桜影の囁き
白のベッド。
薄く開いた窓から入り込んだ風は白のレースカーテンをふわり、と揺らす。
空は青。
この部屋はちょうど二階で、外で咲く桜がよく見えた。
風に舞った花弁が隙間から入ってひらり、白の布団の上に舞い降りる。
「綺麗…」
すっ、と白く細い指が伸ばされ、それを優しく手の中に収めた。
羽のように軽いそれをまた一つ枕元のチェストの上に置いた。
これで二十五枚目。
「キラ」
部屋のドアのほうから名前を呼ぶ声がしてキラは外から内へ視線を移した。
「アスラン」
静かにその相手の名を呼ぶ。
互いに目が合うとゆっくりと微笑みあって確認し合う。
「お帰り。」
どこかに出掛けていたのだろう、アスランに。
「ただいま。」
自分の帰りを静かに待っていただろう、キラに。
「あのね、桜がまた入ってきたよ。二十五枚目の、」
チェストの上はさくらの花弁でいっぱいだった。
「薬…もらってきた」
「あ。ありがとう。いつもごめんね?アスランにばっかり。今度からは僕がいけるといいんだけど」
「無理はするな。何のために俺がいると思ってるんだ」
「本当にありがとう、アスラン」
そのままなにも言わずアスランはキラのいるベッドの端に腰掛け、紙袋を渡す。
「…また増えた?」
受け取り、中身を確認したキラが訪ねる。
「あぁ」
それに対し頷くアスランの横顔は先程の笑みは浮かべていず、ただ膝の上で組まれた手を一点に見ていた。
すやすやと規則的な寝息をたて、キラはアスランの腕の中で眠っていた。
シーツの上に投げ出された白く細い腕には、無数の黒紫の小さな斑点が散らばっている。
針の…痕。
注射は週三回、点滴は週五回。
それは異常とも思われるほどの薬物投与。
しかし、これがなければ今のキラは…いない。
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後書き。
久々のUPがこんな話でご免なさいm(_ _)mなんといいますか、最近自分暗いのしか書いていない気が………。これもきっとハピエンではないはず。
泣ける作品作れるようにがんばります!