Cherry * Blossoms

 

 

きっと君は来ないことを俺は知ってる。

君は、優しすぎるから。

 

桜の木の下。

君に別れを告げた。

やりきれない気持ちが表情にでないよう、慎重に言葉を選んで君に微笑む。

 

月で過ごした幼年時代。

初めて出会ったのもこの桜の木の下。

 

もしかしたらあの瞬間から俺はお前にこの感情を持っていたのだろうか。

 

それからずっと一緒に同じ日々を過ごした。

悪夢を見た。と目を腫らせて、真夜中俺を起こして同じベッドのなかに当たり前に入り込んできた時もあった。背に腕を回して、優しく抱きしめるとすぐに小さな寝息を立てて大きな瞳をしっかりと閉じ、眠りについた。

安心しきって、微笑みにまで見える寝顔。

その唇に何度、キスしただろう。

 

 

 

『・・・アス・・・ラン、アスラン、アスランったら、起きてよ。朝だよ、学校行かなきゃ。ねぇ、アスランったら』

 

キ・・・ラ。

本当に何も知らないんだね、君は。

わざと目を閉じたまま、キラの行動を待った。

肩を揺らし、起こそうとする。

純粋に、素直に。

また俺はあの感情を捨てて、【キラのための】アスラン・ザラになる。

 

そう、キラのために。

 

けれど君は今、誰のために戦っている?

 

この三年間で俺も変わったように、君も変わった。

人間なら当たり前の流れ。

 

君は優しい。

でも、優しすぎる。

それじゃあ、この宇宙(ソラ)では生きていくことはできない。

 

いくらそんなMSを身にまとってもね。

誰も守ってはくれない、守るだけ。

優しさに気付いてくれはしない、できない。

 

 

俺に会う前の君に戻っている。

 

 

おいで、キラ。

今度こそ、ずっと一緒にいよう。

君の全てをもう一度、抱きしめるから。

君の全てを・・・守るから。

 

<End>

 

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