………‥」


だがもう自分が銃を取ることはないだろう。
手にした銃で倒す者がいない、倒しても仕方がない、もう"世界"は消失したのだ、もう……望みも願いも何も無い。


キラのいない"世界"を、何の意味も無い空間を、

守るために?
俺が引き金を引く??


[傑作だな]

失笑だった。

「キラ」



眠り姫は王子様の口づけによって目覚める、そんな古典童話があったが。

どんなに口づけてもキラは目を覚ますことはなかった。



それは俺が"王子様"ではなく"罪人"だからか……

それともキラが"眠り姫"ではなく"勇者"だったからか……



「…キ…ラ…」


霞む視界。

見取れなくなるキラの表情。



「…やっと…おまえと……」

ふらつく意識の中、天を見上げた。

呼ばれた……あの声に。


「キラ」


白のドレスに身を包んだ、天使が、降りてきて、俺を抱きしめた。
亜麻色の髪に紫水晶の瞳。


彼は笑顔で俺の頬を撫でた。


「キラ…」




爆音がこの思い出の地を、揺らした。







END
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なんていうか。どうしようもない話です。最後曖昧だし(;_;)ごめんなさい。