おやすみ。
「えー・・・であるからしてー・・・」
間延びした、退屈な声音と黒板にチョークを滑らせる音、ノートにペンを走らせる音だけが響いている、教室。
(そりゃあ退屈だろうけどな)
(・・・お前、そんなに眠いのか?)
何度目か、ちらりと斜め後ろを見て、呆れながら宍戸は思う。
その視線の先に居るのは、という、同級生。
腐れ縁とでもいうのか、小学校からずっと同じクラスで、テニス部にも入り浸っている、女生徒。
自分が微妙にその主なメンツに好かれていることを知らない、ちょっとどんくさい女生徒。
(あれは好かれてるんじゃねえ、狙われてんだよ)
そのは先程から、こくり、こくりと舟をこいでいるところだった。
肘を突いて、掌の上に頬を乗せまどろんで、何かの拍子にはっと顔を上げ、その繰り返し。
なんだか見ていてイライラした宍戸は、机の中からそっと、消音モードの携帯を取り出した。
教師の様子を盗み見つつ、素早く操作する。
教師は未だ、こちらに背を向け黒板に小難しい数式を書いている所だった。
【んだよ、お前
変なのはいっつもだけどよ、今日はなんかやけに寝てねぇか?】
振り返る前に打ち終わり、宍戸は携帯を机の中に押し込んでからそっと振り返ってカンナの様子を眺めた。
送ったメールが行き着いたのだろう。
制服のポケットの中で僅かな振動を感じたらしいが、はっと顔を上げて、それから宍戸と同じようにこっそり
携帯を取り出しメールを読んで、すこし考えた後いくつかの操作をして、ふと顔を上げて宍戸と目があい、だるそう
に瞼を下げてひらひら手を振った。
(なんだ?のやつ)
そんな事を思ったりもしたが、とりあえず宍戸は返事のメールを見ることにした。
まだ、チョークの音は止まない。
画面には、たった一文字。
【眠】
(だからその理由を聞いてるんだろうが!)
心の中だけで激昂し、宍戸は擬態音が半端でないスピードでまた文字を打った。
【そんなの見てりゃわかるだろ
理由だ、理由】
はまたダルそうに顔を上げて、折畳式の携帯を開く。
たしか、色違いでお揃いだ、と。
別の選べば良かったかもー、と悪戯っぽく微笑みながら、冗談めかしてが言っていた。
【ゲームやってた
今日で三徹目】
帰ってきたメールは、こんなことが書いてあった。
呆れて、宍戸はしばらくものも言えない。
少し経って、やっと気を取り直し、宍戸はまたメールを打つ。
チョークの音は、何時の間にか止んでいた。
【ダセェな、激ダサだぜ
ほどほどにしねぇからそんな調子悪くなんだよ
お前が靜かだと調子狂うだろ】
【だってもうすぐクリアだったんだもん
おしたりとどっちが先にクリアできるかクレープ賭けてた】
【お前まさか今日も徹夜する気じゃねぇだろーな?】
【だってクレープ・・・】
【クレープくらい良いだろうが!
さっさと寝ろ!】
【・・・おごらせるのがいいんじゃない・・・】
「おまえなぁ・・・」
思わず宍戸は小さく呟く。
「おまえなぁ・・なにをやってんだ、んー?」
「あ」
頭上から降ってきた声に、ぎくり、と宍戸は硬直した。
さえない教師は、背中に目でもついていたのか。
それともメールに没頭し過ぎて気付かなかったのか。
どちらにしろ、やってしまったことに代りはない。
「宍戸、。おまえら廊下に立ってろ」
「今時廊下ッスか」
微妙に反撃はしてみるものの、宍戸は素直に席を立った。
もしばしぼーっとしてから、漸く気がついたように立ち上がる。
「携帯没収しないだけマシだと思えよ」
教師の言葉を最後に、ドアが閉まった。
なんだか気まずくなりながら、宍戸は廊下の壁に並んでよりかかっているの顔を覗き込もうとした。
顔を伏せているせいで、落ちかかる髪に遮られ表情はみえない。
すっと顔を反らし、有らぬ方向を見やりながら、宍戸は呟いた。
「・・・悪かったな。机の方が寝心地よかったろ」
返事は、ない。
「おい・・?」
眉根を寄せて、もう一度を見る。
それと同時に、くにゃ、と宍戸の肩にの頬が乗った。
「・・・?」
自分の肩に頭を預け、すぅすぅと安らかな寝息を立てはじめたの寝顔を見つめながら、宍戸は頬を掻いた。
「立ったまま寝れるなんて、器用なやつ」
負け惜しみの様に呟いてから、宍戸はそのままにして置く事を決める。
授業終了を告げるチャイムは、鳴らなくても良いかと思いながら。
「・・・おやすみ」
end.
後書き
愛ゆえの暴走第二段デス。
久々にドリム書いたので、いろいろ勘が戻らなくて大変でした・・・。
でも好きですよ!氷帝!
メンツみんなすきですよーvvv微妙に珍獣あつかいな樺地もナイスキャラ(笑!
チョタはかわいいしーvvv
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